Traumwach −2−
「まず第一の扉です。
ここではダブルスの試合をしてもらいます。
4チーム中3チームが勝てば、扉を通ることが出来ます。
負けてしまってもやり直すことが出来ますが、勝てなければいつになっても扉は抜けられません。」
説明を聞き終わると、菊丸がすぐにブーたれだした。
「ダブルスやンのは良いけどさー。お前と薫ちゃんチームなんて負けるに決まってンじゃん。
結局は誰も負けらんないってコトだろ?そんなのアリー?」
菊丸の良いトコロは素直なトコロなのだが、
こうも正直に思ったコトをポンポン言ってしまうのは少し問題があるのでは?と、
誰もが口にすることなく菊丸を見た。
ムスッとして菊丸の言葉を聞いていたハルは
「本当に失礼な人ですね!ボクのこと殴ったし!(根に持ってる)
ボクだって魔法が使えるんだから、貴男達サイズになれますよ!
それにテニスだって大好きなんだから!!」
今にも泣き出しそうだった。
「・・・菊丸先輩・・・
折角案内してくれてるのにワザワザいじめることないんじゃないッスか?
お前も泣くな。
それからオレとのゲームで魔法なんか使うなよ」
「もちろんです。せーせーどーどー戦います!」
海堂に庇ってもらったハルは機嫌を直してにっこりと笑った。
『なんかコイツの事は放っておけないんだよな・・・』
海堂は心の中でハルと「誰か」を重ねていた。
コートにはいると、ハルと同じ大きさの8人の妖精が待っていた。
「今日はこの人達と試合が出来るよ」
ハルと話していた妖精はにーっこりと笑って
「うん。楽しみだよ。人間とテニスをするのは久しぶりだもんね!」
外見はなぁんとなく氷帝の跡部に似ているが、性格はまるっきり違っていた。
「じゃあペアを決めてね。
皆さんもプレイする順番を決めて下さい」
なんやかんやともめたが、何とか決まった。
1.海堂・ハル
2.桃城・越前
3.手塚・大石
4.不二・菊丸
この順で試合をすることになった。
「ボクはそんなに弱くない」というハルの言葉は菊丸によって潰され、
信用できないからと最初にされてしまったのだった。
小さな妖精相手にムキになる菊丸に呆れていたのかも知れないが、
「気分屋・菊丸」の機嫌を損ねると後々面倒だと、皆は何も言わなかった。
ハルは納得いかないようにむっすーっとした顔で、他の妖精達に話しかけた。
「・・・・・じゃあ 大きくなりましょう・・・・・」
妖精達は体を光に包むと、次々に大きくなっていった。
その姿は誰も見たことのある顔だった。
「あれ?氷帝と不動峰じゃん」
「ナニ驚いているんです?
皆さんの世界にはそんなにボク達と似た人達がいるんですか?」
驚く皆の後ろから声をかけたハルの姿は、まさしく「乾」だった。
「じゃあ ボク達が一番ですし、そろそろ始めましょうか。
ねぇ 海堂さん」
ハルは相変わらずニコニコ話していたが、皆の目に映る姿はあくまで「乾」だ。
ニコニコ話しているだけで変なカンジがするのに、海堂に至っては「さん」付けで呼ばれている。
海堂は堪らなくなった。
「ハル・・・頼みがある・・・」
「何でしょうか?」
「その姿でいるときは、あまり笑うな・敬語を使うな・オレを「さん」付けするな。
もっと余裕ぶった態度をとってくれ」
「余裕ぶった・・・あの人みたいに?なんかエラソーですねぇ」
「・・・まぁ そんなカンジだ・・・」
「おい 海堂」
突然引き合いに出された手塚は海堂を制した。
「スミマセン、あのままだと試合に集中しきれないと・・・」
手塚は仕方ないと言うように小さく溜息をついた。
「さぁ、元に戻るために試合を始めよう」
・・・薫君に敬語を使うセンパイ・・・
ヤだな・・・