優しい悪魔


「お前聞いてんのかよっ」

少しイラ立った声に、ハッと我に返る私。

「聞いてるってば」

「俺はね、アイツが”欲しいな”って思ってるやつをプレゼントしたいワケ。

でもさぁ、何回聞いても答えてくれないんだよねぇ・・・」

私の向かいの席で、頭を掻き毟りながら悩んでいるのが、井ノ原快彦。

あゆみちんのカレ。

あゆみちんへ、付き合って丸3年記念日のプレゼントに何がいいか話している所。

・・・実際は話してるっていうか、話されてる(?)。

「だからね? こう・・・何て言うのかなぁ〜」

「私に聞き出せって言いたいんでしょ!?」

「さすがだねぇ、 分かってるね〜俺の事♪」

結局はそーいう事。

普段いのっちから電話なんて滅多に無いのに。

掛かってきたと思ったらこういう話。

でも、そんな聞き出せて言われてもなぁ〜・・・。

っていうか、いのっちが自分で選んだヤツ渡せばいいのに。

呆れぎみで話を聞いていた私は、飲み干したコーヒーカップを片手に、

窓から見える外の景色を見ていた。

「その変わりさ、お前が欲しいモノ、坂本君に伝えとくからっ!! ね、何がいいの?」

自分のお願い事が聞き入れてもらったと思っているいのっちは、

ニコニコと、普段から細いと言われている目を更に細めて、可愛い笑顔を私に向けてきた。

そんな事急に言われてもな〜・・・。

そう言えばあゆみちん昔言ってたなぁ。

“いのの笑顔見てると、腹立つ事あっても許しちゃうんだよねぇ”

って。

「私は・・・何でもいいよ」

「お前もそんな事言うし。 なんで素直に欲しいモノ言わないの!?」

「そんな事言われても・・・。 欲しいモノなんて突然言われても分かんないよ」



ホントは“コレ”っていうモノは無い。

好きな人からプレゼントされるのなら、どんなだって嬉しいもん。



「それより、せっかくの休みに私なんかと居ていいの?

あゆみちん知らないんじゃないの? ウチらが会ってる事」

「いいのっ。 世の中には付いていい嘘っていうのがあるんだよ。

あゆみは今日仕事なんだし、あゆみの為にこうやって会ってるんだから。

それに、そーいう事であゆみは怒ったりしないよ。

何気に信じてくれてたりするからさっ」

更にニコニコしながら、和風スパゲティを口の中に放り込んだ。

今日私は何の為に、時間を割いてココに来てんだろう。

2人のノロケ話を聞く為だろうか・・・。



夕方から私は、彼に会う約束をしていたので、

待ち合わせ場所の近くまで、いのっちに送ってもらった。

数分待っていると、今まで仕事をしていましたと言わんばかりの格好で、彼がやって来た。

待ち合わせをしてから、晩御飯を一緒に食べて・・・。

すっかり恋人の姿になってしまった自分が、とても幸せに感じる。

濃いグレーのスーツに、薄い水色のワイシャツ、きっちりとネクタイを締めたその姿は、

とても大人に感じたんだけど・・・。

実はすごく子供っぽい事、知ってるんだ。

キムチは洗わないと食べられないし、虫を見ると逃げ出しちゃうし。

高所・暗所全くダメだし・・・。

そういうのは、ごく1部なんだけど。



あ、今日いのっちに頼まれた事、相談してみよっかな?



「今日ね、いのっちと会ってたの」

「井ノ原と? また何で」

「それがね・・・」

プレゼントに何がいいか?ていうのを相談された事。

そのプレゼントを買ってきて欲しいって頼まれた事。

今日あった事を全部話した。

「それって人に頼んじゃダメでしょ〜」

「そうでしょ!? あゆみちんには聞くに聞けないし」

ちょっと考えながら、氷の解けたカシスソーダを口に含んだ。

「よし。 井ノ原に罰を与えよう。 俺にいい案があるんだけど・・・」

そう言って、イタズラをする子供のように目を輝かせながら、嬉しそうに話始めた。



後日、私はいのっちと連絡を取って、あゆみちん用にと買ったプレゼントを渡した。

「ありがとうっ!! んで、中身は何なの?」

「彼から貰ったら、女の子は誰もが喜ぶモノだよ♪」

とだけ伝えると、いのっちはまたニコニコしながら足早に去っていった。

果たしていのっちのあの笑顔は、次に会った時にも健在だろうか・・・。



私はすぐに、彼に電話をした。

「たった今、いのっちにプレゼント渡したよ」

『んでお前、中身どうしたの?』

「ちゃんと言われた通り、スゴイのを買っておきましたよ☆」

『お主も悪よのぉ(笑)』



その日の夜、私の所へはあゆみちんといのっちから怒りの電話が鳴りました。





【ちょっと聞いてよっ!! いのったらねぇ、付き合って3年目のプレゼントにって、

超エッチな黒の下着なんだよぉーっ!! もぅ信じらんないっ!!!!!】



―END―


穂乃香ちゃん的コメント。

すみません、また登場しちゃいました、やっかい者(笑)
でも、これはちゃんとしたあゆみちんへのプレゼントです^^;
カウント4415踏み、おめでとう☆

っていうか・・・次はちゃんとした井ノ原サン書きます(笑)
ゴメンちゃい。

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穂乃香ちゃんっ、どーもありがとーっ!!
嬉しいよぅ。
素晴らしいオチに、しかと笑わさせていただきました(笑)。
てゆうか、もしホントにいのから黒いエッチぃパンツもらったら、
あたしは、「変態っ!!」って投げ返すと思うね(笑)。

そして、“彼”とお幸せにねっ(笑)。
2002.9.12

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