現代版・マッチ売りの少女


それは大晦日の夕暮れ時のことでした。
雪がしんしんと降り積もる街を、一人の少女がマッチを売りながら歩いていました。

その少女は、瑠璃色の髪に雪を思わせる程の白い美しい肌。
そしてブランデー色の瞳を持った大層可愛らしい少女です。
しかし、その少女が着ている服はつぎはぎだらけ、
履いている靴は古びて今にも脱げそう。
空腹で泣き出しそうなのをこらえながら、寒さに身を震わせ
道行く人に声をかけていました。

「マッチを買ってください、マッチを買ってください」

少女はもう何人の人に声をかけたでしょうか。
自分でも分からないほどでしたが、誰一人立ち止まってくれません。
みんな重そうな荷物を抱え、通りすぎていきます。
新年のお祝いをする為に急いで家に帰るところなのです。

時々止まってくれる人がいても、
「マッチなんていらないよ」とすげなく断られるだけでした。
小脇に抱える小さなバスケットにはただマッチの束だけが積まれています。

夜の戸張が静かに幕を下ろし、冷気がどんどん身を刺していきます。
少女は暖をとるために、悴む手を震えさせながら、
持っていたマッチを1本づつ擦って行きました。

マッチが最後の1本になったとき、体格の良いとても素敵な男性が
目の前に現れました。
ガッシリしたその男性は、その娘に一目惚れ。
少女も、その素敵な男性を見た瞬間に恋に落ちました。

「お嬢さん僕と一緒に暮らしませんか?」と、男性が声をかけると、
少女は直ぐに肯きました。

二人は幸せな日々を送っていましたが、怠け癖のある男性は
働こうとしませんでした。
いつしかお金も少なくなり、少女はまた街に出て売り子を始めました。

少女は考えました。
『マッチを売っていたのでは大したお金にならない』
それからは、素敵な彼を模造したお人形を作って売ることにしました。

その人形は街で大変評判になり、飛ぶように売れました。
そして、いつしか少女は、こう呼ばれるようになりました。 → 現在の少女




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