Fate/stay night impossible story   after“Heavens Feel”

「ねえ士郎ぅ〜。ちょっとわたしのバイク見てよぅ。なんだかタイヤが滑るんだよぅ」

 またか。
 甘ったれた声に台所から顔を覗かせた士郎を制し、代わりに私が玄関先へ応対に出る。

「タイガ、いいかげんになさい。自分の単車の面倒くらい、少しは自分で見たらどうですか?」
「う゜……。ラ、ライダーちゃんには頼んでないもん。士郎、しろう〜!」

 いつものジャンパースカートの下にジャージをはき、ヘルメットを被ったままという間抜けな格好で玄関先までスクーターを乗りつけた女教師は、意地になって私の肩越しに屋敷の中に呼びかけた。

「士郎に見せるまでもありません。それと、私にちゃん付けするなと何度言わせる気ですか貴女は」

 タイガをまたがらせたままスクーターを土蔵の方に押しやる。

「なにすんのよぅ。背中におっぱい押し付けるな、嫌味かゴルァ! 放せデカ女!」
 一瞬、スクーターごと塀の外に投げ捨ててやろうかと思った。割と本気で。









追走 Pursuit the “ROCKET TIGERDIVER”
written by ばんざい








 だが、私の腕を叩く革グラブ。
 単車用でもなんでもない、作業用手袋――税込み千五百円――が彼女の宝物であるのを、私は知っている。
 軍手でスクーターに乗る彼女を見かねた士郎からプレゼントされたとき、泣いて喜びながら彼の頬にキスの雨を降らせた――頬肉を喰い千切ろうとしているようにも見えたが――のを見てしまった。
 ――あの後しばらく、サクラの機嫌が悪くて閉口した。

「普通の体格で慎ましやかな胸のタイガは、体重も重くはなさそうですね」
「慎ましやかで悪かったなあッ!」
「そのタイガがまたがっただけでタイヤがこんなに潰れるとは、よほど空気が抜けているはず。貴女、まさかわざとやっていないでしょうね?」
「なんでわたしがそんなことしなくちゃいけないのよぅ」

 エミヤ家の台所の主導権をサクラが握った今、このスクーターは彼女が士郎に甘える一番の口実だから。
 無論、彼女も判っているのだ。
 彼女の可愛い弟分が既に彼女の手を離れ、伴侶を得た事を。
 そしてもちろん、その事を誰より喜んでもいる。
 だが、要するに彼女は寂しいのだ。

『急に走らなくなっちゃったよぅ』
 ――ガス欠だった。
『エンジンかからないよぅ』
 ――ガソリンの給油口にオイルを入れたらしく、プラグがかぶっていた。
『調子悪くなっちゃった』
 ――大雨の中、何も考えず深い水溜りに飛び込んだらしく、エアクリーナがびしょ濡れだった。

 タイガは、友人から乗らずに放置されていたスクーターを引き取ってきて以来、一々ごくつまらないことで士郎に面倒を見させていた。
 そのかたわらに常に私がいた。
 そもそも走らなくなっていたスクーターを引き取る為に、元の持ち主である酒屋から軽トラを借りて運転してきたのは私だし、腐ったガソリンの悪臭に耐えながらバラしたキャブを洗ったり、タイガがオイルの補充を忘れて焼き付かせたシリンダを磨くのを手伝ったりもした。
 本当はタイガ自身が、士郎と一緒にやりたかったのかもしれない。
 その機会のことごとくを、私が奪った。あえて。
 彼女には少しずつ、士郎離れしてもらわねばならない。サクラの為にも、士郎の為にも、彼女自身の為にも。
 ならば、私がかまってやるしかないではないか。
 それにタイガの寂しさは、良く判る。なぜ良く判るのかは良く判らない。


 スクーターのリヤタイヤの空気圧不足は、測るまでもなく指で押しただけで判った。

「こんな状態になるまで気付かなかったのですか?」
「先週から少しずつ、なんだか滑るなぁとは思ってたんだけど、だんだんひどくなって。わぁ、すごいスゴイ」

 自分でタイヤをへこませて驚いている。どうやら天然らしい。
 土蔵から空気入れを探し出し、タイガに空気を入れさせタイヤを一通り見てみたが、目につく異物や傷は無く、ホイルの変形も無い。微細な穴からゆっくり空気が抜けるスローパンクチャかもしれない。
 それより私の気を引いたのは、異様に端ばかり磨耗し青焼け――熱が入ったタイヤを放置すると油分が表面に滲み出して青光りする――したタイヤそのものだった。
 それはタイガから借りて自分でもこのスクーターを乗り回していた士郎が調子に乗って入れた、スクーターレースにも使われるハイグリップタイヤである事を思い出す。
 タイガの教え子達が彼女の事を、こっそり陰で「ロケットダイバー」と呼んでいるらしいと聞いた時は、粗暴な彼女の無謀運転を指しているのだろうと気にも留めなかったが、あながちそればかりではないらしい。

「とりあえず当面は大丈夫だと思いますが、いずれにせよこのタイヤはもう換え時ですね。士郎がまとめ買いしたタイヤがライガのガレージに置いてあるはずです。そちらに参りましょう」
「えぇっ、ウチに来るの? いいよぅ。また今度、士郎に頼むから」

 タイガは私がフジムラの家を訪れるのを歓迎しない。男達の関心が私に集中するからだ。
 生まれ付いてフジムラのお姫様であったタイガには、それが面白くないらしい。
 要するに彼女は甘やかされ過ぎて大人になってしまった為、努力が足りない面があるのだ。

「タイガ。貴女も単車乗りの端くれなら、少しは自分で面倒を見る事を覚えた方がいい。今回は私が教えますから」

 有無を言わせず玄関へ自分のヘルメットとグラブを取りに行くついでに、士郎にフジムラの家へ行くむねを伝えた。

「夕飯までに戻って来いよ〜」

 タイガは士郎の声が聞こえてきた台所の方を未練がましく眺めてから、私を追い越しざま一睨みしてスクーターにまたがった。

「ほら、行くんなら早く行くわよ。モタモタしてたら置いてっちゃうから」
 理不尽な言い様に苦笑し、私は自分の単車のエンジンに火を入れた。



 私の単車のエンジンが温まらないうちに引き離すつもりか、タイガはむきになって飛ばした。
 エミヤ邸からフジムラ邸まで緩く下り続ける道を全開で駆け下る。
 が、しょせん原付の全開加速ごとき、私の単車は暖機運転中でも充分ついて行ける。
 そもそも歩いてもいくらもかからぬ距離だ。差がつくまでもなく到着した。
 タイガにはライガにガレージを使う旨を断りに行かせ、早速ホイルを外し始める。
 既に日が傾き始めているので、手早く済ませねば夕飯時に遅れてしまう。
 戻って来たタイガには新品タイヤを洗剤で洗うよう指示する。

「なんで? きれいじゃない」
「劣化防止にシリコンワックスが塗られています。落としておかないと滑りますよ」

 ガレージ前で不器用に水撥ねさせながらタイヤを洗い始めたタイガに問う。

「走るのは、楽しいですか?」
「うん、そうだね。最初は学校まで早く着けるようになればいいなと思っただけだったけど。こんなにわくわくする乗り物だとは思わなかったよ。自分の力だけじゃ絶対出来ない事が出来るようになるって、なんだかサイボーグになるみたい」

 あちこち服を濡らしたタイガに手順を説明しながら、タイヤ交換を始める。
 スクーターの10インチタイヤは、小さ過ぎてかえって扱いが難しかった。
 幅が細過ぎてビードブレーカが効かない為、なにか変わりになるものがないかとガレージ内を見回し、万力と板切れでタイヤを挟んでビード(タイヤがホイルのリムに接する部分)を落とした。
 タイヤレバーでタイヤを外してみせると、タイガは目を丸くする。

「へぇ。人の手でバイクのタイヤって交換出来るんだ。もっと大げさな機械使うのかと思ってた」
「もう1本はタイガがやってごらんなさい。あぁ、力任せにレバーをこじ入れてホイルを傷つけないように」

 ビードワックスが見つからなかったので洗剤で新品タイヤのビードを湿らせ、外した時と逆の手順で組み付ける。

「ライダーちゃんのバイクに比べるとおもちゃみたいだねぇ」
「大きくても小さくても、単車は単車です」
「それはそうなんだけどさ。上り坂でじれったいからもっとおっきなバイクの免許取るって言ったら、お爺さまってば『お前ェにゃ十年早ェ』とか言うのよ。ライダーちゃんにはいきなり大型免許取れって言ったんでしょ? ずるいよ。えこひいきだよ。チクショウ、色気か? 色気の差か!? その肉をよこせ!」

 喚きながら私の胸に伸ばしてくる手を空気入れで叩き落す。

「そういうがさつなところが信用を無くしているんだと思います。さあ、空気を入れて終わりです。気合を入れて一気に圧力を上げないとビードが上がりませんから、がんばって下さい」

 ガレージには電動コンプレッサもあるのだが、あえて自力で入れさせてみる。
 顔を真っ赤にしてポンピングしたタイガの労力は無駄にならず、運良く素直にビードは上がった。
 ビードがリムにはまる際の爆竹じみた破裂音にタイガは腰を抜かした。期待を裏切らないリアクションだった。

「なんだよー。こんなにおっきな音がするんなら最初から教えてよイジワル!」
「それは失礼しました。さあ、早く戻らないと夕飯に遅れますよ」

 照れ隠しに喚くタイガを急かし、ホイルを車体に組みなおす。

「ところでタイガ。明日の帰宅時間はいつも通りですか?」
「ん、部活あるからね。なんで?」
「いえ、夕飯用の買出しの都合がありますので」

 取ってつけたような理由にタイガも気付いたらしく、ニヤリと笑みを返してきた。

「あ、明日はちょっと回り道して帰るから、少し遅くなるかも」



 夕食時、タイガは明日の朝食は少し早めにしてくれと申し出た。
「普段よりもっとか? 朝練にしてもちょっと早くないか?」
「たまには自分の朝練しなくちゃ、鈍っちゃうもん」
「新品タイヤは一皮剥けるまで滑りますから、気をつけて下さい」
 私の忠告にタイガはサムアップで答えた。
「うん。念入りに皮剥きするよ」


‡    ‡    ‡    ‡    ‡    ‡



 翌日。
 私はライガの使いでの届け物とサクラに頼まれた買い物を終え、タンデムシートにくくり付けていた(トランク)を下ろしてから再び単車に跨った。
 タイガを向かえに行く為に。
 彼女が学校の正門を出て来た時、すでに空は黄昏れて夕闇が迫っていた。
 だが、この方がむしろ灯火で対向車などを判断できる為、見通しの効かない場所では日中よりむしろ安全だ。
 タイガはことさらゆっくり、エミヤ邸やフジムラ邸とは明らかに違う方向へ走り出した。
 その背中にパッシングしてやるとタイガはすぐに気付いて振り返り、ひとつ頷いた。

 さあ、拝見しましょう。ロケットダイバーがいかほどのものか。

 彼女は前に向き直り、一気にスロットルを全開。
 やがて住宅地を離れ山の中を駆け下る急な下り坂に差し掛かり、センターラインも無い九十九折りの狭い道で本格的な急降下(ダイブ)が始まった。
 タイガはスロットルを戻さぬまま、まさに谷へ飛び込むがごとくイン側へ上半身を投げ出しコーナーにアプローチ。
 先行した上半身に車体のバンクが追いつくようにリーンウィズになったところでブレーキング。エンジンやミッションなど重量物が集中したリヤの荷重が減少しスライドする。
 慣性に負けてアウトに逃げるマシンに逆らわずアウトへ体重を移しバランスをとり、ブレーキをリリースしてパワーオン。
 コーナーに飛び込んでしまってから上半身を振り子に使って荷重・抜重のタイミングと方向を巧くコントロールしている。
 私が今までに見た、ハングオフと深いバンク角で旋回速度を稼ぐ小排気量車の乗り手とは一線を画した、動物的なバランス感覚を活かした走りだ。砂が浮いて荒れた路面に上手く適応している。
 それにしても厄介なコースだ。
 直線が全く無い一方、極端にスピードが落ちるコーナーも無く、常に左右に高い旋回Gが加わり、加速力を活かす局面が全く無い。
 しかも下り勾配がきつく、旋回中ブレーキを緩めただけで加速してラインがアウトへはらみ、重量車には圧倒的に不利。
 先行するタイガの背中を追うので精一杯だ。
 知らず、自分の口許が笑みを形作っている事を意識する。

 なかなか楽しませて貰いました。
 今度は私が最大の敬意をもって返礼しましょう、ロケットダイバー。

 道幅を一杯に使い常に左右どちらかにフルバンクし続け、コーナーとコーナーの中ほどで切り返すタイガのタイミングを慎重に見極める。同じラインでは絶対に追いつけない。
 急な傾斜の山腹を縫う道は、コーナーのイン側で特に傾斜がきつくなる。
 タイガはそれを避け、アウトから進入してインにつくタイミングを遅らせている。
 高い旋回速度を保つ、非常に理に適ったライン取りだ。

 ならば、力技で捻じ伏せるのみ。

 ごくわずかな直線で車間を詰め、アウトへラインを振ったタイガに対し真っ直ぐインへ飛び込み並びかける。
 フルブレーキングしたまま崖下に逆落としになる感覚で一気にフルバンク。
 フロントタイヤを鉛直方向に押さえつける感覚でアウト乗り(リーンアウト)。深いバンク角でのハードブレーキングを出口まで継続、アウトにはらむのを強引に抑えコーナーをクリア。
 目前でラインをブロックされたタイガは失速しリズムを崩した。
 一度前に出てしまえばこちらのものだ。
 道を知らない私でも、進入でインを抑えてしまえば余裕を持ってコーナーを回れる速度まで減速出来る。タイガがアウトから被せて来ても、抜くほどの速度差を生じさせられるほどラインに自由度は無い。
 進入で必要以上の減速を強いられ立ち上がりで遅れるタイガのいらつきが、ミラーの中で右往左往する姿から見てとれる。
 これではタイガも負けた気がしないだろう。
 眼下に民家の光も見えてきた。ダイブも終わりが近い。
 私は極端なインベタラインを止め、タイガほどではないが旋回半径を大きく取る最速ラインをとって突き放しにかかった。
 1メートルでも加速出来る場所は貪欲に加速。
 タイガも懸命に食い下がる。
 そして、勝負に来た。
 ブレーキングで私のインに大胆に飛び込んで来る。
 私は無理にチキンレースに付き合わず更に減速。タイガを完全に前に出してからラインをクロスさせ、立ち上がりでインに入るラインをとる。
 先にインについたタイガが恐らく勝利を確信したであろう瞬間。
 彼女のスクーターは突然車体中央を支点にくるりと半回転。ヘッドライトをこちらに向け転倒。
 ある程度予想していた私は更に減速しイン側に巻き込み、スクーターと路肩の隙間を抜けて止まった。
 振り返るとタイガはアウト側の藪の中でもがいていた。どうやら大事無いらしい。

「タイガ、暴れないで下さい。捻挫や骨折しているところはありませんか?」

 私の問いかけにタイガは灌木に埋もれながらあちこちの関節を曲げ伸ばしした。

「うん、だいじょうぶ。頭も打ってない」

 手を貸して藪の中からタイガを引っ張り出し、スクーターも起こして路肩に寄せた。
 フルバンク状態からのスリップダウンだった為、スクーターはカウルが削れた程度で大したダメージは無いようだ。

「タイガはなかなかいい格好になりましたね」

 スカートは破れ、その下に穿いたジャージにも穴が開いて血がにじんだ肌が覗いている。
 士郎に貰った大事なグラブも破れていたが、その下のタイガの手は無事なようだ。

「士郎が守ってくれた……」

 グラブに開いた穴を検分して、舐めている。

「感動するのは結構ですが、グラブは食べない方がいいと思います」

 二人して被害状況をチェックするうちどちらからともなく笑みがこぼれ、やがて並んで路肩に腰をおろし、声をあげてひとしきり笑った。

「ライダーちゃん笑いすぎだよ。これでもあっちこっち結構痛いんだから」
「自業自得でしょう。これに懲りたら今度からもう少しマシな格好で走る事を薦めます。キズモノになったら士郎に貰ってもらうというのも無しですからね」
「フンだ。ちょっとやそっとの傷くらいでガタガタ言う人なんかこっちから願い下げだもん。って言うか、わたしもうお嫁になんか行かないもん。一生小姑として士郎と桜ちゃんをいびってやるんだから」
「それにしてもそのセンスはいかがなものかと。もう少しどうにかして欲しい。どうしてスカートにジャージなのですか」
「だって士郎がバイクに乗るなら怪我するから肌を露出しちゃダメだっていうんだもん。だけどわたし、スカートでもはいてなきゃ女だって言う自覚忘れそうだし」
「無用な心配です。スカートを穿いていようがいまいが、自覚があるようには見えませんから」
「なんだよー。ライダーちゃん、自分がちょっと美人だからってイイ気になるなよぅ」

 拗ねてみせるタイガはとても可愛らしい。
 がさつであるがゆえに可愛いというのは、なんとも皮肉な話だが。

「ねえ。ところでわたし、どうして転んだの? なんかワケわかんないうちにスッ飛んでたんだけど」

 首を傾げるタイガに、私はスクーターのアンダーカウルを指した。

「車体接地してそこを支点にタイヤが浮いたのでしょう。天秤を喰らうというやつですね。 旋回半径の小さい(タイトな)ラインでは瞬間的に深いバンク角を要求されますから、先ほどの走り方はスクーターには不向きです」
「うーん、そんな事まで考えなくちゃいけないのかぁ。奥が深いなあ」
「それだけ楽しみが残されているという事です。タイガはまだ、乗り始めて日が浅いのでしょう? ライガに相談してごらんなさい。きっと喜んでかまってくれます」
「うぅ、きっとまたメチャクチャに叱られるよぅ」

 涙ぐみながらも、タイガはどこか嬉しそうだった。

「ライガは理詰めで説明する人ではありませんから、きっと一緒に遊んでくれますよ」
「ホント、最近は実の孫よりライダーちゃんの方を可愛がってるもんね」

 焼きもちを焼くぐらいならもっと素直に甘えればいいのに。

「さあ、帰りましょう。夕飯に遅れては士郎やサクラに迷惑が掛かります」
「フンだ。どうせ邪魔者がいなくて二人きりでいちゃいちゃしてるよ」

 まったく、素直じゃないのだから。
 タイガも判っているのだ。
 彼女が彼らを愛しているのと同様、彼らも彼女を愛している事を。
 その証拠にタイガの頬はだらしなく緩んでいるではないか。
 それは空腹になったから夕飯が楽しみなだけではないだろう。

「わたしウチで着替えてから行くね」
「では、一足先にエミヤ邸でお待ちしています」

 タイガはヘルメットを被りなおしかけ、私の袖を引いて言った。

「楽しかったよ、すっごく。こんなに夢中で何かをしたのって、ホントに久しぶり」

 その満面の笑みに、私も思わず口許がほころんだ。

「私も楽しませてもらいました。せいぜいライガに絞られてもっと巧くなってくれる事を期待しています」
「だからそれを思い出させるなーッ!」

 半泣きのタイガの咆哮を、無人の山が吸い取った。



 楽しく遊んだから、さあ、帰ろう。
 大事な家族が待つ家へ。
 明日も、その先も、みんなで楽しく過ごす為に。



end

The original work 『Fate/stay night』  ©TYPE-MOON
Secondary author ばんざい 2004.11.2

補足

「ロケットタイガー、もといロケットダイバーというあだ名が追加された」というのはセイバーエンド後ですが、桜エンド後でそうなっていないという理由もどこにもないですし。
 もはやFateの二次創作なのかどうかすら怪しくなってまいりましたが、割り切って楽しんでいただければ幸いに存じます。



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