明日は晴れるよ


仕事終わりの帰り道。
私は、疲れ切った顔と身体で帰路へ着く。
なんだか今、仕事がうまく行かなくて、とてもイライラしていた。
それは、私だけじゃなくて、上司もそう。
今まで、怒られることなんてなかったわけじゃないけど、
最近の怒られ方って言ったら、今までと比べものにならないほど、
私には、堪えていた。

もう、やだ。
辞めたい。
でも、やっとの想いで、せっかく就きたい仕事に就けたのに、
今辞めて、私を拾ってくれる会社なんて、あるんだろうか……?

そんなことをぼんやり考えながら歩いていた。
すると、ぽたり、ぽたりと空から雨粒が落ちてきた。

「あ、雨……」

と思った瞬間には、もう大雨になっていて、
私は、一瞬で全身すぶ濡れになってしまった。

「もう最悪…!天気予報、今日雨降るなんて、言ってなかったのに!」

最悪な状況に、最悪なことが重なることも珍しくもない。
今日は、まさにそんな日だった。

「はぁー……」

吐く溜息もさらに大きくなる。
やがて、どこかからともなく午後6時を知らせる、時計の音が聞こえてきた。

「えっ…?」

時計を見れば、やっぱり午後6時ぴったりを指していた。

「やっば…!」

私は、このあとに准との約束があったことを思い出し、
全身濡れていながらも、准の部屋へと足早に歩き始めた。



ピンポーン……

息を整えながら、彼の部屋のインターフォンを鳴らす。
しばらくして、ドアの向こうから見せた准は、いつもと変わりない笑顔だった。

「おかえり」

一緒に住んでいるわけでもないのに、
そんなことを言ってくれるところが、私は嬉しかった。

「ただいま」

私も准に返事をする。

「ごめん、ちょっと遅れちゃった」
「うわっ、ずぶ濡れやん!」
「ちょっと降られちゃった。傘持ってなくて」
「すぐシャワー浴びて!風邪引いちゃうからさ。服はとりあえず俺の貸すから」
「ありがと」

准のやさしさが浸みてきて、今までこらえていた涙が、
シャワーと一緒に流れていった。

、なんか飲む?」
「…ううん、いい」

准は、疲れた顔をしている私に気がついたのか、
気を遣って、そんなことを言ってくれたけど、
私には、もう笑顔で返事をする余裕さえなかった。

「…なんかあったの?」
「うん、今ちょっと仕事がうまくいかなくてさ……」
「そっか……」

准が寂しそうに笑った。
准のその表情を見た瞬間、私の胸が痛かった。
“俺には何にも言ってくれないんだね…”
って言う准の顔。
私は、ただ准に心配をかけたくなかったから……。

「今さ……。何もかもうまくいかなくて、上司に怒られっぱなしでさ……。
もう仕事嫌になってきちゃった……」

准に弱音を吐いた途端、私は無意識のうちに、涙をこぼしていた。

「あ、あれっ……。ごめん、せっかく准と会ってるのに、泣いたりなんかしたら、台無しだね」

私が、涙を拭きながら、准に向かってそう言うと、
准は、黙って私をうしろからそっと抱きしめてくれた。

「准……?」

准は、一言も、何も言わず、私を抱きしめている。
だけど、それが准の、私への励ましなんだって、
背中から十分に伝わってきた。
言葉はないけれど、准の温もりが嬉しかった。
いつまでもこうしていたかった。

「ねぇ……准?」
「ん?」

准の優しい声が、私の斜め上から聞こえてくる。

「今日さ……准の部屋、泊まっていってもいい?」
「え?でも、、明日仕事じゃないの?」
「准の部屋から行く」
「ん、いいよ」

准の頭が、コツンと私の頭へとぶつかる。

「でもさ…」

准がさらに言葉を続けた。

「何?」
「疲れてるところ悪いけど、の身の保証は、できないよ?」

准がそんなこと言うなんて、と思って、私が驚いて准の顔を見上げたら、
准は、笑ってた。

「いいよ。私、ずっと准のそばにいたいから」
……」

そしたら、それまで私を包んでいた、准の腕がさらにやさしくなった。

、いつも俺に何にも話してくれなかったから、なんだか嬉しいよ」
「准…」
が仕事でまたヘコんだら、また俺がこうしてあげるから」
「ありがと…」

そのとき、ふと目を向けたカーテンの開いていた窓から星空が見えた。

「あ、雨……上がってる……」
「ホントだ」

夕方の雨は、通り雨だったみたいで、いつも以上に夜空が透き通って見えた。

「明日は、晴れるよ」

准がそう言った。
私には、なんだかそれが、“、がんばれ…!”って言ってくれているように聞こえた。
また私の視界が涙で遮られた。
准がそばにいてくれるから、私はまた明日から頑張れる。

「准、好きだよ……」

私は、准に聞こえないように、そっと呟いた。



−−−E N D−−−

最後の言い訳っ。

これも、ラブセンのカミ様の恋力を参考にさせていただきました(笑)。
仕事がうまくいかない彼女にどうしてあげるかという質問に、オカダが黙って抱きしめてあげると答えてて、
あたしは、このオカダの答えに感動したのさっ(笑)。
あ〜、あたしもオカダに癒してもらいてぇ〜!!(笑)
2003.3.30


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