NSR最速チューニングエンジン編
 人気マシンであるNSR250R、当然、有力チューナーや個人により既に 多くの情報がもたらされております。
 しかし定説になっている事でも実情にそぐわない事も見受けられます。
 経費(時間や労力含む)対効果を意識しましょう。
 なおここでの話は公道からジムカーナ、ミニサーキットを舞台としたものです。
 言うまでもありませんが、モディファイは自己責任で。

最初に結論
 基本的にノーマル。
 とにかく新車時のコンディションを維持。
 そして冷やす。
 それでも何かやりたければプラグコードやリミッタ解除など電気系。

まずオーバーホール。話はそれから
『NSRのクランクは10万kmもつ。OHは腰上だけで充分』と言われます。
 迷信です。
 クランクがヘタって1次圧縮が落ちると、特に中低速のトルクが痩せ、レスポンスも悪化します。
 社外チャンバその他のパワーアップパーツを買う資金があるなら、まずクランク交換を含めOHしましょう。
 それだけで驚くほどパワーアップが体感出来るはずです。
 その際、どうしても自分でやりたいと言う人は止めませんが、レース系ショップに依頼する事をお薦めします。
 ただし預ける前に納期を確認しましょう。
 レースウィークが重なるとえらく待たされる事があります。
 同時にクラッチOHもしてしまえば工賃お得。
 一般のバイク屋さんだと倍くらいの工賃を取られるので要注意。
 ちなみに私は以前DFRに依頼。
 私が褒めてからジム屋の依頼が増えているので、ジムカーナに使用する車両はその旨を伝えると 話が早いでしょう(別に特別なチューンをするわけではありませんが)。
 何でも相談に乗ってくれる良いショップです。

とにかく冷やす
 NSRのラジエタには冷却ファンがありません。
 サーキットの様に超高速で走行風を当て続けられるならいざしらず、低速高負荷走行ではあっという間に 水温が100℃を超えてしまいます。
 80℃を超えると明確にパワーダウンしますので、電動ファンを装着し水温を下げてやるだけで実質的に パワーアップ。

左側 右側はオイルタンクを外さないと付きませんね  オークションなどで入手した他車種のファンを流用するのが最近のトレンドですが、 私はパソコン用のファンを流用しています。
 大きい方が12cm角(0.6A)。
 タイラップで直接ラジエタに括り付け。
 電源はヘッドライトのポジションランプ用配線より。
 自走する人でも、公道走行時はロービームを点灯するので問題無いでしょう。
 マイナス側はフレームへボディアース。
 配線が汚いとか言うな(^_^;

気休めだけどね  エンジンと関係ありませんが、PC製品の冷却パーツ流用としてリヤブレーキキャリパにヒートシンク もジム屋のお約束。
 これはシリコン粘着シートで貼り付けただけ。
 もっと大きなヒートシンクでないと明確な効果はありませんが、これ以上大きいとキャリパ本体に タップをたててボルト止めしなければなりませんので……。


吸排気系はノーマルに限る
『2ストはチャンバ交換で飛躍的にパワーが上がる』と信じられています。
 間違ってはいませんが、全ての条件下で正しいとは言いかねます。
 私はJhaチャンバを1年以上使った経験がありますが、少なくともジムカーナにおいては 巷間言われるほどのパワー差は生じませんでした。
 低速(低回転)トルクが痩せるという事もありませんが(むしろ少し太るかも)、 レスポンスがややドンつき(一瞬遅れて強めにトルクが生じる)傾向になります。

 社外チャンバ等によるパワーアップが期待出来るのは、長時間全開に近いスロットル開度を キープするシチュエーションのみです。
 同じスロットル全開で12000rpmまで回しても、低いギヤで一瞬に吹け上がるのと、 全開固定のまま加速し続けるのとでは、発生出力に大きな違いが生まれます。
 2ストロークの場合、排気温度による排気脈動変化の影響が大きく、4ストロークにおいて バルブタイミングを変更したのに近い作用がある為です。
 出力追求型のチャンバは特性が明確に高回転寄りに変化しますが、シャシダイでパワーチェック して大幅にパワーアップしたからといって、実走行で同じだけパワーが出るかどうかは 別問題だと思った方が良いでしょう。

 逆に(回転数に関わらず)低・中開度領域でのスロットルレスポンスのリニアリティは 明らかにノーマルチャンバに分があります。
 特にギヤ比をローギヤード化してもなお低回転を多用せざるを得ないジムカーナの場合、 パワーバンドが高回転寄りになってしまう社外チャンバはメリットが活かせません。
 直線が短かくアベレージスピードも低いミニサーキットでも同様です。

 キャブセッティングに関しても、社外チャンバに換装してもエアクリーナボックスがノーマルであれば 吸気量の上限があるので、全開時間が長いサーキット以外では、ノーマルで問題ないはずです。
 ボックス内のフィルタの有無もほとんど影響しないそうなので、入れておいた方が良いでしょう。
 ノーマルセッティングが薄く感じる(焼け気味)としたら、エンジン本体がヘタって圧縮比が低下 している事を疑った方が良いようです。
 1万km以上OHしていないエンジンで、キャブセッティング云々といっても全く 無意味であると断言致します。

インテークレクチファイヤ(HRC)
 キャブからリードバルブへの吸気を整流する部品。
 インシュレータを外して純正品と入れ替えるのみ。
 効果は中速トルク改善。劇的に変化するわけではありませんが、\500×2なので、使って損は無いかも。

パワー、レスポンスが落ちたらまずプラグを疑え
 ちなみにジムカーナではプラグは9番(NGK)。回転の練習ばかりやるような場合はフロントバンク のみ8番もありかと思います。
 VX(プラチナ電極)等を使用しても体感するほどの違いは無いと思いますので、それよりノーマルプラグを 頻繁に交換した方が効果的です。
 私の場合、大会ごとに会場で一度暖機運転したのち新品に交換しています。

バッテリ、イグニッションコイルも消耗品
 特にイグニッションコイルは突然死ぬ事がある為、新品を1セット常に携行しましょう。
 必要になってから注文しても欠品になっている事があります。
 ノロジー・ホットワイヤ等の低抵抗プラグコードはトルクアップに効果有りですが、 コイルの寿命が縮まる様です。
 私の場合、おおむね1年が寿命のようです。

混合給油か分離給油か
 オイルポンプを外したところで、劇的に速くなるわけではありません。
 オイルポンプの故障を機に外してしまう人が多いようです。
 自走の人は特に問題が無ければオイルポンプを活かして分離給油のままの方が面倒が無くて良いでしょう。
 その場合、オイルは純正のGR2で良いと思います。
 補給忘れに要注意。
 オイルポンプのオイルシールが抜けてミッションケースへ流れ込むトラブル等が多いようですので、 ミッションオイル量をマメにチェックして下さい。
 オイルポンプを外して混合仕様にしても、自走は不可能ではありません。
 あらかじめ小瓶にオイルを分けて携行し、給油量にあわせ混合比を計算しタンクに直接投入すれば無問題。
 混合仕様にした場合、混合比は使用するオイル銘柄にもよります。
 ロードレースなら30:1〜35:1程度でしょうが、ジムカーナに限って言えばスロットル開閉の多いモトクロス の方が使用条件が近いと思われます。
 私はジムカーナの場合通常40:1〜45:1、回転などの極低速系だけ集中して練習する場合に限り50:1です。
(こんな混合比で走っていると言ったら、レース屋さんには絶対怒られます)
 真似して焼きついたとか言われてもクレームは一切受け付けませんので悪しからず。
 使用オイルはWako's 2CRV もしくはMOTUL 800V。
 ちなみにミキシングタンクはデ○トナのバイク用より、DIYショップで芝刈り機用として売られている物の方が はるかに安くて造りもしっかりしています。il||li _| ̄|● il||li

ガソリンはハイオクを
 ハイオクは洗浄剤が添加されているうえ不純物も少ないので、トラブル(ジェット類の詰り等)を 未然に防ぐ意味でもよろしいでしょう。
 なお、リミッタ解除した場合は進角(点火時期が早く)する為、ハイオク使用が前提です。

リミッタ解除
 ハーネス加工、もしくは市販のリミッターカッタを装着する事によりPGMのフルパワーマップが 使用されます。
 が、電気系トラブルの元にもなりますので、相応の覚悟で行って下さい。



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