ごく普通の日記



元日の夜。

昨年秋にオープンした超巨大ジャスコ店内に入っている

TOHOシネマズに行ってきた。

8スクリーンでもって何種類かの映画を常に上映しているので、

適当な時間に行っても、いつでも何かの映画が観られる大型の映画館だ。

ALWAYS 三丁目の夕日がちょうど上映時間前だったのと、

前々から観たいと思っていたので、ベルギーワッフルとホットコーヒーを

館内に持ち込んで観てきた。


ストーリーの時代背景は昭和33年で、僕がまだ生まれる以前だけど、

高度成長期に都会で育った幼少期の僅かな記憶とだぶるところがあり

懐かしさを感じながら映画を観ていた。

幼稚園児のころは白黒テレビを観ていた記憶があるし、ディーゼル車が

牽引した木製の車両に乗り、父親の実家に行ったこともある。


あの当時、確かに物は豊かではなかった。

しかし、それでも、人の物を盗んだり、騙してお金を奪ったりするような人は

少なかった。

豊かな暮らしに憧れ、一生懸命目標に向かって働き、隣近所で助け合い

物質的は貧しかったけど、みな心は豊かだった。

そんな日本国民の夢が叶い、三種の神器であるテレビ・冷蔵庫・洗濯機が

揃ったどころではない現代は、物質的豊かさとは反面、良い暮らし維持するために

社会全体で不必要な競争を繰り広げ、仲間を下げすさみ、脅し、騙し、平気で嘘を

付くことが日本の文化になっている。そしていつだか心の豊かさは失われ、

海外旅行などでもって心の豊かさ(やすらぎ)を補っている(お金で買う)、

そんな国になってしまった。

昭和時代に生きていた国民の誰がそんな未来を想像しただろう。

それが三丁目の夕日を観終えた感想で、映画の内容がどうのこうのというよりも

日本人の心の変わりようが悲しく、そんな理由で切なくなった。




その夜、夢を観た。いわゆる初夢。

内容を鮮明に覚えている。

夢のようではあるが、夢ではないかも知れない。

自分が布団の中で寝ていて、寝ている自分に対し僕が問いかけていた。

『お前は誰なんだ?』

『お前は今、何をやっているんだ?』

『お前は何のために生まれきたんだ?』

『お前はこれまで何をしてきたんだ?』

『お前はこれまで何を残したんだ?』

こんな感じで思考を巡らせながら、自分で自分を追いつめ、

自分の無力さにグッタリし布団の中で動けず苦しみもがき、

そしていやーな気分で目が覚めた。


起きてから少し経って、問いかけてきた自分の質問について

これまでの自分の生き様と照らし合わせ振り返ってみると、

結局何も残していないし、何もしていないという結論に達した。

研究者として研究報告書なるものを書き残しているが、

狭い分野の価値のない研究報告なんぞ、今後せいぜい20人程度しか

見ないだろうし、参考にすらしないだろう。

そんな現実を初夢でもって突きつけられてしまった。


『そろそろ本気で動かないと。後世に価値ある何かを残さないと』

その気持ちが新年の、これからの抱負になった――――気がした。

そんな気持ちの願いは、

日本人本来の豊かな心を持つ人達が暮らす国に変えることが出来たらいいなぁと。