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「ゲルニカ」考察 〜戦争による悲劇〜           2003.1.14




ゲル二カ.
パブロ・ピカソが1937年に描いた作品です。

この作品に託されたメッセージを、僕なりに解釈してみました。

僕が始めてゲルニカを見たのは、本屋で立ち見したピカソ作品集です。
その時は、余りの強烈な地獄絵と、恐ろしいまでの悲痛がよみがえりました
そして、気が付くと、いつの間にか無意識のうちに両手を合わせ、
犠牲者の魂を慰めていました。

この作品は、1937年4月ドイツ軍(ナチス)がスペイン北部の古都ゲルニカを
爆撃したことに対する抗議としてピカソが描いた作品です。
まさしく、戦争による人々の苦しみや、魂の叫びがこの絵から伝わってきます。

ピカソの作品は、原色を使った作品が多いのですが、このゲルニカには
色がなく全てモノトーンで描かれています。
本来、ピカソの作品には、シャガールと同様、色に欲望などの何らかの意味が
込められています。
この絵には色がついていないというその意味。
・・・すなわち、「戦争は、自由や個人の欲望など、全てが失われてしまう」という
強いメッセージです。
そして、残されたものは悲痛や虚無など・・・。
上を向いて神の救いを求める者、左の方向(戦争の反抗)にさまよう者。
(この絵には、正面や右を向いている人が描かれていません。)

上部中央に、電灯らしい光りが見えます。
最初、ここには電球が描かれておらず、絵を描き終える頃に
後から追加されたそうです。

この光りは、爆撃による爆弾の閃光です。
ここに、電球を後から書き加えた意味。
・・・電球とは、まさしく科学文明の象徴。
その科学進歩がもたらした結果が、戦争という悲惨な現実
・・・余りに悲しすぎです。

戦争の傷痕について、少し考えてみましょう。
戦争の悲劇を知る手段として、教科書や体験記・映画・写真などがあります。
でも、実際はどうでしょう?
教科書は書き換えられ、体験記は美化されたものが氾濫しています。
写真もほんの一部だけが写し出され、多くの人の目に触れる機会は
少ないのが現実です。

特に、映画は酷いものがあります。
戦争で戦ってヒーローや英雄が誕生するとか、
制作国側から見て反社会的な国を勝手に敵に仕立てあげ、
正義を守る平和な戦争を、我が国が勝ち取ったとか。

そこには、戦争で起こる悲惨な現実が描写されていません。
戦争で失われ壊れていく人々の心とか、悲しみとか、爪痕とか、
そういった現実は一切なく、勝った国側の喜びと平和のシンボルだけが
映像で流されます。

娯楽という映画を通じて、戦争を美化する 「洗脳」 をしているんじゃないの? 
と思わせるほどの見事な出来映えです。
それを見た某国民は、戦争映画に感銘し、戦争とは平和を守るために必要な
善なる行為などと本気で思ってしまうらしい・・・余りにも危険すぎます。

世界警察を名乗る某国は、映画さながらのシナリオで人々の関心を引き、
正義という名のもとで自国経済の活性化のため、今にも宣戦布告を
仕掛けようとしている・・・そんな現実。
現代が、余りにも危険な情勢にしか思えて仕方ないのは僕だけだろうか?
そして、この時代に生きている僕に、一体何が出来るのだろうか?
せいぜい僕のメッセージを文字にして、伝えることしかできない
・・・そんなことを思う今日という日のこと。



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