2004年度DUNLOP 月刊オートバイCUP ジムカーナRd.5 参戦記2004.10.17
ジムカーナの聖地
埼玉自動車学校。通称『熊谷』は、ジムカーナ界、特に関東において特殊なステータスを持ちます。
他のコースと比較し明らかにトップタイム比が開く傾向の為、熊谷での実績こそ真の実力という風潮があり、事実、長くC2クラスで苦しんだ当時の私も『C1昇格は絶対に熊谷で決めたい』と、桶川での昇級対象大会への参加を控えたほどです。
無論、会場そのものの特性のみならず、そこで行われるダンロップ杯こそが関東ジムカーナ界で最もシビアなシリーズ戦であるがゆえの厳しさ。
本大会では特に、その傾向が如実に表れました。
千載一遇のチャンス?
かなりロングで、コーススラローム中心の設定。
極端な全開加速区間が短く、私のNSR(ノーマルミッション、スプロケ13×46)では恐らく一度も2速に入らない。
しかもアダチセクション(JAGE代表安達氏が設定する、いかにもジムカーナらしいテクニカルセクション)も極端な曲芸は要求されない。
極低速セクションが苦手でコーススラで稼ぐ私が期待していた、まさに理想通りのコースです。
「これでB級に上がれなかったらもう一生無理かも」
かつてないプレッシャを勝手に感じつつ、黙々と慣熟歩行。
熊谷の路面ってこんなにきれいだったっけ?
10月前半の度重なる豪雨により砂が浮いた路面を想像していましたが、予想に反しえらくさっぱりした路面です。かえって洗い流された?
ウォームアップ走行を開始しても、思いの他グリップする為、かえって限界が掴み辛い。
他の選手とのペース差からして決して私も遅くないはずですが、どうにも攻め切れていない印象。
もっと闘争心を高め、精神的なウォームアップをしなければという思いと、本番前に転倒して悪い印象を残したりマシンにダメージを与えたりしてはいけないというプレッシャとの板挟み。
屈辱の第1ヒート
大丈夫。普通に走れば充分タイムは出る。
そう自分に言い聞かせグリッドに。
今回のスタート地点は、通常の教習で坂道発進に使用する丘の上からいきなり下る設定。
しかもコース図右半分は特に路面が荒れ砂も浮き滑りやすい傾向にある為、無理せずにスタート。
最初のS字を抜け、勝負はここからと一気に全開。
あれ?
コースどっちだ!?( ̄△ ̄;
クランクでどちらに曲がるのかコースを見失い、止まりそうなスピードまで減速して進入。
左右を見回し、ミニパイロンにより右側が規制されているのを目視してから左へ。
迷走こそしなかったものの、絶望的なミステイク。
それでも第2ヒートの為に1本目でしっかり攻めてコースを把握しておかねばと思うものの、もう何もかも滅茶苦茶。
パイロンの列を抜けてのフリーターン(足着き不可)でも減速し過ぎ意図せず足着きターン。
ラインも進入速度も定まらぬままかろうじて完走。
タイムは2'06.054(+1)
戦慄のトップタイム
しかし私のタイムは論外としても、他の選手も意外とタイムは伸びず。
B級勢もほとんどが2分の壁に当たっている模様。
A級の走行が始まっても思ったほどには詰まらず、「トップタイムは55秒フラット付近か? それなら2本目でなんとか……」とわずかながら希望を持ちながら上位勢の走行を土手の上から観戦。
しかし……。
本命中の本命、永井、手塚、両選手共53秒台に突入。
やはり本気のA級トップは格が違った。
昼休み
関東名物ジム茶屋、今回の出し物はすいとん。
激安でウマウマ〜。
1本目の自分のミスとトップタイムの凄まじさにいちじるしく萎えた気力を何とか奮い立たせ再び慣熟歩行。
普通に走れば2分は切れるはず。
しかし天気は快晴。路面温度は予想以上に高く、A級の2本目はさらに大幅なタイムアップが見込まれる。
C1優勝どころかB級もほとんど喰う位のタイムでないとB級昇格は望めない。
……どのみち1本目が散々の体たらく。失うものはなにもない。
遅ればせながら関西からの遠征組で、ウチの掲示板に書き込みしてくださっているryuさんに御挨拶などしながら、出走まで精神状態の回復に努める。
なんでこんなにグリップするんだ……
ウォームアップ開始。
他の選手とからむとラインのイメージを乱されるので、極力車間を空けて走るが追いついてしまう。
しかしまだタイヤのグリップには余裕がある。
ウォームアップコースではB級が混ざって来ても遅く感じる。
こういう状態のときに一発でタイヤの限界まで使いきりタイムが出せるか否かが、A級との差なのだろう。
水温が上がるので時折走行を中断し、本コースの記憶でイメージトレーニングしつつ出走を待つ。
完全燃焼を目指し、第2ヒート
今日の路面は荷重を掛ければ掛けるほどグリップする。
攻めろ。ひたすら攻めろ。
そう言い聞かせながら懸命に走るが、まだタイヤはスライドしない。
限界が掴めないままアダチセクション、最初の回転8の字へ。
1本目でいきなりパイロンを倒す。
終わった。この時点で私の大会は終わった。
フリーターンの立ち上がりでふらつき、さらに1回パイロンタッチ。
今後の為にタイムを残すべく必死に走るが、リズムは狂ったまま。
それでも最後まで気力を振り絞り、ゴールのブレーキングも限界まで我慢してゴールエリアで大きくジャックナイフ。
タイムは――?
『2'02.387』
ばこ!
あ゛!?
反射的に拳をタンクに振り下ろして……凹。
さ、最低……。
マシンに当たってどうするよ……il||li _| ̄|● il||li
色々な意味で首をくくりたくなりながら、すごすごと退場。
これが実力の差というものか……
上位勢はさらに熾烈な争いを展開。
1本目ミスを犯していた冨永選手が脅威の52秒台突入。
そして1本目2位の手塚選手がなんと1/1000まで同タイムを出しながら、ゴールエリアでバランスを崩し3ペナ。
1本目トップの永井選手は53秒を切れず、冨永選手ダンロップ杯初優勝となった。
今回はB級でさえ105%を切ったのは2名のみ。
『全員気持ち良く走れて、しかしタイム差はきっちり出る』という安達氏のコンセプトが見事に具現化された、素晴らしい大会でした。
本大会におけるばんざいの戦績
C1クラス11位。
トップタイム比110.17%
1本目の失敗に精神的ダメージを受け過ぎた模様。
精神面でも技術面でも、己の未熟さを徹底的に見せつけられました……。
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