悩み事


「ん? どーした?」

あたしの目線に気づいたのか、読んでた雑誌から顔を上げて彼が微笑む。
その笑顔がとっても優しくて、胸がいっぱいになる。
でも・・・

「別に。なんでもないよ」
「そうか? なーんか悩んでる顔してっけど」
「えっ・・・!?」
「なんかあったのか?」

図星だった彼の答えに固まってると、すかさず声をかけられる。
何も言えずに彼の目をじっと見てると、その目がもう一度、優しいアーチを描いた。

「ま、何かあったら俺に言えよ。お前の悩みなんて、ずばっと解決してやるからさ」

あたしの彼、井ノ原快彦26歳。
職業、V6。
付き合い始めて5ヶ月、これから先が楽しみな、新鮮カップル。
・・・の、ハズなんだけど。

あたしの悩み。
それは・・・

彼の笑顔しか見たことがないということだ。


テレビを通じていののことは知ってはいたけど、友達を通じて知り合ってから今まで、
恐らくあたしは、いのの笑った顔しか見てない気がする。
もちろん、その笑顔は大好きだけど。
付き合うようになってからも、いつもあたしに向けるのは笑顔ばかりで。

「いいことじゃない。疲れてる顔とか見せられるより全然いいよ」

その話をすると、友達は口をそろえてこう言う。
確かにあたしもそう思う。
でも・・・それが時々不安になる。
あたしのこと、どう思ってるのかな? って。
辛い顔とか見せられない相手なのかな? って。

「でもさすがに本人に直接は聞けないしさー」

はあっ。大きなため息をつくと、友達が、呆れた声を上げた。

「ぜーたくな悩みねえ、それって」
「だよねえ? 自分でも思うんだけどさ」
「わかってるけど、悩んじゃうんだ?」

こくん。友達の言葉に黙ってうなずく。

「ねー、あゆみ?」
「ん?」
「あゆみがそういう顔してたらさ、きっと彼のほうも悩んでると思うよ。
 悩み事も打ち明けてもらえない彼氏なのかな≠チて」
「・・・・・・」
「だからさ。勇気だして聞いてみれば? そういう事は、早めに解決するに限るよ?」
「・・・わかった。自分の気持ち、ちゃんと伝える」

それから数時間後・・・・
あたしはいのの部屋にいた。
家に遊びに行ってからすでに30分経過。
いのは、雑誌をパラパラとめくりながら、時折空を見つめてぼんやりしている。
あたしは、といえば・・・
友達に「ちゃんと伝える!」って宣言した割には、
なかなか言うタイミングがつかめなくて、ずっと黙ったまんま。
はあっ。緊張するよおっ・・・。
どうしよう。どうやって言えば一番いいんだろう。
よし。言うぞ、言うぞ、言うぞ・・・・

「あのっ・・・」
「あのさ・・・」

「何だよ?」
「あ、いののほうから、どうぞ?」
「いいよ、別に。あゆみのほうから言えよ」

にこっ。いつものいのっちスマイルを向けられて、心拍数は、うなぎのぼりに上昇中。

「どーしたあ? なんか喋れよー」

ニコニコニコニコ。さっきよりももっと笑顔だ・・・。
ふ〜っ、と大きく息を吸い込んで、いのの顔をじっと見つめる。
よしっ。言うぞ!

「なんでいつも笑顔なの?」

目の前で、いのの笑顔が固まった。
もしかしてあたし、すっごく変な質問したんじゃ・・・?
しばらく続く沈黙に、さあっと血の気が引いていくのがわかった。
その沈黙を静かに破ったのは、いのだった。

「あゆみと一緒にいると、幸せだから」


「えっ・・・?」
「なんかさー、あゆみと一緒にいて、喋ったり、メシ食ったり、ぼーっとしたり。
 とにかく一緒にいるだけで、嬉しくなるんだよ、俺。それで、自然と笑顔になるわけ」
「そう、なの・・・?」
「何? 俺がいつも笑顔じゃ不満なの?」
「不満ってわけじゃないんだけど・・・・」
「けど?」
「・・・不安には、なる」

そしてあたしは、今まで自分が思っていたことの全部を、いのに話した。
いつも笑顔だから、あたしには悩み事とかも相談できないのかな、って思ってたこと。
それがいつも、心の中に引っかかっていたこと。それで悩んでいたこと。
あたしが話している間、いのは黙って聞いていてくれていた。

「と、いうことです」

あたしが話し終わると、いのは一度、窓の外の雲をぼんやり見つめた。
そしてもう一度、あたしのほうを向くと、一言。

「あー、よかった」
「・・・?」
「俺、嫌われてたわけじゃなかったんだ」
「えっ!? なんであたしがいののことを嫌いになるの!?」
「だってさー。あゆみ、いっつもクッラーイ顔してたじゃん。
 俺、もしかして俺と一緒にいるの嫌なのかな? って悩んでたんだぞー」
「・・・ごめんなさい・・・」
「いいよ、別に。でも、その原因作ってたのは俺なわけだし」

ぷにー。そう言いながら、あたしのほっぺを軽くつねる。

「でもさー、俺がいつも笑ってるからってそんな風に思ってくれるなんてねー」
「うー・・・」

ほっぺずっとつねられてると痛いんすけど、井ノ原さーんっ・・・

「ま、今んとこ俺は、悩みなんてねーからさ」
「ほんとぉ!?」
「うん。あゆみちゃんがなぜ暗い顔してるんだろ?≠チて悩みは見事に解決したし♪」
「うっ・・・」
「何かあったら一番に言うよ。約束する」
「ほんとだよ!?」
「ああ、ホントホント」
「だったら」
「だったら?」
「悩みない時は、いっつも笑っててねvv」
「ハイハイ」

にっこり。いのが笑う。あたしも自然に笑顔になる。


あたしの彼、井ノ原快彦26歳。
職業、V6。
付き合い始めて5ヶ月、これから先が楽しみな、新鮮カップル。

もちろん、悩みなんて・・・・
まったくもってないくらい、幸せですっ!!


−−−E N D−−−

<あとがき>

「カッコイイ井ノ原さん」つーことで、優しい包容力のある大人の男を目指して書いてみたんだけど・・・
これでよかったのか!?(苦笑)
いのっちって、いつもニコニコ笑ってるイメージがあるので、こんな感じに仕上げてみました。
なぜ5ヶ月か? あたしがあゆみちんと知り合って5ヶ月くらいだから、それだけ(笑)
気に入ってくれれば幸いですvv

わたあめ
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「For you」のお返しにと、わたあめさんが書いてくださいましたぁ。どーもありがと♪
いやぁ、それにしても、ホント贅沢なことで悩んでるねぇ、あたし(笑)。
ノロケてるよ(笑)。ムフ、ムフ、ムフフvvv(笑)。
ステキなお話どうもありがとでしたっ!
2002.9.29

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