星空の元で誓う夜



「はぁ……」

キリがない溜息。
私は、ひとり夜空を見上げて涙目になる。
意味もなく何度も見てしまう携帯電話。
メール来ないかな、とか。
電話かけてきてくれないかな、とか。
忙しいということは、十分わかってる。
大切な時期なんだもん。
けれど……。

星を見上げて、准を思い出す。

たまに、突然、准は、星が見たいと言って、私を連れ出すことがあった。
だから、星を見ていると、准が見ているような気がして。
このところ、そんなことを繰り返しながら、今日もひとりの夜を過ごしていた。
携帯電話を何度見つめているだろうか。
そんなことをしたって、もちろん無駄なんだけれど。
もしかしたら、寂しさを少しでも紛らわしたかったのかもしれない。

今夜は、少し夜風が冷たいなと思って、部屋の中へ入ろうとしたそのとき、
突然、私の携帯電話が鳴った。

待ち受け画面に浮かんだ名前は……准だった。

「もしもしっ」

まさに願いが叶ったという思いに、私は目にじわっと涙が溢れてきたのを覚えながら、急いで電話に出る。

「もしもし、?」

電話の向こう側に、相変わらずの准がそこにいた。
私の今までの心境なんか知る由もないって感じのいつもどおりの准だった。

「准?どうしたの?」

そんな准に対して、私もいつもどおりの私を振る舞っている。

「今から海行かない?星が見たい」

やっぱりいつもの准だった。

「うん、いいよ」
「じゃ、今からそっち行く」

そう言って、どれくらいぶりだっただろう、准からの電話は切れた。
私は、涙目になっている自分の目を必死に元へと戻す。
久しぶりに会えるのに、涙を浮かべていること、准に悟られないように……。



しばらく外で待っていると、車を運転して准がやってきた。

「久しぶり」

准が微笑んでそう言った。

「仕事忙しいんでしょ?体大丈夫?」

このところ、やっと会えたときのひとこと目っていつも一緒のような気がする。
すると、准が、

、いつも同じこと言ってるよ」

って笑った。
その准の笑顔を見た瞬間、さっき必死に奥へと追いやった、積もりに積もった准に会えない寂しさがまたこみ上げてきた。
私は、准にばれないように、涙をさらに奥へと引っ込めた。
しょっちゅう会えないなんて、私たちの間では当たり前のことだし、
私だっていつもこんな風に准を恋しがっているわけではない。
でも、たまに、こんな風にひどく准を恋しがってしまうことがあるんだよね……。



数時間、順調に走り続けた准と私を乗せた車は、人気のない砂浜へとやってきた。
静かな波の音だけが暗い海岸を支配している。
やっぱり、今夜は夜風が少し冷たかった。

「星、見えるね」

私の先を行く准の背中を追いながら、私は、夜空を見上げてそう言った。
准は私の言葉に何も答えず、静かにうち寄せる波打ち際へ腰を下ろした。
私も黙って、准の隣へと座る。

「綺麗やなぁ……」

たまに出る准の関西弁がなんだか懐かしかった。
あれだけ会いたかった准が、今はすぐ隣にいることを実感する。
准は、ここに着いてからずっと星を見上げているけど、私は、星なんてどうでもよかった。
星が見たいって、いつも私を一緒に誘ってくれること。
それが嬉しかった。
准の横顔を見つめていたら、一筋の涙が私の頬を伝った。

ヤバイ……。

せっかく会えたというのに、涙はダメだ。
私は、准に顔を背けて涙をこっそりと拭いた。



すると、准が私の名を呼んだ。

「な、何?」

私が驚いて准のほうへ振り返ると、
突然、准は、私の肩を後ろへと押し、私の体は砂浜へと倒れてしまった。

「准…?」

そして、准は、私の両手の手首を砂浜へと押しつける。

「ちょっと、准…痛いよ…」

私の言葉など気にせずに、准は、相変わらず力強く私の両手を押さえつけている。
それに、少しずつ潮が満ちてきて、波が私へとかかっていた。

「冷たい……」

それでも准は、私を離そうとはしてくれず、顔を近づけてきた。

“寂しい想いをしているのって私だけなのかな……”

そんな想いがふと私の中を横切る。
なんだか悔しくて、准のまっすぐな瞳から思わず顔を反らしてしまう、私。

……」

准のもう一度私の名を呼ぶ声に、私はゆっくりと准のほうへ顔を向けると、
准はもう一度、私へと顔を近づけてくる。
そして、私は、准のキスを受け入れた。
私の手首を押さえつけている強い力とは裏腹に、とても優しいキスだった。
唇が離れ、目を開けると、そこには准の寂しそうな顔が広がっていた。

……お前、俺と会えないからって寂しくて泣いてるんやろ?」
「え…?」

さっき、思わず流してしまった涙を准に見られてしまったんだと、気が付いた。

「でも、准が大切な追い込み時期だってわかってるから、わがままは言わないよ。私だけが我慢すればいいし…」
「俺だって…」

准がまっすぐ私を見つめ、言葉を発する。

「俺だって……と会えなくて寂しいんだ……」
「准……」
だけじゃないよ……」

准の声が少し震えた気がした。
そのとき、私の手首を押さえつけていた准の力が少し弱まった。
私は、両手を准の首の後ろへ回し、優しく抱き寄せた。

久しぶりに感じた准の温もり。
准は、私にとってやっぱり私のかけがえのない存在だ、と思う。
准も私のことをそう思っていてくれた。
普段、口数の少ない准の口から、准の気持ちが聞くことができた。

これからさらに准はとても忙しくなるけど、
いつかまた准のこの温もりを感じることができるのなら、私は大丈夫。
微かに震える准の背中に気づき、私はそう誓った。


私の横では、静かに波が打ち寄せ、
空では綺麗な星たちが私たちを見守るように、静かに輝いていた。



−−−E N D−−−

最後の言い訳っ。

なんだか文章おかしくない!?大丈夫!?
あたしのお気に入りのシーンは、某日焼け止めのCMから思いつきました。
それにしても、切なっ(笑)。
夏コン前によく浮かぶ感じのお話だわね。
ちなみに、オカダのイキナリの「星が見たい」は、トニコンでMCの話題になってたよー。
2003.8.10


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