最後の場所
決勝戦は傭兵部隊の「怒チーム」だった。
K’とマキシマは、格闘家としての頂点を目指す紅丸や真吾と違い、組織に命じられてさんかしていた。
優勝とか最強とかそういう言葉に興味がない。
特にK’は早くこの茶番を終わらせたいと思っていた。
しかしK’の性格上「負けて終わらせる」などということはなく、勝ち進んできたのだ。
今まで同様向かってくる敵を倒すだけ。
そう考えていたのだが、K’はストライカーにされていた。
不服そうな顔をするK’にマキシマは小声で伝えた。
「体力を温存しておけ」
マキシマはやがて訪れるであろう別の最終戦を読んでいた。
怒チームには鞭を操る女性がいた。
彼女もストライカーだった。
『何処かで会ったか?』
K’は不思議な感覚を持ったが、すぐに気にすることをやめた。
試合はK’達の勝利だった。
そしてK’達は優勝者のみが行くことを許される「最後の場所」へ向かった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
怒チームとの戦いを終え、薄暗く長い通路を走るK’達をモニターで見ている男がいた。
「間もなく到着するだろう。準備を急げ」
モニターから目を離さずに静かに命令した。
「いよいよだな」
男は誰にも聞こえない程小さな声で呟き・・・笑った。
K’達は「最後の場所」へ辿り着いた。
閉ざされた扉がゆっくりと開いてゆく。
中には巨大な空間が広がっていた。
中央へと進んでゆくK’達の頭上から光が降り注ぎ、薄暗かったホールが明るくなった。
見回すと、そこは闘技場のようだった。
「ようこそ。KOF優勝者達よ」
突然声が響いてきた。
声の主は階段の上に立っていた。その者はモニターを見ていた男だった。
「!?」
K’は全神経を目と耳に集中させた。
「我が名はクリザリッド。
君たちの戦いのデータは全て取らせてもらった。
実に良いデータだ。感謝するよ」
「この声・・・あの影は・・・―――っ!」
そう、K’がいつも見ていた悪夢の声だ。
夢だと思っていたものは、現実の記憶だったのだ。
「K’、マキシマ。ご苦労だった。良いトリガーデータが取れた。」
「トリガーデータって何すか?」
話についていけなかった真吾が何気なく口にした。
K’もマキシマも答えなかったが、
「トリガーデータというのは殺人データだ。
人を殺すためのデータと言った方が理解しやすいかな?
哀れな少年よ」
クリザリッドは侮蔑をあらわにした目で答えた。
「殺人データか・・・。
――!?――哀れってなんだよ!俺はバカじゃないぞ!!」
真吾は混乱しているようだ。
「真吾。言い返すところはソコじゃないだろ・・・
あんた、クリザリッドっていったか?そんなデータをどうするんだ?」
真吾が言いたかったと思われるセリフを紅丸が代弁した。
「知れたこと。
そのデータを元にして作り上げた殺人部隊を各国に送り込み、この世界を我が組織の支配下
に置くのだ。
K’、マキシマ。お前達のような強化人間を大量生産してな」
黙ってクリザリッドを睨め付けていたK’の表情がさらに険しくなった。
「てめぇらが人を何人殺そうが、世界征服しようが、オレにとってはそんな事どーでもいい。
ただオレをこんなにしたオトシマエはつけてもらう」
「K’よ。何をそんなにイラついている?
素晴らしい能力を与えたのだから、
感謝されることはあっても恨まれることはないと思うのだが?」
「うるせぇ!
オレはこんな能力欲しくなかった!
勝手にテメェらがオレの躰を変えたんじゃねぇか!
何でだ!何でオレをこんなにした!」
今まで何度も問いたかった事を、ついに口にした。
K’の激情など気にせずに、クリザリッドはさめた口調で答えた。
「何だ。そんな事が知りたかったのか。
簡単なことだ。
「オリジナル」の能力、つまり右腕に「オリジナル」の遺伝子を組み込んでるのだが、
その力に完全ではないにしろ、お前だけは喰われなかった。
他にも大勢試したのだが、制御できずに暴走させてしまっていた。
まぁ使い物にならんからそいつらは処分したがな。
つまりお前は唯一の成功体なのだよ。
お前の「身体能力が高かった」それが理由だ」
「それだけの理由かよ・・・。許さねぇ!!」
「・・・K’よ。先程から少々言葉がすぎるのではないか?
自分の「オリジナル」に対して無礼にも程がある。己の立場をわきまえよ!」