雪が降る


 「疲れたぁー…」

忙しかった仕事を終えて、私は自分のアパートの階段を登っていた。
そして、自分の部屋のドアの前まで来て、鍵を取り出そうとすると、
部屋の電気が点いていることに気が付いた。
明らかに誰かが部屋の中にいる。
だけど、それが誰なのか、私にはすぐにわかった。

 「ただいま!」

錠の下りていない扉を開けると、
やっぱり、中には剛がいた。

 「おかえり」

剛が微笑む。

 「今日、仕事早く終わったの?」

靴を脱ぎながら、私は剛に聞く。

 「そう。だから、時間ちょっと早かったけど、ん家来ちゃった」
 「お疲れ様」

と、私は軽く剛の唇に、自分の唇をあてる。

 「だって」

今度は、剛が私に唇をあててきた。
その時、部屋にいい匂いが充満していることに気が付いた。

 「なんかいい匂いがする…」
 「あ、夕飯作ってた」

え…?今、剛なんて言った?
夕飯?
剛が??

 「…えっ?剛が料理…?」

思わず、口走る。

 「当たり前だよ。俺以外の誰がん家で料理すんだよ」

私は、キッチンを覗き込む。
すると、ぐちゃぐちゃになりながらも、剛の料理の途中の様子が窺えた。

 「俺だってたまには思うんだよ。ただ行動に移さないだけで。
  それに、VVV6でいろいろと鍛えられたしね」

と、言って、また剛は、料理の続きをし始める。
私はなんとなく、狐につままれた感じだった。

 「もうすぐ出来上がるから、着替えて来いよ」
 「うん…」

もしかしたら、剛の料理なんて初めてかもしれない。
今までは、もっぱら私が作っていて、剛は手伝いもしなかった。
私も料理は得意なほうではないけれど、剛が料理は全くしないって思ってたから、頑張ってた。
おかげで、私のレパートリーは増えたけど。
私は、そんな剛が嬉しくなって、素早く着替えてキッチンへ急いだ。

 「グッドタイミング。ちょうどできた」

テーブルの上には、剛の作った料理が並べられていた。

 「すごい…」

そこには、本格的な料理が。
私は、感心してしまった。

 「だろ?俺だってやる時は、やるんだよ。坂本くんなんて目じゃないね」

剛は、うひゃひゃひゃと笑った。

 「食べて」

と、剛はイスを引いてくれた。

 「いただきます」
 「どうぞ」

剛は、黙って私の言葉を待っている。

 「おいしい!」

私は、素直に感激した。
初めて食べた剛の料理は、意外に(!?)おいしかった。
テレビでは、めちゃくちゃやってたけど、
剛だって、真面目にやれば、おいしく作れるんだ。

 「今夜、雪が降るかもね」
 「あ!?どういう意味だよ」
 「だって、剛が料理するなんて、珍しいじゃん」
 「今は、もう初夏なんだから、雪は絶対に降りません」

と、言いつつも、剛は満足そうに笑っていた。


おいしいひとときを終え、食器もかたづけ、
ふたりでのんびり食後の紅茶を飲んでいた。
私は、今日のことがすごく嬉しかったから、剛に話しかけた。

 「ねぇ、剛。また夕飯作ってね」

だけど、剛は…。

 「ヤダ。俺はもう作らないよ。今度からが作るの」
 「え!?何でよ。剛の料理、おいしかったんだから、また作ってくれたっていいじゃん」
 「今日は特別。明日からは、特別はもうないの」

最初は冗談を言っているのかと思ったけど、
いつまでも強情な剛に、次第に腹が立ってきた。

 「今日みたく本格的に作ってくれなくてもいいからさ」
 「ヤダっつってんだろ」

剛もイラつき始めた。

 「強情だよ、剛」
 「うるせーよ!俺は、今まで料理なんかしなかったんだから、それでいいだろ!?」

私は思わず、涙目になって、近くにあったクッションを剛に向かって投げた。

 「いってーな!何すんだよ」
 「私は、ただ……今日のことが嬉しかったからっ……」

その瞬間、空中を白い何かが舞い始めた。
さっき、剛に向かって投げたクッションが、
その弾みで中身の羽毛が弾けてしまったのだ。
私と剛は、一瞬、何が起こったのかわからなくて、ふたりしてポーッとしていた。

 「あ……」

私がその沈黙を破る。

 「…剛…雪が降ってるよ…」

クッションの中の羽根が高く弾け飛び、まるで雪のように、舞い落ちている。

 「…ホントだ…」

剛も頷いた。


季節外れの“雪”は、すぐにやんでしまったけど、
私たちは、降り積もった“雪”の中で、一緒に夜を明かした。
その中で、剛が一言、

 「ごめん」

って、謝った。
ふたりだけに降りそそいだ“雪”は、いつまでもいつまでも溶けることはなかった……。


−−− E N D −−−

最後の言い訳っ。

あたし、かなり怪しい人。
コレ、ひとりでニヤニヤしながら書いてた(笑)
剛ちゃん、いい感じですv
なんかもうコレは、言い訳なんてないかも(爆)

あっ、ひとつ言い訳するとしたら、
クッションを人に軽く投げただけで、中身が高く弾けるなんてことは、あり得ないと思いまーすっ(笑)


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