終わらない明日へ


崩壊してゆく施設の中、出口を探して走っていた。

目の前に灯りが見えた。

しかし出口かどうかはわからない。

考えているヒマなどK’達にはなかった。

敵がいたら倒すだけ。

こんな所でくたばるワケにはいかなかった。

K’にはまだ知りたいことも、取り戻したいものもあったのだから。

目の前の光の中から影が現れた。

 『人だ。敵・・・だろうな』

そう思いながら走っていたK’の右腕が突然熱くなった

 『これは・・・前に一度だけ・・・』

光に近くなるとともに、人影がはっきりしてきた。

そこに立っていた者は・・・

「草薙・・・京!」

本物の草薙京だった。

その証拠にK’の右腕の遺伝子は京に反応を示したし、

何より彼を取り巻く気配がクローン達とは全然違っていた。

京はにっこりと笑い

「紅丸、真吾、久しぶりだな」

真吾は泣きそうな顔になっていた。堪えるのがやっとの様だ。

「く、草薙さぁ〜ん」

「京!お前何でこんなトコにいるんだよ?今までドコでナニしてた!?」

紅丸はKOFが始まった’94からずっと京とチームを組んできた。

真吾よりも京を心配してきたはずだ。

目の前にいきなり現れたことで、いつも冷静な紅丸も少し混乱したようだ。

「何でこんなトコにいるのか俺の方が聞きてーよ!

 目が覚めたら知らねー部屋にいるわ、体中にコードはついてるわ ジョーダンじゃねーぜ!

 おまけにココに来るまで何人「俺」を見たと思う?
 
 頭がヘンになりそーだぜ!」

紅丸にそこまで話すと、京は視線をK’とマキシマに向けた。

「お前らはここの組織の人間だな?納得いくように説明してもらおうか」

そう言い放った京の目には敵意が満ちていた。

K’はその視線を疑問に思った。


  なぜ草薙はオレ(とマキシマ)を責めるのだろう?

  オレの方こそ被害者ではないのか?


組織に捕らえられた京は何を失った?

いらない〈力〉を与えられたか?

肉体を調べられ、クローンを造られた。迷惑と言えばそうだろう。

クローンを全て破壊してしまえば京は元の状態に戻れる。

しかしK’は、組織を潰しても、(K’はまだ知らないが)クローンであるクリザリッドを消しても

右腕に移植された「京の〈力〉」は残っている。記憶も戻らない。


  草薙は何も変わっていないじゃないか!

  オレの躰は変えられてしまったのに!!


『草薙は悪くない』、そう思っていたK’を

『草薙の存在がオレの全てを狂わせた!』、に変えてしまった。

K’は向けられた敵意をそのまま返した。

「何も言わねぇつもりか?

 それなら力ずくでも吐かせてやる!」

京は手に意識を集中させ、炎を呼び出した。

それに呼応するようにK’の右腕にも炎が現れた。
先程クリザリッドと死闘を繰り広げていたK’には、京と倒す力は残っていない。

ただ〈想い(それはひとつやふたつではない)〉を京にぶつけたかったのだろう。

「お前・・・何で炎を扱える!?」

「テメェのせいで、オレは・・・!」

それぞれの思いがぶつかろうとしていた。




K’の炎を見た京は少しだけわかった気がした。

この場所に着くまでに何人も見た自分のクローン。

K’はクローンではないが、「京のせいで」と言うことを考えると京の「何か」がK’に渡されているのだろうと理解した。

そう考えたら、今K’と戦うのは無意味なように思えた。

京は炎を消すと、K’に向かって呟いた。

「お前もそうなのか・・・」

そしてK’も炎を消した。


二人が少し落ち着いたとき、建物に限界が訪れた。

天井が崩れ始めたのだ。

巨大な固まりが落下し、K’達と真吾達の間を隔ててしまった。

「草薙さーん、K’さーん、マキシマさーん。無事ですかー?」

「おう お前と紅丸はどうだ?」

「あ、平気でーす」

「そうか、じゃヤバそうだから逃げるからよ。

 お前らも気ぃ付けて逃げろよ!」

「え?ちょ、ちょっと待って下さいよ草薙さん!せっかく会えたのに!」

「ケリがついたら帰るから心配すんな!じゃーな!」

未練たっぷりの真吾とは違い、京らしいサクサクした別れだった。





     ◆     ◇     ◆     ◇     ◆ 





施設を脱出したK’と京は、心地よい風と優しい陽光に包まれた木の下で休んでいた。

脱出の際、「情報は何らかの形で送る」と言って、マキシマは行動を別にした。

仰向けで休む無防備なK’に京は問いかけた。

「お前・・・俺の遺伝子、持ってンだろ?」

「あぁ 持たされたってのが正解でけどな。

 ・・・・・どうする?右腕一本持ってくか?」

そう言ってK’は京の目の前に右腕を突き出した。

「ハッ バカくせ。テメーの中に入ったンなら、もう俺のじゃねーよ。好きにしな。

 まぁ どーしてもってんなら・・・・・躰で返せ」

「はぁ?」

「ハハッ 何てカオしてンだ。

 別にヘンな意味じゃねーよ。お前の能力で返せって言ってンだよ。

 お前だってこのままのハズねーよな?ネスツとやらを潰すこと考えてンだろ?

 目的が同じなら一緒に行動した方がいーじゃねーか。

 俺様一人でもいいが、パートナーがいるとラクだし、お前の持ってる情報も欲しいトコだしな。

 どうだ?俺と行くか?ってか、俺と来い。K’」

京はK’に手を差し伸べた。

K’は差し出された手を軽く払った。

拒否されたのかと思い、困惑の表情を浮かべる京にK’は、

「仕方ねーな。アンタ一人じゃ不安だろうから、一緒に行ってやるよ。京」

と言ってイタズラな笑みを浮かべた。

おそらく先程の京の言葉への小さな仕返しなのだろう。

そんなK’に、京は「まったく」と言うように小さな溜息を一つついた。

それでもK’は「京」と呼び、京は「K’」と呼んだ。

それは二人にとって、信頼の証だった。

多少は反発しあうものの、少しずつ理解し合い、惹かれ合っていく。

京が渡し、K’が受け取った遺伝子のせいだろうか?

・・・・・いや・・・・・そんな事はどうでもよかった。


《魂が引き寄せ合っている》


それ以外の理由など、彼らには必要ないのだから・・・・・



そして同じ野望へと歩き出した二つの影は、

光の中へと消えていった・・・・・





  † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †



はぅ〜。やっと完結しました。
K’×京のハズなんですが、最後にちょっと逢っただけだし、
見ようによったら、K’×真吾ですよね・・・
でも まぁ 記念すべき(?)第一作目なので、多少は大目に見て下さると嬉しいなぁ。
一昨年位かしら、書いたの。
でもなかなかイベント参加できなくて、そのままになってたんです。
せっかく書いた事だしということでUPしました。
水月視点の’99ですが、流れ的にはこんな感じです。(そうか?)
KOFを知らない方、是非やってみて下さい。
K’・めっちゃかっこいいですよ!
水月はこれでこの世界(同人)に入りました。


KOFとの出逢いが水月の人生観を変えました。マジですよ。大袈裟じゃありません!
「あの人」との出逢いが全てを変えました。

この作品に感謝です。