Geburtstag eins −1−
風薫る5月
新緑も美しく輝く季節
乾と海堂はとある旅館に向かっていた。
コトの起こりは4月上旬。
「海堂。一緒に旅行しないか?」
「突然ナニ言い出すかと思ったら・・・
旅行だぁ〜?」
いきなりの申し出に驚く海堂に、乾はにっこりと笑い先を続けた。
「うん旅行。
親戚の家が旅館を経営してるんだよ。
ゴールデンウィークあたりどうかな?
今言っておけば一部屋くらい空けてもらえるけど。」
いつになくニコニコしている乾に、海堂は少し警戒していた。
普段からなんやかやとセクハラ的な行動をとる乾のことだから、
また何か企んでるんではなかろうかと、身のキケンを感じていた。
しかし相手は仮にも先輩。
おまけにいつもトレーニングの事などで世話になっていることもあって、無下に断れない。
頭っから「何かされるのでは?」と疑うのも悪いしと、海堂はフリーズしてしまった。
なにやら考え込んでしまった海堂を、乾は不安そうに見つめた。
「あ〜・・・ もしかして行きたくない?」
行きたくないわけじゃないと言おうとした海堂より早く、乾が溜息をついて続けた。
「そっかぁ 行きたくないのかぁ〜。温泉なのになぁ・・・・・」
『お、温泉・・・?』
海堂が温泉好きなのを知っていて、ワザと温泉の部分だけを強調した。
そして「温泉」の言葉に反応したのを見て、残念そうに言ってみる。
「せっかくの温泉なのになぁ〜。
でも海堂が行きたくないんじゃなぁ〜・・・」
温泉という「エビ」を目の前に出された「鯛(しかもピッチピチ)」は見事に罠にハマってしまった。
「行くッス!」
一本釣り成功!さすが青学のブレーン「乾貞治」だ!
「本当かい?有難う!」
乾はすっごく幸せそうな顔で微笑った。
そんなワケで二人は乾の親戚が経営する旅館に来たのだ。
二人が旅館に着くと、女将さんが出迎えてくれた。
「まぁまぁ 貞治ちゃん。いらっしゃい。
昔みたいに迷わなかった?
それにしてもよく育ったわねぇ」
女将さんはとても優しく微笑う人だった。
「叔母さん・・・」
乾は少しテレていた
「貞治ちゃんに会うのも久しぶりだからとっても嬉しいのよ。
皆さんはお元気かしら?
なかなか伺えなくてごめんなさいねぇ。
アラ?そちらのかわいいコが話してた海堂君ね?」
「初めまして。テニス部の後輩の海堂です。
今日は有難う御座います。
あの、これは母からです。よろしかったら召し上がって下さい。」
海堂は丁寧な挨拶をして、母から預かってきたお菓子を渡した。
「まぁまぁ ご丁寧に。
気を使わなくてもよかったのよ。
でも、有り難く頂戴させていただくわね。
さぁ。お部屋に案内しましょう。いらっしゃいな。」
そう言って女将さんは二人を部屋に案内してくれた。
案内された部屋は落ち着いた感じの部屋だった。
「うわぁ〜 いい部屋〜」
海堂は素直に感想を口にしていた。
「気に入っていただけたかしら?ゆっくりしていてね。
食事は6時頃に運ばせるから。」
女将さんはまた優しく微笑い、部屋を出ていった。
海堂は乾の傍にトテトテと寄ってきて、少し紅くなりながらお礼を言った。
「センパイ。誘ってくれて有難う御座います。」
海堂があまりに可愛くニッコリ微笑うので、乾は
『うっわぁ〜 今、すっごぉ〜く抱きしめたぁ〜い』
手をわきわきさせていた。
海堂はそんな乾の妖しい手付きに気付きもせずに窓辺により
「おっ いい眺め〜」
と素晴らしい景色を堪能していた。
二人は窓辺のテーブルでほっこりとしていた。
少し時間がたった頃、「風呂に行って来る」と海堂が立ち上がった。
一人で部屋にいてもと思い、乾が一緒に行くというと
「えっ?・・・・・あ〜 ハイ・・・」
海堂はほんの少しイヤな顔をした。
『今の「え?」はナニ。「え?」は』
乾大ショック。日頃の悪い行いはこーゆー所でアダになる。
入浴シーン表現カット!(自主規制(笑))
おもいおもいに二人を想像して下サイ。
一人先に戻ってきた海堂はまったりしていた。
どうやらこの窓辺の景色が気に入ったらしい。
窓を開けると爽やかな風がホコホコした躰を冷ましてくれた。
『やっぱり温泉はいいな・・・』
海堂は乾のことなどすっかり忘れて涼んでいた。
突然ドアを荒く開けて乾が入ってきた。
「海堂!置いてくなんてヒドイじゃないかぁ!」
メガネで見えないが、乾は少し涙ぐんでいた。
「あ・お帰りなさい。
スミマセン。ゆっくりしてくると思ったんで・・・」
ビックリして答えた海堂に
『なんだ。ワザとぢゃなかったのか』
安心した乾は、『旅は心を解放する』何処かでそんな言葉を聞いたのを思い出し
「(今なら少しくらいは・・・)海堂〜〜! 淋しかったよ〜〜〜!!」
と、抱きついた。
・・・・・・案の定殴られた・・・・・・
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一番最初の本です。
微妙に変わってるところがあったり・・・。(探してみよう!)
ギャグを書きたかったのに、あんましギャグになってないような・・・
何にしても難しいねぇ・・・