Fate/stay night alternative story   after“Unlimited Blade Works”

「別に女嫌いってわけじゃないんでしょ? それとも衛宮以外と一緒に街を歩くのは嫌?」
「失礼な事を言うな! 俺も衛宮も健全な友人同士であって――」
「なら、衆道疑惑を晴らす為にも、悪くない提案だと思うけど」
「そんな、計算ずくで人を利用するような動機では不純ではないか」
「あたしがそれでいいって言ってるんだからいいじゃない」

 困った。
 自分が比較的突発的事態に弱く、アドリブが利かないタイプであるのは自覚していた。
 だが、これほど手掛かりが無く、途方に暮れた事はかつて無い気がする。

 衛宮邸での藤村先生による課外授業を終えての帰路、美綴綾子を途中まで送るのは 日課になっていた。
 その道すがら『明日、新都に付き合え』といきなり誘われ、俺は困惑し対処に苦慮した。

「柳洞は、あたしに興味ない? それとも他に好きな女の子がいて、誤解されると困るとか?」
「い……いや。そういうわけではないのだが、男女の間というものはもっと慎重に――」
「慎重にどうするのよ? 別にいきなりあたしの男になれって言ってるんじゃないのよ。
 お互い興味がある。けど、相手の事をよく知らない。 だったら相互理解の努力と歩み寄りをはかるのが建設的人間関係だと思わない?」

 彼女の弁が立つのには、少々驚いた。
 闊達な印象は間違っていなかったが、思った以上に聡明で、かつ押しが強い。
 それがまさか、このような形で発揮されるとは。
 どうにも、遠坂を――あの魔女めを――ほうふつとさせる。












我が内に棲まう獣
written by ばんざい








「しかしだな――」
「ねえ! 嫌なら嫌とはっきり言いなさいよ!」
「そんな事はない!」

 ついに怒り出した美綴に対し、俺は反射的に怒鳴り返してしまった。必要以上に強く。
 どうにもばつが悪い。

「……決してその、嫌だとかそういう事ではなくてだな。君の誘い自体は非常に嬉しく思う。
 だが俺はこの通り不調法ゆえ、女性と二人で何を話してよいかも判らん。きっと君に退屈な 思いをさせる。
 だからだな、どうせなら衛宮たちも一緒に――」
「嫌じゃ、ないんだね?」

 くっきりとした眉を吊り上げたさまはなまじ造作が整っているゆえ恐ろしかったが、反面、 力を抜いたその表情はひどくか弱く見え、そんな顔をさせた自分が許せない気持ちになった。

「あのさ。あたしも男の子をこんな風に誘うの初めてで、凄く恥ずかしいんだよ。
 あんまり女に、恥をかかせないでよ……」

 可憐だ。
 頬を染め視線をそらすしぐさに、俺は魅入られた。

「す、すまん。君を傷つけたり困らせるつもりは全くないのだ。
 本当に、女性とどう接してよいか判らんのだ。許せ」

 必死に言い訳の言葉を紡ぐ。
 そして同時に、一つ疑問が生じる。
 これでもし、彼女がこれほど端麗な容姿に恵まれていなければ、自分はどう感じただろう。
 自分は単に、彼女の美しさに魅かれているだけなのではなかろうか?

「どうしていいのか判らないのはあたしも同じ。
 そもそもあんたに対する興味だって、男としてなのか、衛宮なんかと同じように友達として なのかもよく判らない。
 だから、ただあんたとゆっくり話してみたいだけ。 あんまり身構えられると、あたしも、その……困る」

 そうだ。落ち着け柳洞一成。舞い上がるな。
 別に愛を語られたわけではないのだ。

「……そうだな。不慣れな事ゆえ、過剰に反応し過ぎたようで失礼した。
 お誘い、謹んでお受けする」
「ホントに固いなぁ、柳洞は。あの生徒会室でのお茶会を外でしようってだけなのに」

 言われて思い出す。あの時の感触がよみがえり、たちまち頬が火照る。
 ――なんと我が身の未熟な事よ。
 あの件は、暗黙のうち互いに触れぬようにしてきたというのに。
 彼女も気付いたらしく、慌てて言い訳をはじめた。

「あ、あのね。あの時のアレはあたしも動転してたっていうか、あんな事したの初めてだし。
 ……ごめん、犬に噛まれたと思って忘れて」
「……君は犬に噛まれた事を忘れられるのか?」

 しまった。思わず余計な事を言った。
 彼女は一瞬、何を言われたのか図りかねる様子できょとんとしていたが、やがて豪快に笑って 俺の肩をばんばん叩いた。

「あははははは! アンタ、結構うまい事言うねぇ。
 うん、そうだな。この美綴綾子サマのチューをほっぺに受けた男はアンタだけなんだから、 そう簡単に忘れてもらっちゃ困るな。ありがたく覚えときなさい」

 返答に困る俺をしり目に、彼女は再びさっさと歩き始めた。
 そしてくるりと振り返り宣言する。

「それじゃ、あした十時、駅前でね」
「ま、待て待て。それはかまわんが、俺は一体どうすればよいのだ?」
「はぁ? どうもこうも、ただ街を適当にぶらついたりご飯食べたりするだけなんだから、 何のしたくもいらないよ。じゃね」

 美綴は言うが早いかきびすを返し、俊足を見せて去ってしまった。
 むぅ。
 何のしたくもいらないといわれても、自分は少々――いや、かなり世事にうといという自覚がある。
 なにかとんでもない過ちを犯さぬとも限らん。
 明日。明日までになんとかせねば。
 もはや手段を選んでいる場合ではない。
 恥を忍び、衛宮に相談する事にした。
 時刻は二〇時半を回ったところ。急げばまだ、さほど非常識な時間ではなかろう。



「衛宮、たびたびすまん。少々時間をもらえんか?」
「あれ一成、帰ったんじゃなかったのか?」
「実は進退きわまってな。おりいって相談があるのだが――」

 衛宮邸の居間には、まだ間桐君が残っていた。

「ん? 桜がいると話しづらい事か?」
「あの、わたしお邪魔でしたら失礼します」
「間桐君なら――いや、むしろ迷惑でなかったら一緒に相談に乗っていただきたい。女性の意見も 拝聴したい」
「めずらしいな。一成が学校の事以外で相談なんて。話は長く掛かりそうか?」
「うむ……正直、それすら判らんのだ」
「判った。ちょっと待っててくれ」

 衛宮はどこへやら電話をかけた。
 ――別に盗み聞く意図は毛頭なかったのだが、すぐそばで話している為『遠坂』という 固有名詞が耳に入ってしまった。
 聞いてしまうとどうにも気になる。電話を終えた衛宮に素直に訊ねる。

「すまん。聞くとはなしに聞こえてしまったのだが、遠坂がどうかしたのか?」
「ん、桜と一緒に勉強しに行く予定だったから、少し遅くなるって断っておいたんだ」
「勉強、とは、またこんな夜更けにか? なぜここで続けてしない?」
「あー、うん。遠坂の家じゃないと出来ない実験とかあってさ」
「何度も言うようだが、あまりあの魔女に深入りするのは感心せんな。間桐君もだ。 あまりあの女に毒されぬようにな」

 間桐君は俺の言葉に眼を丸くして驚いた後、くすくすと笑い出した。やはりどうやら遠坂め の本性を理解していないに違いない。

「柳洞さん。それは無理です。血は争えないと言いますし」
「おい桜。いいのか?」
「だって柳洞さんは先輩の親友なんでしょう? この際、知っておいていただいたほうが」
「……話が見えんのだが?」

 間桐君は湯冷ましから急須へ湯を注いでから、姿勢を正して言った。

「遠坂凛は、わたしの血の繋がった姉です。訳あってわたしは間桐の養子になりましたが、 今でも大切な姉には違いありません。ですから、その影響を受けるなというのは無理です」

 ――何を言われたのか意味を消化するまでしばらくかかった。
 言葉を理解しても納得は出来なかった。

「……馬鹿な。君のように可憐な乙女が、あの物の怪と同じ血を引いていると?」
「柳洞さん。わたしを褒めてくださるより、姉さんを悪く言わないで下さい」
「あ、いや失敬」

 思わずもらしたつぶやきに、間桐君は厳しい顔で反論してきた。
 信じたくはなかったが、彼女が嘘をつくような性格ではない事は充分理解していた。

「姉さんは時々意地悪で、柳洞さんに御迷惑をお掛けする事もあるかと思いますが、決して 悪い人ではないんです。
 ですから、先輩と姉さんがお付き合いする事に関しても、あまり目くじらを立てないであげて いただけませんか?」
「衛宮と遠坂との仲を認めろと、君が言うのか、間桐君。君は、その――」

 俺が立ち入るべき問題ではないであろう。だが間桐君は、気弱げな普段の印象からは 意外な気丈さで胸を張って答えた。

「はい。わたしは先輩が好きです。
 でも、姉さんも大好きなんです。大好きな姉さんが、大好きな先輩を好きになってくれた事が 嬉しいんです。
 先輩を譲るつもりはありませんけど、でも姉さんを先輩から引き剥がしたくもありません。
 もう、姉さんは先輩の中に深く根を下ろしてしまってます。無理に引き抜けば、 先輩も傷付いてしまいますから」
「な、なんと……」

 なんと激しく、しかし静かな想いであろうか。
 このような愛の形があるものなのか。
 人は、これほど寛容になれるのか。
 この一見か弱い、自分より年下の少女はしかし、俺が知る誰より成熟しているやもしれぬ。
 悟りとは、あるいはこのような境地を言うのではなかろうか。

「衛宮、貴様――」

 衛宮も呆然としている。恐らくこれは、奴も初めて受けた告白なのだろう。

「もはや俺から何も言う事は無い。だが貴様、この人を不幸にするような事があれば、 俺は男として、許さん」

 間桐君は透明な笑みを浮かべ、お茶を淹れてくれた。

「難しく考える事、ないんです。誰が誰を好きになろうと勝手ですし、想われたからといって それに応える義務なんて、どこにもないんですよ。
 ……ごめんなさい。話がそれちゃいました。柳洞さんのお話を伺うんでしたよね」

 ――困った。
 これほど壮絶な想いを拝聴した後では、おのれの悩みが酷く矮小で恥じ入るばかりである。
 だが、つまらぬ見栄を捨て、おのが未熟を受け入れ率直に晒す事もまた必要であろう。

「つまらぬ些事で恐縮なのだが……。
 実は美綴に誘われ、一緒に街を歩く事になった。それもいきなり明日だ。
 正直、女性と二人で街を歩くなど今まで全く経験がなく、途方にくれているのだ。
 衛宮。間桐君。俺は一体、どうしたら――」
「『つまらぬ些事』なんて言わないで下さい!」

 みなまで言うのを待たず、間桐君に怒鳴りつけられた。

「柳洞さん、ひどいです!
 女の子の方から男の人をデートに誘うのって、ものすごく勇気がいることなんですよ。
 しかも美綴主将はたぶん、そういう経験がほとんど無い人です。
 きっとすごく不安で、でもああいう人だからそれを隠してなにげないふりをしてお誘いしたんです。
 それを『つまらぬ些事』なんて、絶対に言わないで下さい!」

 大人しいはずの彼女は涙さえ浮かべ激昂し、腰を浮かせテーブルを激しく叩いた。
 その衝撃で湯呑みを倒し、お茶をスカートにこぼす。

「あっ」
「大丈夫か、桜?」

 彼女は衛宮にスカートを拭いてもらいながら、今度は頬を染めてぼぅとしている。
 ――なるほど。
 以前は感情を抑圧しているかに見えた間桐君だが、今は驚くほど表情が豊かだ。
 これが恋する乙女というものなのだろうか。

「ごめんなさい。わたし、ちょっとかっとなってしまって」

 間桐君は衛宮を見ながら言った。なにやら含むものがありそうだ。

「こちらこそ失礼した。
 決して美綴の事を軽んじているわけではなく、つまらぬ事で悩んでいるのは俺の方なのだ。
 見ての通り、俺は不調法で世事にうとい。下手をうてば、自分のみならず彼女にも 恥をかかせる事となろう。それが怖い」
「すばらしい配慮です。先輩に爪の垢を煎じて飲ませてあげて下さい」
「……衛宮。貴様なにをした?」
「お、俺は何も……」
「何もしない事が罪になることもあるんですよ?」

 間桐君の笑みが恐ろしい。
 しかし、彼女がいてくれたのは僥倖であった。衛宮では正直、俺と大差無いようだ。

「そもそもこの際、何を着て行けば良いのだろう?」
「何をって、別に普通に、無難な服装でいいんじゃないか?」
「そのご意見はまったくもって正しいと思いますが、先輩にそれを言う資格はありません」

 間桐君は衛宮に対し全く容赦というものが無かった。やはり何かあったようだ。

「そもそも俺にはその普通、という感覚が判らんのだ」
「そうですね。自覚があるのは大変結構だと思います」
「まぁ確かに、作務衣を普段着にしてる奴は普通いないよな」

 そうなのだ。
 この春休み衛宮邸で行われている英語勉強会に参加するにあたり、当初学校の制服で推参すると 『普段着で来い』と笑われた。
 そこで作務衣で訪れると更に笑われた。
 ならばと背広を着れば今度は呆れられた為、現在は居直って作務衣に戻している。
 さすがに自分の感覚が世間の常識から外れているという自覚はある。
 自分の事だけなら別段それで問題は無いのだが、他人にそれを押し付けるわけにもゆくまい。

「背広にネクタイでは不味いだろうか?」
「……微妙ですね。美綴主将がどんな格好をして来るかによります。ここに来る時は主将、 いつもジーンズの上下ですから、それとスーツだとちょっと浮きますよね。
 主将がどんなところへ行きそうか心当たりは……ないですよね?」
「うむ、皆目」
「そうだ、姉さんなら主将と仲がいいですから、何かわかるかも」

 電話に手を伸ばそうとする間桐君を慌てて止める。

「待ってくれ。後生だ。この件は遠坂にだけは秘密にしていただきたい。頼む」
「……柳洞さんって、本当に姉さんが苦手なんですね」

 こればかりはいかんともしがたい。
 奴に知れればいいように弄ばれるであろう。俺だけでなく、美綴にも迷惑が掛かるに違いない。

「そうだ、いい考えが浮かびました。逆転の発想でいきましょう」

 悩む俺をよそに、間桐君は嬉しげに手を打ち合わせた。

「逆転とは?」
「主将の方で服を選んでもらうんですよ。それなら主将のセンスですから、文句の つけようがありません」
「選んでもらうといっても、具体的にどうすれば……」
「『服を買いたいけれど何を選んでいいか判らない。一緒に選んで欲しい』って頼むんです。
 そして買ったその場から着替えてしまえば、主将と合わないという心配はなくなります。
 高い服じゃなくていいんですよ。むしろ少ない予算でどうまとめるかで悩んでもらった方が、 話が弾むと思います。上下で一万――いえ、五千円もあれば充分です」

 なるほど。眼から鱗が落ちる思いだ。自分では一生掛かっても思いつきそうにない。

「ありがとう、間桐君。君のおかげで何とかなりそうな気がしてきた」
「それはいいけど、最初はどうするんだ? 服を選んでる間は?」

 いい疑問だ衛宮。すっかり失念していた。危うくそれを訊きそびれるところだ。
 もはや全幅の信頼を置き、間桐君の言葉を待つ。

「それは――もうなんでもいいと思いますよ。着替えた後持ち歩く事を考えればかさばらない物が 良いでしょうし、その作務衣でもかまわないと思います」
「だけど、それじゃ目立ち過ぎないか?」
「柳洞さんはもとから目立ちますから、あまり問題ではないと思いますよ」
「生徒会長なぞやっている関係で顔を知られているという事だろうか?」
「それもありますが、そうじゃありません。美男子は何を着ていても人目を引くものです」
「あぁ、確かに一成と一緒に歩いてると、制服でも視線が痛い事があるな」
「それはまた違う意味があると思いますが……」

 考え過ぎの買い被りというものだ。

「だが服を選んでいる間、美綴とあまりちぐはぐな格好では、必要以上に目立つのでは?」
「服を選んでいる最中なら、多少とっぴな服装でもいいんですよ。服を買う理由に見えますし」
「なるほど。一々ごもっともだ。間桐君、ご助言、感謝する」

 心底感謝し、彼女に頭を下げる。

「あ、問題は靴ですね。
 たぶん主将の事ですから、あちこち歩き回ると思います。作務衣でも違和感が無い靴を 最初から履いて行くか、靴も一緒に買ってしまった方がいいと思います。
 靴下は白だとかえって目立ち過ぎる事がありますから、暗色系が良いでしょう。 それも合わせて買ってしまうのも手ですが」
「……重ね重ね、恐れ入る」

 まさに微に入り細を穿つというやつであろうか。
 ともあれ、服装と最初の話題は確保出来た。これで安心して眠れるというものだ。
 間桐君に最大限の謝意を述べ、衛宮邸を辞した。



 翌朝。
 万全の体調で目覚めを迎える事が出来た。
 日課の石段登りで一汗かいてから沐浴を済ませ、玄米と一汁一菜の朝食を摂る。
 時間に余裕があるので歩いて新都へ向かう。
 からりと湿度の低い快適な空気に誘われ駆け出したくなるが、汗まみれで待ち合わせに 現れるのも失礼だろうと思い、自重する。
 風が心地好い。昨日あれほどうろたえたのが嘘のように心穏やかだ。
 一時は人生の大事のごとく取り乱したが、全く未熟な事であった。
 そう、大した事ではない。
 衛宮や間桐君に対するのと同じように接すればよいのだ。

 余裕を持って駅前パークへ到着。万事順調。
 ベンチに腰掛け、文庫を開いて時間を潰す。無論内容など頭に入るべくもないが。
 顔を上げているより、美綴の方から声を掛けてもらうまで出来るだけ目立たぬのが肝要であろう。
 そして九時五五分。

「うわ。期待を裏切らない奴ね。本当にその格好で来るとは」

 俺の作務衣姿への美綴の反応は予想通りだった。
 対する彼女は黒革のミニスカートに裾の短いジーンズのジャケット、その下は紺のブラウス。
 服飾センス皆無の俺にはよく判らんが、引き締まった彼女のスタイルを引き立てているのは 間違いない。
 ……なにより、スカートから伸びた長い脚の色白な肌が眩しすぎた。
 視線が吸い付けられそうになるのを慌てて引き剥がし、さりとて眼を見る事もかなわず口許に 目をやると、今度はほんのり明るい色の口紅で彩られた唇がその感触を思い起こさせた。

「あら。どうしたのかしら柳洞くぅん? 顔が赤いわよ?」
「なに、日差しがちと強くてな」
「ふぅん? まぁいいわ。それじゃまず――」
「ま、待て美綴」

 早速移動しようとする美綴を慌てて呼び止める。
 目的も無く下駄を預けられるのも困るが、いきなり彼女のペースに巻き込まれたのでは、昨夜 間桐君に伝授された計画を発動する機を失いかねない。

「ひとつ、頼みがある。
 不釣合いな服装の男を連れ回すのは君も不本意だろう。だが俺はこの通り、洋服といえば制服か 背広しか持たん男だ。
 そこでこの際、服を買おうと思うのだが、君の眼で見繕っては貰えまいか?」
「……なるほど。だから普段の雪駄じゃなく靴なんて履いてきたんだ。予算は?」
「一万――と言いたいところだが、五千円でどうだ?
 それで納まれば、礼として昼食は何でも好きなものを奢ろう」

 俺の申し出に、彼女はにやりと不敵な笑みを浮かべた。

「ほう。そうきたか。
 面白い。それはあたしのセンスと甲斐性への挑戦だね。行くよ柳洞」

 ショッピングモールへ向け勇ましく歩き出す。

「それで、なにか譲れないポリシーとか色の好みとか、ある?」
「いや、特に無い。全面的に美綴に任せるが……そうだ、ひとつだけ。ジーンズは勘弁してくれ。 あれだけはどうも性に合わん」
「うわ、それはまたいきなり選択肢を狭めてくれるね」

 美綴は足を留め、あごに手を当てて考え込んだ。

「いいでしょう。何とかして見せるわ」


 複合店舗の中、最初に美綴が向かったのは、意外にも紳士服店だった。

「安売り系の量販店へ行くかと思ったが」
「本命はそっちだけどね。こういうとこに掘り出し物が無いかと一応――」

 スラックスの列に目を走らせ、ワイシャツの詰まったワゴンを漁る。

「お、これはいけるかも」

 彼女はワインレッドのワイシャツのサイズを確認し、俺の身長を目測して頷いた。

「はい。まずこれ買ってらっしゃい」
「――若干大きいようだが」
「いいのよ。ネクタイ締めるわけじゃないし、上着代わりにするんだから」

 そういうものか。
 何枚も値下げシールが重なった値札を見ると、一四八〇円。確かに、品質の割にすれば 掘り出し物と言えるだろう。

「よし次。本命行くわよ」

 大手チェーンのカジュアル量販店。
 どれももともと安いが、美綴はここでも真っ先に安売り品が詰まったワゴンに向かった。

「おー、あったあった」

 渡されたのは黒のTシャツ。三八〇円。
 美綴は次にボトムの棚を物色し、待つほどもなく黒いコットンパンツを選んだ。一八九六円。

「これ試着して。そばにいるから、着たらちゃんと見せてね」

 試着室に引っ張られ、さっさと押し込まれる。
 カーテン越しに女性が待っていると思うと落ち着かないが、さっさと済ませよう。
 ――サイズは問題無いようだ。
 カーテンを開け美綴に見せると容赦無く作務衣の裾をまくり上げ、少し離れて腕組みすると 俺に四方を向かせて検分した。

「うん、いいんじゃない? さすが脚長い。裾上げもいらないね」
「ではこれで」
「あ、ベルトも選んどいたよ。これでどう?」

 黒革のベルト、一二二九円。

「うむ。では会計を済ませて来る」

 美綴はレジまでついて来て、脇から店員に指図して値札を取らせたりしてくれた。
 早速試着室を借り、着替える。

「ワイシャツの裾、入れるんじゃないわよ」
「そういうものか」

 学校の制服とさして変わらぬというのに、妙に緊張する。
 試着室のカーテンを開けると、早速突っ込まれた。

「ボタンをきっちり上まで留めなさんな」
「し、しかしそれではだらしなくないか?」
「素肌見せてるんじゃないんだからいいのよ」

 みぞおちの辺りまでボタンを外され、胸をはだけられてしまった。
 美綴は一歩下がって上から下まで眺め頷いた。

「よしよし。いやぁ、素材が良いと見栄えがするねぇ」

 ここまで三〇分少々。実に迅速な買い物であった。

「うむ。おかげで助かった。感謝する」
「ちょっとレシート見せて――あー惜しい。さっきのと合わせると、ちょっと予算オーバー しちゃったなぁ」
「――いや、税抜ならきちんと納まっている。約束通り、昼はご馳走しよう」
「律儀だなぁ、柳洞は。ま、お昼までにはまだ間があるし、少し歩こう」

 美綴は俺の腕を取って歩き出した。

「お、おい」
「いいじゃないのこれくらい。ほらほら、邪魔な荷物はコインロッカーに預けて」

 肘の内側に、彼女の指先を感じる。
 ただそれだけの事が、どうしてこうも心を揺さぶるのか。
 膝を伸ばしてきびきびと歩く彼女の脚は、なぜこれほど目を奪うのか。
 自分は女嫌いだとばかり思っていたが、それは単に不慣れなだけで、実は煩悩の塊なのではないか。

「ねえ、本屋寄っていいかな?」
「うむ、異存はない」

 読書傾向は人格の内面を良くあらわす。美綴の一端を知るにもちょうどよかろう。
 彼女は真っ先に文庫の新刊コーナーへ向かい、やけにカラフルな表紙の本を手に取った。 いわゆる少女小説というものらしい。意外――と言ったらやはり怒られるのであろう。

「あーよかった。新刊買い逃すところだったわ」
「君はそういうのが趣味なのか」
「うん、この『ミロクさまがみてる』シリーズって、男性読者も結構多いのよ。 今度貸したげようか? ――なによ、そんなにのけぞらなくてもいいじゃない」
「あぁ、いや、人の趣味を腐すつもりはないが、俺は遠慮しておく」
「面白いのに〜。ま、徐々に布教してあげるわ。柳洞は普段、どんな本読むの? 坂口安吾とか?」
「小説なら藤沢周平や池波正太郎が多いな。あとは――」

 雑誌コーナーへ行き、買おうと思っていた月刊誌を手に取る。

「こういったものだな」
「うわ。囲碁にクロスワードか。雑誌まで買うって結構マニア? どっちにしても、イメージ通り 過ぎるわね」
「面白みがなくて済まんな」
「いやいや、結構結構」

 書店を出てペットショップの熱帯魚をひやかしたのち、少し早いが込み始める前に入った方が よかろうという事で、昼食を摂る事にした。
 美綴が選んだのは大衆イタリアレストラン。いわゆるファミレスよりは落ち着いているが、 ごく庶民的な店だった。

「本当にここでいいのか? 美綴のおかげで懐具合には余裕がある。遠慮はいらんのだが」
「分不相応に高い店入っても落ち着かないだけだよ。柳洞こそ、和食じゃなくていいの?」
「俺は衛宮ほど和食党というわけではない」

 俺はメニューを一瞥しただけで迷わずヒレのステーキに決めた。
 美綴は迷った挙句にビーフシチュー。

「柳洞のところは肉食べてもいいんだね」
「ま、あまり貪るのは褒められたものではないが、俺は食える時に食う事にしている。 身体を作るには、やはり肉食は有効だ」
「いいじゃん別に。無理に理由つけなくても」

 美綴はよくしゃべった。
 学校の事。部活の事。生徒会の事。衛宮の事。遠坂の事。

「柳洞寺の石段って凄いよね。あれ、落ちて怪我する人とかいないの?」
「たまにいない事は無いが、檀家より修行中の者が倒れる事の方が多いな」
「あそこを駆け上ったりするんだ?」
「俺は毎朝日課にしている」
「うひゃあ、ストイック。で、やっぱり跡を継ぐの?」
「ゆくゆくはそうなれるよう努力する。俺としては卒業後すぐ僧籍に入ってもかまわんと 思うのだが、家では大学に行けと言われてな。 だが仏教系の学科はあまり興味が持てんし、どうしたものか思案中だ」
「なんで仏教系は駄目なわけ?」
「駄目というわけではないが、どうも文献学というか、仏教史学的な要素が強いように思われてな。 正直、本質とあまり関係がない気がするのだ」
「へぇ、ちゃんと考えてるんだ」
「いや、だからまだ色々と迷っているのだが。君はどうするんだ?」
「あたしはねぇ。うーん。どうしようかなぁ。体育学科か武道学科へ行って体育教師にでも なるかな。まだよくわからないわ」

 何事も迷いなく突き進むかのごとき印象があったが、やはり彼女も将来的な事に関して 迷いはあるらしい。

 食後にはエスプレッソを。
 良い珈琲の条件として『悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように清く、 恋のように甘く』と言ったのはフランスの政治家だったか。
 深入り豆をフレンチローストと言うくらいだから、彼が飲んだ珈琲が『悪魔のように』黒かった のは判るが、ならば甘かろう筈がない。『恋のように』と言うのは恋愛に対する皮肉だろうか?
 なんとなく衛宮邸で珈琲が出される事はあまりない事を思い返した。
 つまらぬもの思いに耽っていると、美綴の視線に気付く。

「ん。なにか顔についているか?」
「気にしないで。ただ見惚れてただけだから」
「……なんだそれは?」
「いいじゃない、減るもんじゃなし」
「痩せる思いだ」
「けちけちしなさんな。視線に晒されるのは美形に生まれた代償よ」
「からかうな」
「あのさ。この際だからはっきり言っておくわ。
 あたしがあんたの容姿を褒めるのって、掛け値なしの本音よ。
 人の容姿、特に男のなんて人によって好みが大きく違うけど、少なくとも柳洞を美形だって 評して否定する人はあんまりいないと思う。
 あんたはストイックだから、容姿を褒められたりすると外見だけしか見ていないみたいに思って 不愉快なのかもしれない。
 けど、それは違う。外見に見惚れたからって、人間性を無視してるとは限らないわ。
 だから、そんな不機嫌な顔しないで。たまには気が済むまで眺めさせてよ」

 俺が、ストイックだと? とんだ誤解だ。
 裏を返せば、必死に抑えねばならぬほど欲望が渦巻いているという事だ。
 現に美綴に見詰められただけで、これほど心乱されたいる。

「あ、今度は照れた。うふふ、可愛いなぁ」

 まったくもって、修行が足りぬ事よ。



「腹ごなしに行こう」

 そう言って美綴が俺を引っ張り込んだのは、なんとバッティングセンターだった。
 無論、一般的な男女交際のしかたなど知らぬ俺だが、さすがにこれはかなり特殊な部類に 入るのではなかろうか?
 だが一四〇キロの速球に嬉々として挑む彼女は美しかった。
 精悍な目元。
 ブラウスを押し上げる、思いのほか豊かなふくらみ。
 女性にしては広い背中から細く引き締まった腰、滑らかな尻への輪郭。
 鍛えられた筋肉が織り成すメリハリのある脚。
 彫刻のように動かぬならまだしも、しなやかに躍動するさまは妖艶ですらあった。
 そして、それに対し不埒な思いを抱いてしまうおのれが恥ずかしい。
 彼女の美しさに対する冒涜にすら思える。
 なにが女嫌いなものか。
 むしろこの身は、人一倍色欲が強いのではなかろうか。

「観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。
 色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行色。亦復如是――」
「おーい。帰ってこーい。般若心経唱えるのがあんたの集中法なわけ?」

 壁に向かって読経していると、美綴に肩を叩かれた。

「なんだよー、見ててくれなかったの?」
「いや、あまりに鮮やかだったもので呑まれそうになってな」

 彼女の顔が正視出来ず、逃げるように打席に入った。



 結局、打率は明らかに彼女に及ばなかった。惨敗のままバッティングセンターを去り、 『桜を見に行こう』という提案に従い、公園へ向かった。

「ひとつ忠告しておこう。俺以外の男を相手に、あまりああいうところで完膚無きまでに 叩きのめさん方がいいぞ。
 つまらん意地だが、そもそも男というのは馬鹿なのだ。女性に運動能力で劣るのを見せつけられる のは屈辱的だからな」
「あはは。それでいじけちゃうような男には最初から興味ないよ。
 でもあたし、貧弱だからって軽く見たりはしないけど、好みで言えばやっぱりたくましい方が 好きだな。
 特に腕っ節は、あたしより強い方が嬉しい」
「――おい。何を考えている」

 返事は裏拳で返ってきた。
 反射的に荷物を投げ出し間合いを取る。

「空手か。やめろ美綴」
「大丈夫、顔は叩かないから。もし傷がついたら、あたしが責任持ってお嫁に行ってあげるよ」

 鋭い刻み突きを続けて放つ美綴。下がって捌きつつ踏み込んでくる左足を右足で五センチほど 内に払い、バランスを崩し一瞬動きが止まった左肩を右手で掴み引き落としかけたところで アスファルトの路上であった事に気付く。
 顔面へ寸止めしていた左掌底を背中に回し危うく抱きとめた。

「す、すまん!」

 あわてて彼女を放し跳び退る。
 ――柔らかかった。触れてしまった全てが。
 肩も。頬も。背中も。もちろん胸も。
 鍛え抜かれた肢体だが、男とは全く違うしなやかさだった。

「へえ。柳洞、なにかやってるの?」
「葛木先生に、師事していた」
「何を?」
「本人は空手だと言っていたが、流派は教えてくれなかった」

 美綴は座り込んだまま手を伸べた。仕方なくその手を握る。
 立ち上がりざま彼女の身がひるがえり、右手を捻られる。合気か。
 捻られた腕はそのままに、背中で体当たりし跳ね飛ばす。

「今度は謝らんぞ」
「あたたた。いやぁ、強いな柳洞」
「それはいいんだが、美綴よ。もうひとつ忠告だ。
 ……スカートで立ち回りをするものではない」
「あ。ひゃっ!?」

 慌ててきわどいところまでずり上がったスカートの裾を引っ張るのをみると、 素で忘れていたらしい。

「み、見た?」
「見とらん」
「色は?」
「だから見とらんというに!」
「ちえっ」
「はしたないぞ、美綴」
「……こういう女は嫌い? そうよね。柳洞はおしとやかな大和撫子が好きそうだもんね」
「そういう問題ではない。
 そもそも、女性の好みなど今まで考えた事もなかった」
「ふぅん。あたしは柳洞が強くて嬉しいよ」

 彼女は上機嫌で俺の身体を撫で回した。
 腕を。胸を。腹を。肩を。背筋を。美綴のてのひらが這い回る。

「なるほど。いい身体してるわ」

 美綴の手は、首筋を撫でる指先すらしなやかだった。

「……すまんが、手を離してくれ」
「あ……ごめん。無遠慮だったね」

 彼女は驚いたように手を引っ込め、うつむいた。

「ごめん。ごめんね。逆セクハラだったね」
「謝ることはない。ただ、いかんせん免疫がなくてな」

 俺は投げ出した荷物の埃をはらい、桜並木に向かって歩き出した。
 なんとなく気まずい空気のまま、少し離れて並んで歩く。
 桜の花弁が、二人の間を舞う。

「ねえ。あたしに触られるの……嫌?」

 美綴はどことなく縮こまったまま、上目遣いで言った。俺はそれほど不機嫌そうに 見えるのだろうか。
 俺はひとつ深呼吸し、覚悟を決めて美綴に向き直った。

「そうではない。むしろ逆だ。
 だからこそ俺は、君を穢してしまいそうで怖いのだ。
 君は美しい。君の姿を見、身体に触れるたび、心が乱れる。
 そして疑問がふくらむ。君に対するこの気持ちは、よこしまな肉欲に過ぎぬのではないかと。
 美綴という人を見る前に、その姿形だけに魅入られているのではないか。だとしたらそれは、 君に対する冒涜であろう。
 俺は、未熟だ。自信が無い。欲望に負けずまっすぐに君と向き合う自信が無い。
 済まぬ。俺は君に劣情を抱いているのだ。未熟な俺を許してくれ。今しばらく、 俺の中の獣を刺激しないでくれ」

 彼女は黙って、俺の醜い告白を聞いていた。
 黙ってうつむいていた。
 緊張のあまり視野狭窄を起こした俺は、ますます彼女との距離を遠く感じた。
 二人の間を、桜の花弁を伴った風が吹き抜ける。

「馬鹿だね、柳洞」

 美綴はうつむいたままぽつりとつぶやき、俺の手を握った。
 そしてゆっくりベンチへいざなわれ、並んで座った。

「あたしも、どきどきしてるよ。こうして手を握っただけで、すごくどきどきしてる。 これって、いけない事なのかな?」

 彼女は互いの肩と腰が触れ合うまで、ぴったりと寄り添ってきた。
 触覚、圧覚など、突き詰めれば神経を伝わる電気信号に過ぎぬ。そう思っても、 めまいがする。

「こうして身体が触れ合うともっとどきどきする。これって、いけないことなのかな?」

 さらに彼女は俺の腕を取り、自分から肩を抱かせた。俺は、抗う事が出来なかった。
 柔らかく弾力に富んだ美綴の感触に陶然となる。

「寄り添って、肩を抱かれて、すごくどきどきして気持ちいいよ。これ、いけないことなの?
 ……そうじゃないと思う。だって、きっと他の男にされたら逆にすごく嫌。そんなの考えただけで 気持ち悪い。
 顔とか、身体とかは、その人の全部じゃないけど、でも切り離す事はできないんだよ。
 だからあたしは、触れたからこそ自分の気持ちがわかった気がする。……柳洞のこと、好きだって。
 柳洞だからだよ。柳洞だから、触りたいし触られたい。これって、柳洞が好きって証拠だと、 あたしは思う」

 なんと、過ぎた言葉か。
 ますます恥じ入るばかりであるが、だからこそ、俺は彼女に対し偽る事が出来なかった。

「過分な言葉、痛み入る。
 だがやはり俺は、自分に自信が持てぬ。
 この気持ちが真に美綴を思うものか、単に女性に不慣れゆえの気の迷いか、自信が持てぬ。
 済まん。しかし君を大切にしたいがゆえ、今はまだ、君が好きだとは言い切れぬ」

 美綴は俺の手を頬に当て、眼を伏せた。

「それだけ言ってくれれば充分だって気がするけど。ホントに固いんだから。いいよ。 気長に健全なお付き合いをしていきましょう」

 そう言って勢いよく立ち上がった彼女は、続いて立とうとした俺の肩に手を掛け押し止めた。
 ゆっくり屈み込み、俺の耳元でささやく。
 今度は、気の迷いじゃないよ、と。
 しっとりとした彼女の唇を、頬に感じる。
 前回とは反対の頬だった。

 めまいがする。
 気がつけば、美綴と手をつないで歩いていた。
 控えめに、指先だけ。

 彼女と並び歩きながら、願う。
 この気持ちを、いつまでも持ち続けたいと。
 このまま、いつまでも彼女と共に歩みたいと。

 我が内に棲まう獣よ。
 俺は必ず、貴様を飼い慣らしてみせる。
 そしてそのときこそ真実、彼女を愛していると確信するだろう。



end

The original work 『Fate/stay night』  ©TYPE-MOON
Secondary author ばんざい 2004.3.30

補足
 拙作「お茶に誘われた」の後日談。
 美綴と柳洞の話のはずが、かなり桜に出番喰われてますね。

 今回少々文章スタイルを変えております(ひたすら会話で進める)。
 それに伴い台詞間の空白改行も廃止。



御意見・御感想は 掲示板 もしくはメールにて お寄せいただければ幸いです。

 御面倒な方はweb拍手でどうぞ。一行コメントも送れます。


創作保管庫へ

表紙へ