青い空の約束 Story 2


「「誰……?」」

大きな木を挟んで、偶然同じ時刻に意識を失ったふたりがいた。

「あなたも……今、意識失っているの?」

自分と同じ状況に追い込まれている人間だと、
直感でそう感じたが准一に向かって口を開いた。

「うん、そうみたい。俺は、どうやら過労みたいなんだけど」
「そう……」
「君は?」
「私は、空を見上げてぼーっと歩いてたら、向こうから来ていた車に気が付かなくて、車に引かれたの」
「俺も同じ……」
「え?」
「俺も空を見上げていたら、ふっと意識を失ったんだ」
「………」

どこの世界だかわからない、この世界。
人もいなければ、何の物音も聞こえない。
ふたりの会話が止まれば、再び静かな世界となった。

「座ろうか」

木の根元へ先に腰を下ろした准一がを促す。
それに黙って応じる
ふたりは、木の根元へ並んで腰を下ろした。

「そういえば、名前聞いてなかったね」
「私は、。あなたは?」
「俺は……オカダジュンイチ。准でいいよ」
「准くんは、仕事何してるの?」
……俺の顔見たことない?」
「え……?どこかで会ったことあったかな?」
「いや、わからないんなら、いいんだ。一応、俺、V6っていうアイドルやってるの」
「えっ……?ゴメンナサイ!どこかで見たことあるかなとは思ったんだけど、まさかそんな人が目の前にいるわけないし、
それに、私最近テレビ見てなかったから……」

必死に弁解するを見て、准一は微笑んだ。

「そんなに必死にならなくてもいいよ」

笑ったあと、准一の目が少し寂しそうになったことに、は気が付いた。

「……俺さ、たまにね、本当にたまーになんだけど、『俺、何やってるんだろう?』って思うときがあるんだよね」
「………」
「もちろん、この仕事は好きだし、充実してるし、俺がこんな事言ったら罰当たりなのかもしれないけど……。
って今日初めて会ったにこんなこと言うのもおかしいか。ごめん」

やっぱり寂しそうに笑う准一に、は黙って首を振る。

「准くんだけじゃないよ、私もたまにそう思うときある。平凡な毎日を過ごしていて、私って何やっているんだろうって」

大きな瞳で、まっすぐを見つめる准一。
ふたりの間をさわやかな風が吹いた。

「私よくわからないけど、准くんのファンの子たちは、准くんのその笑顔を見て、元気になれるんでしょ?
それで、准くんはそのファンの子たちを見てまた頑張れるんでしょ?だったらそれでいいじゃない」
……」
「私は、准くんの仕事は、とても素晴らしい仕事だと思う」
「ありがとう」

そう言って微笑む准一の笑顔に少し寂しさがなくなった気がした。

は?は、何の仕事してるの?」
「私は、普通の平凡な会社員だよ」
「そうなんだ……。彼氏とかいないの?」
「いないよ」
「ほんとに?」
「ほんとだよ。准くんは?……って芸能人に気軽にそんなこと聞いちゃいけないか」
「いいよ、別に。俺もいないよ」
「そっか……」

再びふたりのいる世界が静寂に包まれた。

「なんだか俺たち……ここで初めて会った気がしないね」
「うん、私もそう思った」

ふたりは、自然と手を繋いでいた。

「ねぇ、准くん……あたしたち、現実の世界に戻っても会えないかな……。てゆうか、会いたい」
「うん、俺もそう思ってた」

そして、どちらからともなくふたりの顔は近付いていき、准一との唇が重なった。


* * * * *


「あっ!」

が目を開けると、目の前には真っ白な天井が広がり、
そこは病院のベッドの上だった。

!」
「お母さん……」
「よかった……」
「私……」
、車に引かれたのよ、覚えてる?
奇跡的にケガはたいしたことなかったのに、全然目を覚まさないから心配したんだから!」

母の言葉など、もはやの耳には入っていなかった。

『あれは、夢だったのかな……?V6のオカダジュンイチ……』

まさかそんなハズはない。
そんな芸能人が目の前にいるなんて。
でも……。

『あのキスの感触が微かに残ってる……』

思わず、指先を唇に乗せる。
准一と出会ったあのときのことを自分だけの夢で終わらせたくなかった。
でも、相手は芸能人。
自分にはどうすることもできないと思った。

、お母さん先生に目を覚ましたことを知らせてくるからね!」
「うん……」

ひとりになった病室で、は窓の外の空を見上げた。
今日も気持ちの良い青空が広がっていた。

『准くん……』

は、自分が准一のファンのひとりではなく、彼をひとりの男性として見ている自分に気が付いた。
たったあれだけの時間しか一緒にいなかったのに。
自分でも不思議だった。

『どうしよう……』

自分の中で葛藤が続いた。
現実の世界では、准一とは全くの他人同士。
それがもし准一が目の前に現れたとしても、果たして自分のことなんて知らないかもしれない、
あんな夢を見たのは自分だけかもしれない。
そんなどうしようもない想いに包まれた。

小さな溜息を吐き、ふっと目線を落とすと、自分の前に置いてあったスポーツ新聞が目に入った。

『あっ…!』

と思った瞬間にはすでに、スポーツ新聞に手が伸びていた。
芸能欄を開く。
すると、目に飛び込んできた文字は、

【V6岡田准一 過労で倒れる!!】

そこには、仕事の帰り際に突然倒れたこと、
その原因はおそらく過労だろうということなどが書かれていた。
そのスポーツ新聞の日付もが事故に遭った次の日付になっていた。

『やっぱりあれは嘘じゃない。准くんもきっと私のことを覚えているはず……』

なんの根拠もなく、そう確信した。

『空が見たい!』

意識を失ったあの日の事故を思い出すような青い空。
准一と共にわずかな時間を過ごしたあの夢の中のような今日の空。
突然、そう思ったは、病室を黙って出て、病棟の屋上へと歩き出した。



屋上に上がると、キレイな空が目の前に広がっていた。
ひとつ小さく深呼吸。
体を伸ばすと、やはりところどころに負った傷が少し痛んだ。
そして、閉じた瞼をゆっくりと開けると、ひとりの人影が視界へと映り込んだ。
ぼやけた視点を必死にこらす。

「准……くん……?」

の向こうで屋上のてすりに寄りかかり、空を見上げていたのは紛れもなく准一だった。
なぜ同じ病院にいるのか、
なぜ同じ空を見上げているのか。
いろんな想いが一気にこみ上げてきて、途端にの目には涙があふれた。
そして、一歩ずつ一歩ずつ准一へと近付く。

自分に近付いてくる人の気配に気が付いたのか、准一が目線を落とした。
を見て、無言で驚く准一。
ふたりは運命に導かれるようにお互いの距離を狭めていった。
言葉もなく見つめ合う准一と
再びふたりの間をさわやかな風が吹いた。

そして、准一を真っ直ぐ見つめたまま、がそう言葉を発した。



「あのときの約束憶えてますか……?」



―――E N D―――

最後の言い訳っ。

なんだかなぁ…。
最初思いついたときは、いい感じ!って思ったんだけど、自分の表現力の乏しさに泣けてくる。
もうちょっといい話にしたかった。無念。
Story 1で言っていたオカダのセリフは、あたしが勝手に言わせたものですから、
ホントにオカダがそう思っているなんてことはないと思います。
2003.12.26


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