Katze
落ち葉舞う季節
仲良さそうに歩く影が三つあった。
乾・不二・菊丸だ。
彼らはすでにテニス部を引退していたが、指導のために今でも部活に顔を出している。
指導といっても自分が打ちたいからで、相手をしてやっているという程度だった。
毎日ではなく、自分の時間があいている者が来ていた。
今日はこの三人だった。
練習自体は早く終わったのだが(というか最後まで参加してない)
菊丸の希望でファーストフードを食べに行っていたのだ。
公園に来たのはその帰りだった。
公園を歩いていると、乾がベンチに座ったある人物に気付いた。
ベンチに座ってるなんて珍しいと思いつつ、近づいて声をかけた。
「海堂」
呼ばれた人物・海堂は、頭だけ後ろに向けて挨拶をした。
礼儀正しい海堂が、先輩相手に立たずに挨拶をするなど初めてだったので、
何か変だと三人は思った。
「何やってんの?そんなトコで」
不二が笑顔で訊ねると、海堂は困った顔をして下を向いた。
「・・・コイツが・・・」
海堂の膝の上には丸くなって眠っている猫がいた。
「おー。カルピンだー。かっわいーvvv」
「カルピン?」
「んー?薫ちゃん知らなかったの?
このコはおチビんトコのカルピンだよ。」
顔を輝かせて話す菊丸の隣では、乾がムスッとした顔をしていた。
頭にピキピキ(怒りマーク)まで出来ている。
(コノヤロー。海堂の膝の上で寝やがって!
俺だってまだしたことないのに!
「かわいい・・・な・・・」
(くそー。ガシガシ撫でてやる!)
乾は一人で妙なことを考えながら手を伸ばした。
カルピンはイヤな気配を感じて目を覚ました。
起きて最初に見たのは眼鏡を妖しく光らせる大きな男。
ビクッ
カルピンは身の危険を感じた
この男に触れられては行けない
本能がそう告げた(さすがだ)
そしてカルピンがとった行動は・・・
バリッ
「フーーーーッ」
そう、カルピンは乾の差しのばして手を引っ掻いて威嚇したのだ!
乾は傷の付いた手の甲を見てなにやら哀しくなった。
海堂の膝を取られた上に引っ掻かれて、さらに心に傷を負った。
ズーーーンと固まる乾を見て菊丸は指を指して笑った。
「あっははー。乾がカルピンに嫌われたー」
・・・エージよ、君は純粋故に残酷だ・・・
乾は菊丸の背にコウモリの羽を見た(気がした)
本当なら海堂に抱きつきたいところだが、残念なことに彼の膝にはまだ「ヤツ」がいる。
菊丸はまだ笑っている。残るは・・・
「わーん 不二ーーー」
乾は不二に抱きついた。
不二は乾(の馬鹿なところ)が結構気に入っている。
「よしよし」
と頭を撫でていた。
184pの大男が167センチの男の胸で泣き、頭を撫でられている姿は、
〈変〉
以外のなにのもでもなかった。
不二の胸で泣いていた乾の肩にいきなり強い力が加えられた。
そしてそのまま「ペリッ」と不二から剥がされた。
何事かと振り向くと、
バリッ
乾の顔に鋭い痛みが走った。
「フーーーッ」
今度はカルピンではなく、菊丸が乾を威嚇している。
もちろん引っ掻いたのも菊丸だ。
『オレの不二に何しやがる!この変態眼鏡が!!』
といったところか・・・
「あ〜ぁ エージにも嫌われちゃったね・・・」
不二も困った笑顔になった。
海堂には小さな猫が。
不二には大きな猫がそれぞれ張り付いている。
乾は何とも言えない気持ちになって、
「ひどいよみんなー」
と泣きながら走り去った。
海堂は乾を追いかけようかと思ったが、
カルピンがまだ膝の上にいたのでやめた(・・・ひどいよ・・・)
暫くしてカルピンは迎えに来たリョーマと家に帰った。
その後、不二達と別れた海堂は、家に帰らずに別の場所に向かった。
エレベーターで最上階まで上り、目的の部屋の呼び鈴を鳴らした。
「センパイ?」
こちらに来る気配はない。
海堂はドアノブを回した。
鍵も掛かっていない。
「・・・おじゃまします・・・」
海堂は何度も来ている乾の部屋に向かった。
「センパイ?入りますよ?」
乾はベッドの上で、鼻をピスピス鳴らしてべそをかいていた。
かなりショックだったらしい。
『ったく。しゃーねーなー・・・」
海堂はベッドに上がり、乾の隣に座った。
胡座で座った海堂は、乾の頭に手をかけて力一杯引き寄せた。
結果乾は海堂に膝枕をしてもらう形になった。(ちょっと違う)
「・・・海堂・・・」
海堂は乾の頭を撫でていた。
「・・・ったく。ネコにヤキモチなんて焼いてンじゃねーよ。
して欲しいならして欲しいって、そう言え。・・・・・いつでもしてやるから・・・・・」
最後の言葉はとても小さかったが、ちゃんと乾の耳に届いた。
「それに・・・」
海堂は乾の額に自分の唇を落とした。
「こんなことすんのはアンタだけなんだからな」
テレくさそうに話す海堂のかわいさといったら・・・
乾はさっきまでの哀しみが全部消えたのが解った。
「海堂を好きになって良かったよ。
ありがとう。大好きだよ。」
今度は乾が海堂の唇に自分の想いを重ねた。
海堂はテレながら伝言を伝えた。
「菊丸センパイが、「ごめんにゃ」って言ってましたよ」
「うん。もう気にしてない」
だって乾にも可愛いネコがいるのだから。
冷たそうにしてるけど、ホントはとっても優しいネコ。
さっきも乾を癒してくれた。
海堂の優しさに包まれていれば、今年の冬も暖かく過ごせそうだと思いながら、
乾は海堂の膝の上で甘えていた。
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薫君の優しさは毛布みたいです。
暖かくくるんでくれるのです。
でも甘えすぎているとたまに静電気が・・・
薫君は甘やかすだけの人ではないのですvvv