2004年度JAGE CUP ジムカーナRd.3 参戦記2004.9/5

またしても半年以上のブランクを空けての大会参戦。
 前回(2003年度JAGE杯第4戦)の前も半年ほどまともに練習していなかった為、実質的に1年ほどもジムカーナから離れていた事になります。
 まがりなりにも練習再開したのが今年7月。
 その時も含めて大会前のジムカーナの練習会参加はたったの2回。
 それ以外練習といえるのはミニサーキット走行( すいらん2回、 トミン1回)のみ。
 しかもその半分はこれまでもろくに乗っていなかったZRXによるもので、ジム本番車であるNSRを新品タイヤに履き替えてからは皮剥き程度しか走っていません。
 まともに考えれば、これで大会に出るのは無謀です。
 しかし、そのわずかな練習機会で思った以上に乗れており、自分でも不思議なくらい根拠の無い自信に満ち溢れておりました。
 以前と同レベルはおろか、かなり本気でB級昇格を意識するほどに。
 はたしてこれはブランクが空き過ぎた事による感覚のズレが生む勘違いなのか?
 最初にジムカーナの大会(2000年、有明でのジムカーナJAPAN)に出場してから4年。
 久々に大会前日なかなか寝付けないほどの緊張と興奮を覚えました。

そして朝、出遅れる駄目人間。
 結局無意味にwebを徘徊したりして、寝ついたのが夜半過ぎ。
 その為、目覚ましは5:30にセット。
 もたもた起き出してからコンタクトレンズを入れたり朝食を摂ったり(余裕かまし過ぎ)し、ようやく出発したのが6:00近く。
 自宅から会場までは順調に道が流れていておおむね1時間半かかります。
 ちなみに会場ゲートオープンは7:00、7:30より車検開始。
 それでも全く焦らなくなった厚かましさが中堅クラスのいやらしさを物語ります(真似しないように)。
 会場までの道程はしとしと地味に雨が降り続いています。
「降るなら降るで安定して降り続けてくれ。みんなイコールコンディションの中で今の自分の実力が知りたい。路面変化の影響でトップタイムが伸び悩んで昇格したりしてもあんまり嬉しくないしなぁ」等と考えつつやや遅めの会場入り。
 いつも通りマスダさん(えのあきら氏の漫画「JyaJya」に実名で登場したあのお方)の誘導でトランポを停めると、半年以上来てなかった場所とは思えないほど違和感を感じません。
 嗚呼、帰ってきたぜ、この世界へ……・゚・(ノД`)・゚・

ホントに行ける……かも?
 天候は微妙に霧雨が降ったり止んだり。
 傘を差すほどではないものの、路面はウェットのまま。
 車検を受け、受付を済ませコース図を受け取ります。
 ……あれ?
 近年の桶川でよく見られる、NSR殺しのコース――小さなターンや回転等の極低速セクションを直線でつなぐ設定。コーナリングスピードが活かせない上、低回転域からの全開加速を要求される為、ビッグバイクの低速トルクがモノを言う――じゃありませんよ?
 これでも路面が完全ドライならパワーのある4スト600勢が有利と思われますが、ウェットなら慣性質量の小さいNSR優位!
 個人的にも苦手の回転が3本、小道路が1ヶ所入っているとはいえ、極端に低速でこね回す曲芸セクションがほとんど無いのは非常にありがたい。
 ――ますます欲が出て、いやがうえにも緊張が高まります。

路面はスリッパリー。
 桶川の路面はきめが細かい為、水や砂が乗ると極端に限界が低くなり、かつ表面で引っ掛からず滑った際のスライドスピードも速くなります。
 そして慣熟歩行、ライダースミーティングを終えても霧雨は止みません。
「今日は終日ウェットか。それならそれで望むところ」
 どの程度滑るのか、C2クラスの走りを観察。
 ――皆、異様に慎重。
 いくらなんでもこれでは臆病過ぎるだろうというくらい遅く、バンク角も浅い。
 こんなコンディションの際は、むしろ1本目からアグレッシヴに攻めるべき。
 2本目にタイムを出そうなんてヌルい事を言っていると、さらに雨が強くなりコースコンディションが悪化する可能性が高いからです。
 結局、C2トップタイムが1分50秒台。
 総合トップタイムは40秒付近かと思いつつトランポに戻って自分の出走準備。
 C1クラスウォームアップ開始のアナウンスと同時に早速ウォームアップコースに入る。
 滑る。やはり滑る。
 走り込まれてライン上が掃け、本コースよりグリップが良くなっているはずのウォームアップコースでもかなり滑る。
 しかし全く怖くない。
 久々に履いた新品タイヤは絶大な信頼感をもたらし、パワースライドしながらもしっかり前に進む。
 ある程度スピードが乗った状態からブレーキングを伴い飛び込むコーナーの進入でリヤがスライドするが、全く転びそうな気がしない。
 リーンインで進入し、クリッピング手前からアウト乗りに変化して遠心力を抜重。スロットルの開け始めを少し我慢してコンパクトに向きを変え、立ち上がりで鉛直方向にリヤ荷重。
 イメージ通り。乗れている。
 スタート直前の8の字でも、ウェット路面とは思えないほど旋回荷重が掛かる。
 なにしろ何度も熱が入ってボロボロになったあげく長期間放置して硬化したタイヤで練習した後なので、ウェットでもしっかり路面を捉えてくれるしなやかな新品タイヤの感触が実に頼もしい。
 行ける。行ける。
 自分に言い聞かせスターティンググリッドへ。

第1ヒート。行け行けGOGO!
 スタート直後にスラロームに入る為、ヘタにフロントを浮かせたりカブらせたりしないよう長めの半クラで発進。
 苦手の小道路セクション。左回りする選手が多かったが、ここは切返した方が遅くなると判断し右回りと決めて迷わなかった。
 しかし足を出すタイミングが早過ぎ、だらりとメリハリ無くバンク。旋回半径がふくらみ、立ち上がりフロントタイヤがパイロンをかすめる。踏んだか?
 完全に失速したが、転ばなかっただけ僥倖。
 気を取り直し、島周りのコーススラロームセクションに向かう。
 加速区間で気合を入れて全開。しかし突っ込み過ぎラインを外す。
 あるいはスピードを落とし過ぎて失速し、タイヤのグリップを余らせる。
 リズムはバラバラ。しかしここで萎えてはいけない。攻めろ、攻めろ。
 オフセットパイロンを抜け、右に旋回しながら加速する外周へ。
 ここはもともと滑る場所なので、早めに、かつクラッチを使いシフトアップのショックを逃がしながら2速へ入れ、マシンを起こしてから全開。
 早めに右にバンクさせ向きを変えてから、ブレーキングしながらマシンを起こす。
 左回転に備えシフトダウン――その瞬間、大きく左へリヤがスライド! シフトロック!?
 そのままスリップダウンするかという滑り方だったが、ほとんど直立に近くマシンを起こした後だったのでどうにかバランスをとり続け、やむを得ずフロントブレーキを緩めリヤに荷重を戻しグリップを回復。
 しかしその反動でハイサイド。失速し今度は左に倒れ込む。
 足を着き一度完全に停止した状態でどうにか堪え、転倒は免れた。再スタート。
 インフィールドのオフセットセクションは予想通りかなりグリップする。攻めろ。もっと攻めろ。
 しかし今度はエンジンがミスファイヤ。カブったかとパイロン間でクラッチを切りブリッピングするがついて来ない。ガス欠症状? ガソリンは充分余裕を持って入れたはず――燃料コックか!
 右大回転から左大回転への短い直線で燃料コックを直す――やっぱりOFFになってた! ハイサイドしてドタバタしたショックでコックが動いてしまったらしい。
 もはや失うものは何も無い。2ヒート目の為にも最後まで手を抜かず攻め続けるのみ。
 我ながら遅いとイライラしながらゴール手前2つの回転をクリアし、長い長い1ヒートが終了。
 タイムは? キルスイッチでエンジンを止めアナウンスを待つ。
『1分52秒98』

あれ? 思ったほど遅くない?
 あれだけメチャクチャだったのに、C2上位とタイムは変わらない。
 首を捻りつつマシンを置いてからコースサイドに戻り、B級以降の走りを観戦。
 ――B級も思ったほどタイムが伸びない。
 ただ一人、小道路セクションでブレーキターンを見事に決めた小野寺選手のみ42秒台。
 ああ、やっぱりA級トップは41秒台には乗せてくるだろう。
 ――と思いきや、A級も思ったほどタイムが伸びない。
 あれ? あれれ? と思っているうちに全員走行終了。A級トップは43秒台。
 あの酷い走りで1ヒート目、パイロンタッチと足つきのペナルティを除いた生タイムではトップ比110%程度って事?
 ハイサイドして完全停止や燃料コックの件以外にも、タイムを詰める要素はいくらでもある。
 B級昇格条件は総合トップタイムの105%未満。

2本目で挽回だ! 狙うぜB級昇格!
 昼休みのコース開放時間。
 普段の私は2、3回歩いたらあとは脳内でイメージトレーニングするだけですが、今回は徹底的に歩き回り走り回り、ラインを身体に覚え込ませました。
 自分でも判るほど表情は険しくなり、はたから見れば何を入れ込んでやがると笑えるほどだったでしょうが、なりふりかまってはいられません。
 昼休みが終了し、コース閉鎖され第2ヒートが開始してからも人と喋る余裕が全く無く、もともと愛想が良くない私がさらに無愛想に。
 今大会はありがたい事にトラブル無く進行し、比較的早くウォームアップの順番が回って来ました。
 ――路面が、路面が乾いている。
 一部の 水溜り (ウェットパッチ)を除き、ほぼ完全ドライ。
 これは転倒が続出するな。
 こういう状態だとコース上でグリップする場所、しない場所の差が激しくなる為、攻めなければタイムが出ず、攻めれば転倒のリスクが高くなります。
 これはむしろチャンス。
 強気に捉えウォームアップ開始。
 案の定、走り込まれたウォームアップコースは完全ドライで路面温度も高く、自然とバンク角は深く、フォームもリーンインとなります。
 ライン取りまでワイドラインでコーナリングスピードを上げる方向になりそうなのを意識して修正。
 本コースはもっと滑ると自分に言い聞かせ、タイヤを暖める事に専念します。
 恐らくインフィールドはかなりグリップし、外周は相変らず滑るはず。
 タイヤが溶け始めるまで温まったころ8の字セクションへ。
 回転するとブーツの先が接地するまでバンク。
 よほど攻めなければタイヤのグリップを余らせてしまうと気合を入れなおし、スターティンググリッドへ。

第2ヒート。もはや貧弱なボウヤとは呼ばせない!
 慎重にスタート。最初のスラロームは往路より復路で差がつくと見た。
 1回目失敗した小道路転回。今度は少し余裕を見て奥まで入ってから旋回。
 ヘタな事には変わりないが、もともと自分はこんなもの。コーススラロームで稼げと気合を入れる。
 かなり思い切ってコーナーへの進入速度を上げて行くが、思った以上にグリップ。
 まだまだタイヤを余らせている。攻めろ。もっと攻めろ。
 1本目のデタラメさ具合からすればはるかにマシだが、今度は消極的にまとまり過ぎた印象のまま前半を終え、外周へ。
 ここは慎重に抑えて行く。
 1ヒート目で失敗したブレーキングもかなり余裕を持って行い、インフィールドへ。
 ここは攻めて稼ぐところだ。開けろ。開けろ。
 大胆に攻めているつもりでもまだ足りない。
 歯痒さを感じながらゴール前へ。
 左回転の途中、一瞬失速しバランスを失いかけるが、上半身を振り子に無理矢理こらえる。
 最後の右回転は遅いながらも無難にまとめゴール。
 ――2秒遅い。B級昇格には2秒届かない。駄目じゃん、やっぱりil||li _| ̄|● il||li
 ゴールした瞬間、そう思った。
 そして、読み上げられたタイムは44秒791

勝負は最後まで判らない。波乱の展開。
 B級に入ると43秒、42秒台が連発。
 予想通り。今回も駄目だったなと思ったその時、路面に黒い染みが。
「……雨?」
 乾いていた路面が見る間に湿ってゆきます。
「雨!」
「キタ━━━━━━━━ !!」
「雨キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━ !!」
「ヤタ━━━━━━ !!」
「モト降レ━━━━━━ !!」
 一挙に異様に盛り上がるギャラリー(の一部)。
 それを見て苦笑する偽善者良識派。
「駄目だコイツら」
「最低だ」
 ……正直に告白しましょう。
 会場入りする時点では、否、実際雨が再び降り始めるまではイコールコンディションの戦いを望んでいた私も、実際昇格の可能性が現実のものとなると、本気で雨乞いしておりました……。
 だってB級上がりたいんだよ!
 どんな形であれ、上がってしまえばそのクラスなりのレベルになるものです。
 出走直前のB級選手は天を仰ぎ、それを見て指差して笑い『なんかやれー!』と囃したてる 我々(バカども)
 その期待に応え、ヤケクソになりブレーキターンやドリフトを試み転倒する選手続出。

しかし、雨は止んだ。
 そして路面は再び急速に乾いてゆきます。
 A級選手の走行に入ってから、非常に微妙なコンディションに。
 出走が後の選手、つまり1ヒート目好タイムを出した選手ほど明確に有利な展開に。
 それでもなお、私のB級昇格の可能性は残ったまま最後の2人へ。
 ラス前、田中選手。
 私と同じ大会でジムカーナデビューしながら、あっという間に昇格しついにA級トップレベルに達した男。
 NSRからDR−Zに乗り換えた元峠小僧が、今日はドリフトもせず糞真面目に地味にタイムを出しに来やがりました。
『39秒81』
 丁度私の昇格ボーダーラインぎりぎり。ギリギリで可能性が残りました。
 そしてラストは永井選手。
 実は私と同じクラブの所属です。
 もちろん、永井選手にトップタイムを更新して優勝して欲しい。
 しかしそれは同時に私のB級昇格を阻まれる事を意味します。
 複雑な気持ちでその走りを見守りながら、しかし悟りました。
 結局、妥当な結果になるな、と。
 危なげないその走りは、トップタイムを大幅更新すると確信させる頼もしいものでした。
『38秒663』
 天候の悪戯で抱いた我々の淡い希望を粉砕するに充分な、見事な走りでした。

本大会におけるばんざいの戦績
 C1クラス2位入賞。
 トップタイム比106.21%

 B級への道はそれほど甘くありません。
 終わってみれば惜しくもなんとも無い……。
 ちなみに今回、全クラス昇格者は一人もいませんでした。キビシイなぁ。



MOTOR LIFE 目次へ

表紙へ