su−san〜 |
****************** su-sanの2003初釣行 ****************** いつも当日の水位を知る指標としていたコンクリートブロック、その頭30センチほどが水面に突き出し、 明らかに釣り最適水位であることを告げている。 逸る気持ちを抑えつつ手早く身支度を整え、河川敷にびっしりと残るザラメ雪を踏みしめながら水辺に下りた。 厚手のドライタイツを以ってしても、真冬の水の冷たさから逃れられないだろうと覚悟していたオイラは、 意外なほどの阿仁川の温さに困惑しつつも、彼の指示のままに流芯を目指したのである。 阿仁川の主Mr.Kikutiから、驚かせることがあるから来てくれとのメールが届いたのは「大寒」直前の1/18であった。 この冬の阿仁川は、森吉山の火山活動が活発化して、地温が上昇した影響で水温低下が随分遅れている。 もしやとの思いから、数日前に下前田温泉下の瀬を潜水調査してみたところ、 越年アユと思われる良型が早瀬の芯で盛んに縄張り行動を見せていたと言うのだ。 そこで禁漁期のこの時期、県から特別採捕許可を得たので、一緒に釣って見ようと言う今回の誘いなのであった。 翌日早朝凍てつく仙岩峠を越え、粉雪の舞う阿仁町を過ぎ森吉町に入った。 現地到着と同時に、雪雲は取れ初夏を思わせるような柔らかな陽射しが、阿仁前田周辺を包み始めた。 Mr.Kikutiは、神奈川県水産試験場から取り寄せたと言う数尾のアユを準備して、 既に身支度を整えいつもの人懐こい笑顔で待っていてくれた。 遠望する森吉山の樹氷、周辺を埋め尽くす豪雪、そんな冬景色の中のアユ釣りだなんてと半信半疑のまま、 必ず釣れる筈だと言い切る彼に促されるように、いそいそと先日入手したばかりの超硬ロッドを取り出すオイラであった。 この時期、生き物の存在すら感じさせない筈の北の清流、 しかし不思議にもこの水域だけには水棲昆虫や微生物の活発な存在が感じられる。 老成した藻類は見られず、足元の石には盛期を思わせるしっかりとした垢付き、 数は少ないながら大きなハミ跡を見つけるに至っては、 俄かに期待も高まるのである。 流芯を目指すほどに飛び散る飛沫にも、まったく冷たさを感じることはなく、むしろ快適ささえ覚える奇妙な気分だ。 Mr.Kikutiは得意の右岸の深瀬へ、オイラは下流のガンガン瀬へと散った。 水中糸メタル0.2号4m、ハナカン6ミリ、ハリス1.5号+9号3本チラシ、2号玉での引き釣りを試す。 遺伝子操作で成熟を遅らせた大型のオトリは、 オイラの心配をよそにグイグイと仕掛けを引っ張って流芯に入ろうとするところを、ブレーキをかけるように手前の瀬脇に誘導する。 少し浮かし流れに乗せて2mほど下の大石裏へと、時期を考慮した遠慮がちの釣りに徹するも30分間まったくアユの気配なし。 はるか彼方の上流右岸に陣取ったMr.Kikutiが、ロッドを肩に何やらゴソゴソ・・・、かかったのか! 焦るオイラ、深みの根掛かりで貴重なオトリ1尾を失う。 仕掛けを張替え、引き舟から残りのアユを取り出す。 その時光線の加減から、一瞬流芯の中に野アユのヒラ打ちが見えたような気がした。 次のオトリも素晴らしい馬力で流芯を目指した。 大きく波立つ芯に入るやすかさず前アタリ、4ヶ月ぶりで感じる野アユの気配だ。 次の瞬間、目印がすっ飛び激流を越えて対岸のトロへ激走する。 いまや失われつつある米代の大アユ、剛竿を手元からひん曲げメタルラインを鳴らして水面を切り裂き縦横に突っ走る、 そこには昔懐かしい野生の躍動があった。 ここ2,3年味わうことのなかった大アユとの対決は、極度の興奮と緊張の中、オイラの勝利に終わった。 数分間の激しいやり取りの末、再び真冬の清流に静けさが戻ったとき、 手網の中には見事な体高と美しい体色を誇るかのように、29センチの魚体がオイラを睨んでいた。 次は仕掛けをメタル0.4号10号3本チラシに張替え、29センチのオトリを送り出した。 静寂の中にあった流れは、たちまちにして戦場と化した。 今度は超硬ロッドのトルクを活かし充分にタメを作り、石裏のタルミに持ち込んで少し浮いたところを強引に返し抜く。 よく晴れた真冬の空に、二つの大アユが舞って上流への軟着水が決まる。 「寒」のさ中、秋田の内陸北部には珍しい日本晴れのもと、Mr.Kikutiとともに、そんな繰り返しが延々と続いていた。 嵐のような数時間が経過すると、突然アタリはおろかアユの気配など全く感じられなくなった。 支流小又川でダム放水があったのか? そう言えば水温が大分下がったような? 顔にかかる水飛沫が妙に冷たくなった。 ・・・・・と、我が寝所、布団の襟元から冷たい身体が滑り込んできた。 厳寒のさ中の朝帰りなのか、歳はとったがそのしなやかさは健在、 少し毛深かさは増したようだが相変わらず魅力的な姿態、 彼女はオイラに腕枕をせがみ胸元に優しく爪を立てて見せる。 オイラは両腕の中にそっと彼女を包み込んでみた。 彼女は僅かにうめき、艶めかしく身をよじってみせるが、すぐに安らかな寝息を立て始めた。 突然目覚まし時計がけたたましく鳴った。 締め切ったカーテンの隙間から、青白い雪明りが射している。 我が右腕には、12年目になったシャムの雑種が、しがみつくようにして熟睡している。 1/19早朝、寝ぼけマナコをいくらこすって見ても、あの阿仁川の越年アユの姿などもあろう筈がなかった。 |
さすが 「北の奔流」 管理人のsu−san 誰よりも早く、あの清流 阿仁川で鮎を掛けた。 羨ましい限りだ。 |
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