安バイクの勧め (但し掛けるべきところには惜しまぬよう)

 先に免許取立て、あるいは高価なマシンを買った場合、安い練習用のバイクを 持つ事をお勧めしました。

「安さ」を重視すると低年式の中古がターゲットになるでしょう。
 そこで、安物買いの銭失いにならぬ為の注意点。

・納車整備をしっかりさせましょう
 中古屋で買う場合、値引き代わりに納車整備の充実を要求しましょう。
 まず、ゴム系のパーツや油脂(オイル)は可能な限り交換。
 具体的にはフロントフォーク、ブレーキキャリパ&マスタシリンダ等のシール類(当然オイルも)。
 エンジンオイル(2ストはミッションオイルも)交換。
 ベアリング類のグリスアップ。
 タイヤは溝があろうが無かろうが、半年以上たっていたら交換。
 その際、出来ればある程度スポーツ性の高いタイヤの方がコントロール性も高く無難です。
 そしてキャブレターのオーバーホール。
 バッテリーやプラグも交換。
 これらは走行距離に関わらず必須です。
 むしろ低年式で走行距離が短い場合、長期に渡る放置プレイでかえってコンディションが悪く なっている場合が往々にしてあります。
 距離を走っている場合、ドライブチェーンも交換。スプロケットの磨耗もチェック。
 2ストの場合、イグニッションコイルも交換しておいた方が無難です。
 その際、一応問題なくエンジン始動出来るなら、古いコイルを緊急時の予備として貰っておきましょう。
 これらの整備は後から頼むと高い工賃が発生するので、出来るだけ納車時にサービスさせましょう。
 嫌がるようなバイク屋はもちろんパス。面倒見の良いバイク屋を探す試金石にもなるでしょう(多分)。

 これらの整備は、頑張れば自分でも出来るレベルです。
 が、そもそもこんな説教臭いテキストをここまで辛抱強く読んでいる時点で、アナタは自信の無い 初心者であるとお見受け致します。
 個人売買等は、相手がもともと知り合いで後々まで面倒を見てくれる場合以外、避けた方が無難。


 では次に、練習に適したバイクの条件を挙げてみましょう。
 別に「こうでなきゃいかん」というわけではありませんので、まぁ参考までに。

(1)壊れ難く、仮に壊れても安く容易に直せる事
 転んだりしてバイク壊れると、もう乗る事自体イヤになっちゃうんですよね (転びもしないのに勝手に壊れるのは論外)。
 オフ車系は転ぶ事を前提に作られている為、全般に丈夫です。
 エンジン幅が広い4気筒などの場合、エンジンガードが装着出来るものがベター。
 あるいはカウル付の場合、カウル自体をエンジンガードと割り切ってしまうのも一つの選択です (お出かけ用に綺麗なカウルを別に用意しておいて使い分けるとかね)。

(2)車重が重過ぎない事
 重さにビビってバンクさせられないようでは練習になりません。
 それに重いバイクだと転がした際のダメージも(人車共に)大きくなりがちですし。

(3)低回転から高回転まで、トルク変動が少なくスムーズに回るエンジン
 低速でギクシャクするマシンは、街中でよく要求され、かつ難易度の高いUターンがやり辛く、 苦手意識を助長しがちです。
 この点、一般的に低速トルクがあって扱いやすいと言われるビッグボア単気筒や2気筒は、 極低回転域が非常に苦手な為、かなり不向きです(250cc程度なら単気筒でも問題なし)。
 オフ車系は単気筒でも低速での扱いやすさを重視されていますが、それでも600cc等の 大排気量車だとかなり難しいでしょう。

(4)ハンドリングが素直、かつライディングポジションが楽な事
 アメリカンやスクータ等は独特な乗り方が要求されます。
 それが悪いとは言いませんが、どんなバイクにも応用出来る技術を身につける上では特殊な乗り方を 要求されない方がよろしいでしょう。
 ポジションに関しては、体格や慣れにもよります。
 レーサーレプリカの鬼前傾は上半身に力が入りやすく変な癖がつきやすい恐れもありますが、 私は自転車のレースをやっていた事もあり、全く苦になりませんでした。

 で、これらを加味した具体的お薦め例。

 オンロードバイクならVT系、JADE、バンディット等4気筒ネイキッド系。
 ホーネット(250)はあの太過ぎるタイヤがハンドリング面で不評です。タイヤ代も掛かるし。
 パワーが無くても良いならボルティもイイ感じです。
 レプリカ系も4スト250は車格がコンパクトな事もあり、結構良いと思います。
 意外なところではTWが見た目に反しかなり素直なハンドリングなのでとてもお薦め (但し変な改造がされていない事)。
 パワーはありませんが、バランサの出来が良いのか高回転域の振動も少なく、 100km/h巡航も苦になりません。
 オフ車も良いですが、足付きに不安があればセローとかディグリーとか。

 上記車種なら、諸経費込み15〜25万円で結構あると思います。
 バリオスやD−トラッカーとかもよさげですが、中古市場ちと高目かも。
 つまり、4スト250クラスですね。
 先にあげた条件に車重の軽さがありますが、この位の車格と車重があるとビッグバイクにも 応用しやすいですし、自走で長距離走るのも苦にならないと思います。
 練習用ではなくメインバイクとしてもとても楽しいです。
 別に大排気量車でも構わないのですが、タイヤ代やオイル代、壊した場合のリペアコスト等、 ランニングコストが結構掛かりますので。

 実際私も、ZRXを積極的に練習に使う気にはなれません。
 1セットのタイヤ代が、NSRのほぼ2倍……(-_-;

 125クラスもオンロードバイクは4ストの方がお薦め。
 2スト125のオン車は低速トルクが弱い割にギヤ比がロング(ハイギヤード)で、ノーマルだとちと難しいかも。
 もちろんスプロケを換えてショート(ローギヤード)にすれば解消しますが、当然巡航性は損なわれます。
 その辺を無視するなら、Nチビ(NSR50&80)やKSRも良いと思います。


 さて。
 なぜしきりに(小排気量車以外)4ストを勧めるのかと疑問にお思いの方もいらっしゃるでしょう。
 お前が乗っている2ストのNSRは、ジムカーナでも定番ではないかと。
 確かに、NSRに限らず2ストは軽量コンパクトハイパワー。
 10年以上昔の旧車にもかかわらず、戦闘力は一線級。
 しかも非常に乗りやすい。
 そして転んでも意外と壊れない丈夫さも兼ね備えています。
 私を含め多くのユーザーが魅了される素晴らしいマシンです。
 そう、決して初心者では乗りこなせないとか、練習に不向きというわけではありません。
 もちろん、乗るなとは申しません。
 お好きでしたら、手に入る今のうちがチャンスでしょう。ためらう必要はありません。

 ではなぜ、積極的に薦めないのか?
 問題は既に古過ぎる事や、耐久性、トラブルが出た場合の対処等にあります。
 その辺りの詳しい話は次の章に送りましょう。



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