Jedes Gefu:l   Entfernung  Seite  K.KAIDOH



何度季節が巡っても、ずっと一緒に・・・・・



あの人にはかなわない。
乾貞治という一つ上の少し変わったセンパイ。
オレが一年の頃からいろいろアドバイスをしてくれた人。
今のオレがあるのはあの人の力が大きいと感謝していた。


「感謝」という気持ちが
「気になる」という気持ちに変わってきたのは、いつの頃からだったろうか。
いつも練習に付き合ってくれるあの人との時間に、オレは心地よさを感じていた。


関東大会が近づいたある日のこと

 「俺とダブルスを組んでみないか」
 「断る」

本当はすごく嬉しかった。
オレを選んでくれたこと・・・・・
一人で「ブーメランスネイク」の練習をしているオレに、
それはあくまで練習だから、ダブルスを利用してみろと言ってくれた。
特別になった気がした。
それで良いのかと聞くと

 「俺は俺でお前を利用させてもらう」

と返された。

 『利用させてもらう』

その言葉は鋭い刃となってオレの心を貫いた。
オレはひどく悲しくなった。
なぜだか解らないけど
ひどく悲しくなった・・・・・・



何でこんなにあの人が気になるんだろう。
確かにあの人のことは尊敬している。
尊敬というなら手塚部長もそうだ。他の先輩達も・・・・・
でも、誰のときとも違う。
あの人だけが気になる。
何なんだろう・・・・・この気持ちは・・・・・

・・・・・なのに
どうして目が合うと逸らしてしまうんだろう。
どうして悪い態度をとってしまうんだろう。
考えれば考えるほど解らなくなる。

・・・・・でも・・・・・

気付かない方がいいことや、知らない方がいいことだって、きっとある。
・・・・・だから・・・・・
もう考えるのは止めよう。
今はただ、この「キョリ」を大切にしたい・・・・・

そう思っていた。


だけど、この「キョリ」を壊したのはあの人だった。
ダブルスを組むことが決まり、二人でトレーニングをしていたある日

 「俺、海堂のことが好きなんだ・・・」

・・・からかわれてるのかと思った。


でも、あの人は本気だった。

嫌われること、怖がられること、
そんなことに慣れてしまっていたオレは、好かれることなんて忘れてしまっていた。
この「キョリ」を壊すことを恐れて何もしようとしなかったオレとは違い、
あの人は「好きだ」と言ってくれた。
すごく嬉しかった。

知らずにいた方がいいと、考えることを止めていたこの気持ちは

 「好き」

ということだったんだろう。
きっとオレはそれを認めるのが怖かったんだ。

あの人にはかなわない。
オレの出来ないことをやってのけるあの人には・・・・・
話すことが苦手で、うまく言葉にすることの出来ないオレの気持ちを、
あの人はいつだってしっかりと受け止めてくれる。
そのことがどんなに嬉しいか、きっとあの人は知らない。

・・・・・だけど・・・・・

「好きだ」という気持ちが、あの人よりもオレの方が上だと思われるのはなんか悔しいから、
絶対言ってなんかやらない。


信じよう  あの人を


差し伸べられたあの手をとった瞬間から
ずっと離れることのない二人の「キョリ」が始まり

ずっと続いてゆくと

信じている・・・・・・