Geburtstag zwei  −2−





乾の家へと着いた海堂は呼び鈴を鳴らした。
待っている間に、光る物をシャツの中に隠す。
乾はすぐに出迎えてくれた。


 「やぁ いらっしゃい」


笑顔で迎えられた海堂は、ほんの少し紅くなって「おじゃまします」と中に入った。





今の時間は3時
夕食には早いので、リビングで紅茶を飲みながら話をしていた。
いつもと同じようなテニスの話。
しかし乾の目に映る海堂は「心ここにあらず」といったカンジだった。


 「ゴメン海堂。つまらないかな?」


突然の乾の言葉に、海堂は慌てて答えた。


 「違うッス! あのッ・・・  あのッ・・・」


珍しく狼狽える海堂を訝しみ、その頭に手を伸ばそうとした乾を携帯が止めた。


 「はい。 (もしもし乾〜?) あぁ エージか。うん 俺だよ。
  (乾さぁ、今日誕生日だったよね?) 知ってたのか?
  (うん!だからさ、今から不二達と一緒にご飯食べにゃい?) 今から? (そー)
  今日はムリだな。 (えぇー。にゃんでだよー) 今、俺の大切な人が来てるんだ。
  (んじゃ そのコも一緒に!) ダメ。お前達に見せたら減っちゃうから。 (ぶぅ〜)
  明日の練習後に行こうと伝えてくれ。 (まぁ そーゆー人がいるならしゃーないか)
  悪いな。 (いいって。んじゃ まった明日ー) じゃあな。」


電話を切った乾が振り返ると、海堂の顔は真っ赤になっていた。
 
            ・ ・ ・ ・
   『大切な人が来ている』

大切だと言われたことがすごく嬉しかったのだ。
乾はそんな海堂を幸せそうに見ていた。



会話も弾むようになり、いつもの海堂らしくなった頃、
「そろそろ食事の用意をするか」と、乾が立ち上がった。
すぐに海堂も立ち上がったのだが、


 「海堂はお客さんだからいいの!
  ゆっくりしててよ。」


乾は海堂をソファーに座らせ、キッチンに向かった。



カチャカチャと音が聞こえ始めてから30分ほど経った頃、
「おまたせー」と、乾が料理を運んできた。
ミートソースに野菜サラダにコーンポタージュ。
とても美味しそうだ。

だが、練習中「汁」で苦しめられている海堂は


   『一体どんな味がするんだろう・・・』


テーブルに並べられた料理を前に、少し警戒していた。




 「さぁ食べよう。口に合わなかったらゴメンな」


そう言われて、母から預かったものを思い出した。


 「あ・センパイ。これ、ウチの母からです」


母が持たせてくれたのは唐揚げとポテトサラダだった。


 「こっちこそセンパイの口に合うといいんスけど・・・」


 「ありがとう海堂。あとで穂摘さんにお礼言わなきゃな」


にっこりと微笑う乾につられて、海堂も微笑った。
普段、人前で笑顔を見せない海堂の笑顔を見ると、乾はとても幸せな気持ちになった。


 「じゃ 食べようか」


 「いただきます」


楽しい食事が始まった。



乾の作った料理はとても美味しかった。
海堂はパスタを口に運びながら


   『この人、こんなに料理上手いのに、何であんな不味い「汁」とか平気なんだろ?
    味覚しっかりしてんじゃんか』


などと考えていた。
そして


 「? どうした?」


 「イエ・・・すごく美味しいと思って・・・・・」




真実は闇に葬られた。








水月の中では センパイの料理 = パスタ
というのが、当たり前になってます。
多分、何かっちゃーパスタになると思います。