新人作家心得〜地雷作家にならぬ為に〜
 典型的な駄目な例とその理由、そうならないためにどうするか列挙する。

・まず、短編を書け。
 構成力の無い人間ほど長編を書きたがるが、短編を書けない人間にまともな長編は絶対に書けない。
 長編と称するもののほとんどは、実は話をまとめる能力が無いから思いつくことをズンダラ書き連ねて無駄に長くなっているだけである。
 悪い事は言わん。短編を書け。何は無くとも最初から最後までまとまった話を書かないことには話にならん。
 向き不向き以前の問題として、長編に手を出す前に最低数本は短編を書き上げてからにしろ。

・序盤で作品の方向性を明確にしろ。
 最初の部分で読者を食いつかせる面白さが無ければ、そもそも読んでもらえない。
 全体のおおむね10%程度でインパクトを与え、次の10%まで(つまり冒頭から20%)で話の方向性くらいは明確にするべきであろう。
 何がメインなのか、どういう話なのかハッキリさせよ。
 書きたい要素を片端から放り込むと話が破綻する。

・説明するな。描写しろ。
 直截な表現は作品としての死。
 少なくとも文章表現の豊かさ、美しさを求めるなら、強い者を「強い」、可愛いものを「可愛い」、感情を「泣いた」「笑った」「〜と思った」と書いてしまったら、何もかも台無しである。
 極力誤解を避け、内容を把握させる事を第一義とするシナリオと小説はそこが決定的に違う。
 箸の上げ下ろしの仕方ひとつでも感情や性格を表現するつもりで、心して書け。

・無駄を省け。必要な描写の手を抜くな。
 目立たせたい要素の邪魔をしない為に、不必要な文章は極力削れ。
 必要以外のものが多いと本当に重要なものが目にとまり難くなる。花壇の周りの雑草は刈れ。
 逆に肝心なシーンでは読者の脳内に情景が浮かぶよう徹底的に言葉を吟味して、しっかり書き込め。

・バトル物は最低街道まっしぐら。
 いわゆるバトル物は駄作率が極めて高い。
 それだけ手を出しやすく、かつ面白く書くのが困難なジャンルなのである。
 どうしても書きたいなら止める術は無いが、話が面白くなるか否かはバトル以外の部分をいかにうまく書くかに掛かっている事を常に忘れてはいけない。
 バトルに至るまでのドラマがあってこそ盛り上がるというものである。
 テンションを抑えて緩める部分をうまく作る事が肝要。
 また、勝ちっ振りより負けっ振りをうまく描くのも重要。
 漫画などでバトル物が盛り上がるのは、弱みを抱えた不完全な主人公やその仲間が、七転八倒しながら前に進むからこそなのをよく考えろ。

・ステレオタイプを避けよ。
 誰でも思いつくような陳腐な人物やエピソードをわざわざ読みたいとは誰も思わん。
 特にドタバタ系は要注意。ギャグやコメディがシリアスより簡単なんて事は絶対に無い。
 型月系でいうならいがみ合うアルク&シエル、やきもちを焼いてキレる秋葉、食べ物が原因で暴れるセイバー&藤ねえ、何かというとガンドを打ちまくる凛etc――典型的に駄目。
 捻りを加えろ。ただし少しだけ。
 奇をてらうとよけいに薄っぺらくなる。
 例えば私なら逆転の発想をしてみる。
・アルクとシエルが妙に仲がよくて逆に怖い。何か企んでいるのでは?(ガタガタブルブル
・セイバーが食欲を無くした。御機嫌をとる手段を失って士郎が(ガタガタブルブル

・ネタのインパクトに頼るな。
 ことさら大事件を起こしたり、斬新な設定を捻り出す必要は無い。
 むしろささやかなきっかけを丁寧に盛り上げた方が、話に厚みが出る場合が多い。

・二次創作は簡単であるがゆえに難しい。
 二次創作、つまり何らかの作品を下敷きに、そこそこ面白い作品を作るのは簡単である。
 なにせすでに用意された魅力的なキャラや設定を使えるのだ。
 はっきり言おう。
 型月系の場合、最低限の筆力がある者がSSを二〜三本書いて 全自動月姫Links-Albatoross-さんに登録すれば、必ずある程度(したらばの型月総合板SS関係スレや各種ニュース系サイト、ブログ等で)話題になる。絶対に。
 貴様の作品がそうした外部で全く話題にならないようなら、それは致命的につまらないという証明に他ならない。
 そして二次創作を書いて実力向上に繋がるのは、既にある程度筆力があり、かつ飽くなき探究心をあわせ持つ者だけである。
 なにしろ二次創作はただ書くだけなら頭を使わなくとも書けてしまうので、難易度が低過ぎるのだ。
 単に原作が好きでそのSSが書きたいというならそれもよし。
 だが、文章が上手くなりたくて、でも書く力が無いからまず二次創作で、というなら順番を間違えている。
 要するに。
 本当に上手くなりたければ一度、一次創作、つまり完全オリジナル作品を書いてみろ。
 もちろん、きちんと完結させる事が最低条件だ。
 一本書き上げただけで、確実に貴様の実力は向上する。
 完全オリジナルを書くのは書くだけでも非常に難易度が高い。
 だが、本当に上手くなりたければ、苦しい道を避けてはいかん。
 別に最低限の実力がつくまで二次は書くなとは言わんが、書くのが簡単だからと二次だけやっているなら、すぐに頭打ちが来る。



文責 ばんざい 2004.9