愛の罠


「ねぇ、いいだろ?」
「やだ!」
「なんでだよ!」
「なんでも!」
だってやるのは初めてじゃないんだろ?」
「そうだけど…」
「じゃあ、やろうぜ!」
「私、元々あんまり好きじゃないっていうか…」
「いいから!いいから!」

今日は何故かすごく機嫌のいい剛。
ずっとニコニコしていて、さっきからこんな風にしつこく誘ってくる。

「もう剛ってば、しつこいよ」
「俺は、お前とやりたいんだってば」
「私は、今そういう気分じゃない」
「俺は、そういう気分」
「剛が良くても、私が良くないの!」

剛は、私の言葉なんて聞かずに、私に背中を向けて、遠ざかっていく。

「こっち来いよ」

振り返って、そう剛が言った。
私がその言葉に弱いの知ってて、わざと使ってくるんだ、この男は。
とか言って、私も結局、剛に引きずり込まれていくんだけどね。
剛の強引さに、そして断り切れない私の意志の弱さに、ひとつ溜息を吐く。

「じゃあ、一回だけだよ」
「わかってるって」

剛がニヤッとする。
私は、そんな剛の隣に腰を下ろした。

「真剣一本勝負!」

私たちがこれから何をやるって?



それは、剛が今ハマっているというゲーム。
その影響が私にまで及んでしまっているというわけ。
V6のメンバーとやればいいのに、
なんで私とふたりきりで会えたときにまでやらなくちゃいけないのか。
そんな想いに駆られて、ちらっと剛の横顔を見ると、
剛は、少年のような顔でゲームに夢中になってた。

『ま、いっか…』

剛の無邪気な顔に、私も怒れなくなってしまい、
最後には許してしまう。
これがいつものパターンだったりするんだけどね。

「よしっ、勝った!」

剛の声でハッと我に帰る私。
テレビの画面を見据えると、私はいつの間にか剛に負けていた。

「えっ、ちょっと待って!何、剛勝ってんの!?」
が弱いだけだろ?」
「今、ちょっと考え事してたの!」
「ダメ、俺の勝ちは勝ちなんだよ」
「えー!ずるい!」
「ずるくねーよ、が勝負の最中に考え事なんかしてるのが悪いんだろ?」
「もう1回!」

私は、思わずムキになり、もう一度剛に勝負を挑んでしまった。

「あれ?1回だけじゃなかったのかよ」
「もう1回!こんなんじゃ納得いかないもん」
「よーし!」

私が負けてはもう1回、剛が負けてはもう1回…。
いつの間にか私までもがゲームに夢中になってしまっていた。

「なぁ、…」
「何!」
「もうすぐ終電じゃねぇ?」

剛のその一言でハッと気が付く私。
そうだ、今日は剛の家に来ていたんだった。

「えっ、嘘、もうこんな時間!?帰らなきゃ!」
「でも、まだ勝負はついてないぜ?」
「え?」
「俺と、今同点」
「えー!?同点!?」
「さぁ、どうする?」

剛は、八重歯を見せながらニヤニヤして私の顔を見てきた。
私に見せられたその剛の顔がまたなんだか悔しい。
でも、ここで勝負を受けたら、終電には乗れなくなる。
でも、ここで剛を振り切って帰ったら……。

「…やっぱりやる!」

一度、立ち上がって帰り支度を始めた私も、
剛のあの顔を見てしまっては、帰ることができず、
もう一度、剛の隣に腰を下ろした。

「やるかっ!?」
「こんなんじゃ悔しいもん!」
「よし、よく言った」

すると、剛が突然私の腕を引っ張った。
えっ?と思った瞬間には、私の体はすでに床に崩れていた。

「ちょっと剛!?」
「引っかかったな」
「え…?」

そして、私の唇は剛に塞がれた。
そのとき初めて私は、自分が剛の罠にかかっていたことに気が付いた。
強引に私にゲームをやらせたことも、
私が負けず嫌いだということも、
わざと終電に乗り遅らせることも、
すべて剛は計算していたのだ。

「剛のバカ」
「なんとでも言え」
「悔しいー!」
「罠にかかるが悪い」

そう言って、剛が微笑んだ。

「挑戦状」

私は剛の首もとを引き寄せ、そう言ってひとつキスをした。
剛は、小さくニヤッとして、

「覚悟しとけよ」

と言った。
そうして、私と剛の夜は更けていった。



−−−E N D−−−

最後の言い訳っ。

急いで書き上げてしまったから、なんとなく文章がおかしい気もするんだけど…。
とりあえずこの話の元は、少年隊の「誘われてEX」(笑)。
サビの前の「ねぇ、いいだろ?」の囁きがふと「何がいいんだろう?」と気になったのであります(笑)。
ちなみに、歌の中のその囁きセリフは全部剛ちゃんのセリフの中に含まれてます。
ふたりがやっていたというゲームは、なんだろう?もしかしたらみんなのゴルフ4かもしれないね(笑)。
2004.5.17


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