つばめ飛翔

 3月13日、九州新幹線が部分開業を果たした。これに乗るべく、3月22日、横浜を発つ。

 7時台の横浜市営地下鉄は通勤ラッシュの真っ只中。比較的混んでいない後ろよりの車両に乗る。上大岡で京浜急行に乗り換え、品川を目指す。上大岡かから横浜までの快特、特急は全体的に混雑しているので大きな荷物を持って乗るのは大変である。という訳で、この区間は普通列車に乗る。これも後ろの車両が空いているのでそこに乗る。横浜でも同様に、相鉄乗換えが便利な後ろの車両が空いてしまうのでそこに乗る。後ろばかりに乗って品川に到着。そこから東京に向かうのだが、山手線の乗ると205系が間違いなく来るので京浜東北線を選ぶ。待っていると、山手線のホームにほら来た、205系。なんでか知らんが私は山手線の205系に好かれているらしい。

 京浜東北線に乗って東京に着いた。そのまま新幹線ホームに上がる。ここから一気に九州を目指す。目の前の新幹線が発車して入れ替わりに入ってくるのが私の乗車する新幹線、のぞみ11号である。車両は500系。ご存知のとおり世界最速で走る電車であります。

 ホームの先端に行くと大雨になっている。雨の中入線する列車を撮影し、サンドイッチと飲料水を買って車内へ。荷物を置いてびしょ濡れの窓の外を眺める。丸い500系の窓には直に雨が当たっている。

 手元の時計で9時50分30秒、磁励音を発しながら東京駅を滑り出す。車窓右手に185系が併走する。寝台特急「富士」と離合して、早くも次の停車駅、品川である。9時58分5秒、品川を発車して本格的な高速走行に入ってゆく。窓の水滴が面白いように後ろに飛んでゆく。10時3分、多摩川を渡り神奈川県へ、程なく日吉の二つのトンネルと大倉山のトンネルを抜けて3番目の停車駅、本来なら私の新幹線での最寄駅である新横浜に停車。4番線だった。ここで座席はほぼ埋まった。ここから名古屋まで長丁場である。

 新横浜を手元の時計で10時10分15秒に発車。時刻表では9分発車になっているが、おそらく乗降に時間がかかったのだろう。やはり乗降の多い駅で1分停車は無理があるようだ。列車はぐんぐんと加速して、大和のトンネルを抜け相模川を越え、10時24分15秒に小田原を通過。いくつかのトンネルを抜け、29分15秒、熱海を通過。新丹那トンネルを貫き34分5秒に三島を通過、暫らくすると茶畑が見えてくる。静岡らしい光景だ。

 10時40分55秒、新富士駅を通過。このあたりからどうやら雨が止んだようである。高速で走っているので、風圧で水滴が飛ばされて実際に降っているのか居ないのかは音でしかわからない。相変わらずパルプ工場からでる煙が空を覆っているようである。東静岡ではレール運搬車を見ることが出来た。と言っても車庫の中だが、やはり機関車がカッコイイ。走っているところを見てみたいものだ。そんなわけで47分50秒に静岡通過。かなりの速度が出ているがこの車両にとってはまだ余裕がある。300系のように無理している感じがしない。大井川を渡り、茶畑の中を駆け抜け、掛川を通過。併走する東海道本線を走るEF66が牽引する長大貨物列車をあっという間に抜き去り、かつての超特急「燕」が駆け抜けた鉄路を横目に今日の超特急「のぞみ」は西進を続ける。

 天竜川を渡って程無くすると浜松にアプローチ。急カーブをきって浜松を通過し、工場への引込み線を右手に見て浜名湖を目指す。間もなくこのあたりでは、「浜名湖花博」が開催される。5000種以上、500万株の花々が咲き誇るのである。見に行く価値があるかもしれない。

 愛知県に入り、何度見ても懐かしい豊橋駅を通過。丸1年、ムーンライトながらを利用していないので、最近は豊橋駅の世話になることはない。浜松あたりから天気が良くなってきた。晴れるのも間もなくだろう。と思っていると、とたんに悪化する。ウトウトとしているうちに三河安城を通過。気付けば間もなく名古屋。話題になった警察塗装の名古屋鉄道が走っていった。やがて2つの白い巨塔が現れた。名古屋駅に到着である。あれま、大雨じゃん。

 名古屋駅も1分停車の予定が乗降に時間がかかり1分遅れの11時35分に発車。庄内川を渡って名神高速道路と並んで走る。43分に岐阜羽島を通過。ここから関ヶ原を通って米原へ。東海道本線を走る313系2両編成の詰め込み列車をあっという間に抜き去る。関ヶ原を駆け抜けて52分、米原を通過。ボケーっと長い米原〜京都間を過ごす。近江鉄道か何かの線路が併走している。ここを走る列車は、新幹線に何度も乗ってるが1回しか見たことがない。間もなく京都。高架下に集結した線路の1本には、北陸旅行で飽きるほど見た特急サンダーバードが走っている。京都駅にはほぼ同着のようだ。

 京都を12時12分40秒に発車。今回は時刻どおりに発車した。列車内から遠くを眺めれば、野洲あたりだろうか、車両基地があった。じっくり眺める間もなく列車は走ってゆく。暫らくすると中途半端に造りかけの高架を潜る。そう、これが鳥飼基地が近づいた合図。車窓右手には鳥飼基地が広がり、手前にはひかりレールスターが2本、奥のほうには16両編成の列車が何本もある。大阪モノレールを潜った時点で基地は終わり。間もなく新大阪である。

 12時29分0秒、新大阪を発車。思ったほど席は空かなかった。雨はまだ止まない。21番線から本線に入り、上り線との間にある車庫を通り過ぎれば上り線と合流。渡り線を過ぎれば山陽新幹線での高速走行の開始である。500系が真価を発揮するのはここからである。東海道より高規格な線路上でどんどん加速し、あっという間に時速250km超の世界へ入っていった。しかしながら35分頃に六甲トンネルに突入し、闇の世界を走る。新神戸に停車し、42分に定刻発車。再びトンネル内で時速250km超の世界へ誘われる。やがてトンネルを抜け、また入り、抜けては入り、48分に西明石を通過、車窓右側には東海道新幹線開業後の特急「つばめ」が駆け抜けた山陽本線が見える。JR西日本が誇る新幹線並みの出力の電動機を持った新快速用電車223系を抜き去る。西明石から姫路の間に2本を抜いた。

 姫路駅が近づいてきた頃、車両が唸りを上げ始める。そう、ここから500系の真骨頂、世界最速の時速300kmの世界に入っていくのである。55分に姫路を通過。ほぼ同時に加速が終わる。時速300kmの世界に誘われたのである。揺れが大きい。台車はもう限界かもしれないが電動機はまだ余裕がある。ここまでの加速度は驚異的である。以前2回乗ったことがあるが、いずれも夜だったので景色はあまり見えなかった。今回は昼間だ。景色がものすごい勢いで後ろへ流れてゆく。架線柱の流れは圧巻だ。1秒に2本は後ろに流れてゆく。しかしながら、前回乗ったときのように、「世界最高速で走っています。」という放送は無かった。車端部の表示機にはその旨が記されていた。しかし遠い。目が悪いので見えない。写真を撮りたいのだが・・・。

 間もなく相生だ。去年の9月に時速300km/hで走る500系を撮影した場所である。ところがブレーキがかかり減速が始まってしまう。大雨のためだろうか。物足りない速度で13時59分に相生を通過。この後も速度が上がらず、そのまま走りつづけて13時15分、2分遅れで岡山に到着した。発車も2分遅れの16分だった。岡山を発車した後は、新倉敷、福山、新尾道、三原を通過する。三原までは時折制限があるので時速300kmでの運転は長続きしない。三原を過ぎれば通常どおりの時速300kmでの連続運転になった。揺れが大きい。トンネル内では離線によるアークで時折トンネル内が明るくなる。なぜなら乗車しているのはパンタグラフの搭載されている5号車だからだ。そして、東広島を通過する13時41分頃、再び表示機に現在の速度が表示された。


最高速度300km/h(英語字幕スクロール)

 間もなく広島である。列車は減速をし、降車に備えて車内は慌しい。芸備線に並んで走っている新幹線の引込み線には、300系が眼光鋭く出番を待っていた。広島では12番線に停車した。改正前は11番線に停まっていたのだが。それはともかく、やはり2分遅れである。停車時間を出来るだけ押さえているのが判ったが、それでも広島を2分遅れで発車した。天気が良くなってきた。新岩国を通過するころ、時速300kmに到達。14時2分に通過。ところが次の徳山に停車する。停車時間を短縮していたにもかかわらず、2分遅れ。どうも運転が緩い。晴天になっているにもかかわらず遅れが取り戻せない。それどころかむしろ広がってる。

 徳山を発車した。徳山の車窓左手、海に大型船舶が泊まっているこの雰囲気が私は好きだ。またトンネルを出たり入ったりを繰り返しながら時速300kmの世界へ。14時23分45秒、新山口駅を全力疾走で通過、14時28分35秒に厚狭駅を同じく全力疾走で通過、14時34分25秒、新下関を通過して新関門トンネルに突入する。トンネル内を約5分間、途中から減速を開始し、トンネルを出てすぐに小倉に到着した。上りの500系のぞみが反対側に停車した。次は終点、博多・・・。

 小倉をやはり2分遅れの14時41分に発車。十数分で博多に到着する。途中からまた大雨になってきた。列車は影響なく走りつづけるが、結局2分遅れのまま14時57分に博多に到着。500系「のぞみ」なのに700系「のぞみ」と所要時間が変わらないという結末だった。

 博多でとりあえず郵便局で夏目漱石を補充してとりあえず博多に来たら1度は行くラーメン屋へ。メンマラーメンと替え玉で600円。リーズナブルな価格である。今日の店員お応対はちょっと問題があったが・・・。

 博多駅7番線から特急「リレーつばめ」が発車する。電光掲示板の行先は「鹿児島中央」。もちろん新八代で乗り換えなので、本来の終点は新八代である。何やらヲタクらしき人がウヨウヨ。つばめレディーにご自慢の鉄道写真を見せまくる奴。ある意味ストーカーじゃん。怖いよ。この他にも篠栗線の813系でフィーバーしてる3人組。いったい何が面白いんだか。というか無駄にニヤニヤしすぎ。気持ち悪いってばさ! それでもって発車間際に列車から出たり入ったりするんじゃねぇ! 他の乗客の迷惑になるだろうが! これだからマニアは・・・!


博多駅案内表示

 リレーつばめ登場。写真を撮って車内へ。セミコンパートメントを通り抜けて席へ。4号車だ。車内のデザインは良いけど網棚がないじゃん。この荷物をどうするよ。とりあえず床置きしかない。というわけで、広いシートピッチに助けられ、床に荷物を置く。隣の席のオッサンがなんか嫌だな。備品の扱いが乱暴だ。椅子を揺らしすぎ。こっちまで迷惑だよ。

 乗ったはいいが眠いので寝てしまった。気付けば大牟田。荒尾から先は行ったことが無い。が、寝ていたのでよく分らん。車掌さんが新人なのかどうだか知らないが、アナウンスがぎこちない。よく詰まる。頑張ってくれい。

 新八代到着の7分前にチャイムが鳴り「まもなく新八代・・・。」オイオイ、あと7分もあるぞ。

 Vの字が美しい新八代の駅が車窓左手に見えた。列車は本線を渡り、上り線から新幹線ホームへと上がる線に入る。大きく右に曲がってから上りながら左に曲がる。そして新八代へ滑り込む。車窓右には美しい白い列車が停車していた。800系新幹線電車、つばめである。

 乗り換え時間たった三分。乗り換えるだけなら余裕だが、写真を撮ろうとするとそうはいかない。荷物を持って先頭まで走り、顔をとろうと思ったが、安全策が邪魔くさく、撮れない。並びを撮るなど障害物だらけで不可能。いっぱいいっぱいできわどい写真を撮っただけでもう発車時刻。対面乗り換えの写真など撮る余裕がない。3号車の席だが1号車に乗り込んでちょうど扉が閉まる。危ない危ない。


九州新幹線つばめ

 席に着くまえに案内放送が始まってしまった。加速もすごくいい。内装もいい。基本的な部分は700系と同じ。座席や床、カーテンなどが違うだけだ。車内デッキ部は漆色の赤の扉に黒い内壁、客室との仕切りはクスノキ製。洗面所はカーテンの替わりに八代イグサの縄のれんで、ブラインドも木製で、座席も木材をふんだんに使っている。車内は新幹線規格にも関わらず、2&2シートで幅が広い。

 全体の7割がトンネルなので、基本的に外は見えない。長いトンネルを抜けて一瞬外が見えたと思ったらそのまままた真っ暗になってしまう。それが大体のパターン。新水俣を通過。なんだか簡素すぎる。本庄早稲田級の駅。出水も同様だった。車内チャイムも洒落ていて良い。僅か40分弱の乗車である。長大トンネルと北陸新幹線以上の急勾配、さらには東海道新幹線並みの急曲線をもつ路線であるが、ひどい揺れがあるわけでもなく、速度が上がったり下がったりするわけでもなく、快適な40分間だった。斜張橋の川内川橋梁を渡ると川内に停車。なんとなくみなとみらい線の新高島を思い出すような感じの駅だった。川内を出て約10分で終点の鹿児島中央。薩摩田上トンネルを抜けてすぐに駅がある。鹿児島本線、日豊本線と垂直に交わるように新幹線のホームが造られている。

 鹿児島中央駅、なんとなく新幹線品川駅に似た印象を受ける。安全柵があるし、コンコースが広くて綺麗だし、文字は大きめだし・・・。つばめのPRポスターが何枚も貼られている。九州出身の黒木瞳さんが映ってる。付き合うならこんな感じの外見の人がいいなぁ〜などと思いながら駅を歩き回る。お土産やを物色・・・。買いたいものが山ほど・・・。

 もう日が暮れていたのでホテルへ行くことにした。しかしながら逆の出口を出てしまったので大回りしてホテルへ。日豊本線の踏切を渡ってすぐにホテルがあった。チェックインした後、夕食を食べに出かけた。歩き回り、駅のビルの中にあった黒豚トンカツの店で、指宿名物らしい黒豚トンカツカレーなるものを食べた。かなり旨い。

 食事が終わり、ホテルへ戻り1泊。あまり寝つきがよくなかった。

 朝起きて朝食を食べ、チェックアウト。コインロッカーに荷物を放り込んで、まず大久保の利ちゃんの銅像を見に行く。利ちゃんが終わったら西郷どーんに会いに行く。途中、ザビエル大先生の記念碑なんぞを見つけた。さらに行って公園の近くの小高い丘の上、西郷どーんが堂々と立っていた。写真を取ったがカメラの調子が悪い。


西郷隆盛像(西郷どーん)

 歩道橋を渡ってどこぞで見たような犬が居る。どうやら設定によると、上野にある西郷隆盛像からはるばる見に来たようだ。さらに歩いていき、潮風が香るほうへと歩いていくと桟橋を発見。ここから桜島へのフェリーが出ている。片道なんと150円の激安(?)だったので乗ってみた。

 フェリーの上部に乗っていたが風が凄い。向かい風なので一番前に居ると息が出来ないほどの強風である。水蒸気を吹き上げる山が見る見る近づいてくる。あれが桜島だ。


桜島

 桜島の桟橋に到着。1時間ほど時間がある。水蒸気を吹き上げる山を撮影しようとカメラを出したが、どうも調子が悪い。目が悪いのでオートでピントを合わせているのだが、広角レンズを使うと一向にピントが合わず、フォーカスリングが右に左に延々と回り続け、一向にピントが合わない。かといってズームレンズを使うとファインダーに収まらない。結局手動でピントあわせをして撮影した。そのままレンズカバーを着けてカメラを首にかけて歩いた。暫く歩いていると、突然レンズカバーが外れる。外れて落ちるだけなら良かったが、落ちてなおコロコロと上手い具合に転がってゆく。それだけならまだ良かった。溝の網に向かってまっしぐら。「ヤベー!落ちるー!!」 と思ったが、上手く網をすり抜けて行った。 ホッとして拾おうと手を下げるとその前でいきなりUターンして、また溝に向かってまっしぐら。そして見事にホールインワン!! この瞬間、カメラの買い替えを決意した。(笑)

鹿児島でもらった地図をもとに歩き回った。海辺の遊歩道は溶岩が織り成す芸術の宝庫。光景はまさに別世界。黒い岩肌が訪れる人を威圧する。黒い海岸線の中、遊歩道はどこまでも続く。あまりにも続きすぎて時間ギリギリに。途中に見つけた帰り道を通って桟橋へと戻っていった。


袴腰烏島溶岩探勝路の光景

 鹿児島の桟橋に着き、近くのラーメン屋で鹿児島ラーメンを食べた。といっても、この店の店主は博多出身らしく、博多ラーメンっぽい鹿児島ラーメンに見えた。店主と常連さんが甲子園の話で盛り上がっていた。この日は春の選抜高校野球の開幕である。

 汗だくになりながらラーメンを食べ、そのまま鹿児島駅へ歩いていった。鹿児島駅から日豊本線ではなく、路面電車に乗って鹿児島中央へ。心地よい音を立てて路面電車は走っている。

 鹿児島中央駅でお土産とDVDその他のグッズを買いまくって、コインロッカーから荷物を引っ張り出して新幹線ホームへ。既につばめ50号が入線しており、扉が開くのを待つのみであった。

 14時16分50秒、つばめ50号発車。チャイムが鳴り、案内放送と、4ヶ国語の自動放送が入る。列車は薩摩田上トンネルの中。途中で「つばめレディ」がキャンディーを配っていた。14時27分、何も停まっていない川内車両基地脇を通過程なくして川内駅に停車し、すぐに発車。川内川橋梁を渡って暫くしてトンネル区間に突入。だんだん眠くなってウトウトとしている間に列車は出水に到着した。14時40分だった。出水を出て、もう眠気がひどいので寝ていたが、すぐに目が覚める。わずか6分しか経っていないのにもうすぐ新水俣。14時48分に到着した。その後はもう眠気が限界なので熟睡・・・。

 気づけば新八代。乗換えのリレーつばめ50号、切符は持っていたが、乗るか乗らないかは迷った。並んだ写真も撮りたかったのだが、桜島のカメラ事件で広角レンズを使う気がなくなっていたので、並んだ写真はカメラを買い換えてから行く九州合宿で撮影することとして、とりあえず熊本へ向かうことにした。

 リレーつばめ50号に乗った。どうやらつばめとリレーつばめの特急券を1枚で買うと、同じ号車の同じ席にしてくれるようだ。すぐにリレーつばめは発車し、左手に見える新幹線と在来線の接続線路、つまりフリーゲージトレインの試験線を眺めた。暫くして、線路幅が標準軌から狭軌へ変わった。

 あまり記憶が無い。やっぱり寝ていたんだろう。まもなく熊本。左手には建設中の九州新幹線の高架が立っていた。熊本では、前に増結するため、停止信号で停車。続いて誘導信号に従ってゆっくりと前進して行き、3分ほどかけて連結作業を完了させた列車は、ようやく扉が開いた。

 熊本で自販機でジュースを飲みながら、古めかしい機関庫を眺めていた。レンガ造りでとても趣深い。駅から外に出て、観光案内所で市内電車の一日乗車券を購入、早速毎度お馴染みコインロッカーに荷物を放り込んで、路面電車に乗車。市役所前で降りて熊本城へ向かった。入り口近くで加藤清正大先生がお出迎えをしてくれた。500円払って中に入る。ところがあと1時間で閉門。天守閣は30分しかない。入ったのは一番下の入り口。急いで上に上がっていくが、あちこち工事していてこの余裕時間では回ることが出来ない。そんなわけで、天守閣内部の見学はあきらめ、天守閣を延々と外から眺めていた。石垣は武者返しと呼ばれる反り返っているので、独特の雰囲気をだしていた。


熊本城 反り返っている石垣に注目

 閉門時刻ぎりぎりに門を出て、坂を一気に下って堀を回って市電に乗る。やってきたのは超低床電車。乗車ホームと列車の床面に高低差がほとんど無い驚異的な構造の列車である。かなり混雑している。熊本駅前で下車してコインロッカーから荷物を引っ張り出し、ホテルへ。ホテルは二本木という電停の近くなのだが、熊本駅前から1つなので歩いていった。しかしながら、信号がなかなか変わらず、途中で市電に抜かれる。

 ホテルにチェックインして荷物を置き、夕食は熊本ラーメンに決定。問題はどこの店で食べるかだ。いつぞやか、雑誌に「黒○」とかいう店が美味しいと載っていたが、丸の部分が思い出せない。思い出せても場所が分からない。と、そこで目に付いたのはこのホテルに常備されているらしい電話帳。ここに載っているかもしれないと思い、開いてみると、「黒亭」というのが近くにあるのが分かった。そこかもしれないと思い、行ってみることにした。

 名前と住所は分かった。しかし場所は待った分からない。とりあえず町名が同じなのでこの付近なんだろうと思い、歩き回っていると見つかった。ラーメンを頼んで食べた。とりあえず美味しかった。結構混雑してたので人気店なのかもしれない。

 食事を終え、市電に乗って移動。水前寺通りあたりで降りてみようかと思ったが寝てしまい、気づけば終点の健軍町。降りてみたが何も無い。すぐに戻る。水前寺通りで降りるかと思ったが、やめてそのまま乗り続ける。熊本城から戻るときに乗った超低床電車とは全く逆で、吊り掛け式の古い電車。吊り掛け式特有の低い唸りが心地よく響く。気分が良かったのでそのまま乗り続け、終点の田崎橋まで乗ってしまった。

 再度熊本駅まで行き、コンビニで買い物をしてホテルへ戻り、疲れ果てて眠りに着いた。

 朝起きて、朝食を食べる。ホテルに宿泊するときは決まって洋食を選ぶ。玉子焼きが出た。しかしながら半熟。それも半熟の半熟。フニャフニャ。食べようとしたら途中から切れて、落ちる。靴の上に落ちる。靴が玉子だらけになる。最悪。

 朝食が終わるともう出発準備。あの広角レンズは鞄の奥深くに封印した。鹿児島本線の列車が発車するまで時間がある。空き時間を利用して豊肥本線に乗ってみる。なんとなくなんとなく列車は817系。車内先頭部が黄色い。九州らしい車内の列車だ。往復予算450円。どこまでいけるか? 片道220円で乗車。220円区間の東海学園前で降りてみた。広い学校があるだけだった。そしてすぐに220円の切符を買って引き返す。

 そのまま鹿児島本線の銀水行きに乗って大牟田を目指す。たいして速度が出ているわけではないが、結構な速度に感じる。シルバーシートで熟睡。目が覚めると小さな駅に停車中。木葉駅というらしい。どうやら特急の通過待ちのようだ。さすがに特急街道。やって来たのは特急「有明」。かなりの速度で通過していった。


特急「有明」

 大牟田の手前、荒尾で下車した。ここから始発の快速に乗ろうという魂胆である。しかしそれまで1時間近くあったりするのだが・・・。とりあえずトイレに入り、改札外の売店を物色したりして時間を潰した。しかし売店にはめぼしいものが無いので。ホームで全力疾走している特急を撮影したりした。
 さて、始発の快速がやって来た。811系だ。813系に乗りたかったが残念。しかしながら車内設備はあまり変わらないのでまあいいとしよう。博多までの乗車である。

 荒尾を出て、次の大牟田を出て、それでも乗客はあまり居ない。例のごとく昼寝タイムになるわけだが、二日市あたりまでほとんど乗客の増加は無かったような気がした。いつの間にかほぼ満席になり、博多に到着した。博多で博多ラーメンを食べて遅い昼食が終了。

 そして例のごとくコインロッカーに荷物を放り込んでおき、そのまま福岡市営地下鉄で天神へ向かった。列車は303系だった。反対側には103系。3度目の乗車だが、未だに福岡市営地下鉄の車両を見たことが無い。3駅目が天神。横浜市営地下鉄や東京の地下鉄は番号で駅を区別できるようになっているが、福岡市営地下鉄は絵で区別できるようだ。

 地下鉄天神駅から西鉄福岡駅まで歩いてゆき、西鉄の特急列車で西鉄二日市へ向かった。特急と言えど特急料金は不要である。西鉄福岡を出ると次の薬院に停車し、その次が西鉄二日市である。せいぜい15分程度の乗車だ。西鉄二日市で降りて、大宰府線に乗り換える。大宰府駅で下車し、3月旅行で恒例の大宰府天満宮に向かう。

 太宰府天満宮におまいりして、おみくじを引いてみる。50円だ。投入口に入れてからおみくじの入った箱のふたを開けて、自分で選んで取る方法である。そして、取ったおみくじが 「1番 大吉」 。もう、どこを見てもいいことしか書いていない。本当にこうだったらものすごい幸せだ。その後、バイト先の学生さんへお土産として「学業成就」のお守りを買った。3人分だがえらい高価だ。まあ、縁起物なんでケチるのはやめよう。

 帰り道、参道の商店をいろいろ見ていると、ありがちなご当地「キティちゃん」「ドラえもん」「加トちゃん」を売っている店があった。かなり反則だ。なぜなら九州中の「キティちゃん」「ドラえもん」「加トチャン」が集合しているのだ。それだけじゃない。北海道限定のものとかも売っている。一体何なんだコレは! 反則だ!

 そんなこんなで大宰府を後にして、西鉄二日市へ。そこから急行に乗って西鉄福岡へ戻る。初めて来た日と同じパターンだ。それでもってやって来た急行も、元特急用車両で同じパターンだ。何度見てもなんとなーく間が抜けた顔をしている。さあこいつで天神にGO!

 西鉄福岡から天神へ。天神から地下鉄で博多へ。ここでようやく福岡市営地下鉄の車両に乗ることが出来た。コインロッカーから荷物を引っ張り出して、ホテルに向かう。ちょっと離れていて、線路沿いを歩いていたのだが、異様なほどバスが行列を作っている。ここはバス乗り場ではない。なぜかというと、この先にバスの車庫があるからだった。バスの車庫を過ぎると、バスは全く居なくなった。そこから暫く行くとホテルに着いた。チェックインして荷物を置いて再度外にでるいつものパターン。

 博多駅から190円の切符と100円の特急券を買う。分かる人には分かるこの組み合わせ。290円で乗れる新幹線、つまり博多南線だ。と言うわけで博多南へ向かう。列車は100系6両編成のK編成でフレッシュグリーン仕様。座席は帰宅する人たちで埋まっている。先頭車のデッキで10分ほどの乗車を楽しむ。ほどなく博多南だ。確か分岐器を右に渡って坂を下って高架下を潜って制限30で到着だったよな。・・・あれ、もう車庫が見えるぞ。高架潜ってないし、線形が変わったのか? とまぁ、なんだか分からんうちに博多南に着いたわけです。

 博多南に着いたはいいけどもうすぐ日没。写真を撮るのはおそらく困難でしょう。とりあえず博多総合車両所を見るため、南側へ向かうことにする。博多南駅を出て右側には、突如途切れている九州新幹線の高架橋がある。博多開業から30年、ずっとこの状態が続いているが、あと10年くらいでここも鹿児島中央とつながる。
 駅南側に回りこんで留置線を見ると、たくさんの100系が数珠繋ぎで並んでいる。一番道路に近い場所にはダブルデッカー車が置かれていた。以前来たときにはWIN350が停まっていた場所だ。どこかに保存するのだろうか? その100系の裏ではフレッシュグリーンの0系が出庫し、本線へと出て行った。
 日が暮れてきたので早めに帰ることとする。


留置されているダブルデッカー

 博多南線博多行きが発車するまであと10分。改札が開かないのでコンコースに人があふれる。なんでも通勤ラッシュ時間帯は、列車が入ってくるまで改札が開かないので、コンコースに人が入りきらず、階段下の公道まで人が並んでしまうとのことである。

 列車の整備が済み、改札が開く。今度は6両編成100系のK編成で、オリジナル塗装の列車だった。2号車に乗車したが、シートがなんとグリーン車のものと思われる豪華仕様。とても快適である。博多南を後にして博多へ向かう。

 博多に着いた。時間を見てくだらないことをやってみる。去年来たときと同じ時間帯なので、去年と同じコンビニで同じ弁当を買って、博多駅のホームに入って同じホームから同じ列車を眺めながら弁当を食べるというもの。で、寝台特急「さくら・はやぶさ」を見ながら遅い夕食をとる。列車は若干遅れていたが、無事に東京へと向かって走り去って行った。

 その後、特急「リレーつばめ」を眺めてホテルに帰った。明日はついに帰る日である。

 4日目の朝、ホテルの朝食を食べる。このホテルは宿泊費を現金払にすると朝食を無料サービスにしてくれる。良心的だ。

 乗車列車である9時49分に博多駅を出発する。早めにホテルを出て博多駅へ向かう。9時ごろに博多駅の新幹線ホームに上がる。東海道と違い、列車の設定本数はそんなに多くない。なので、やってくる列車があまり無い。撮影できるものも少ない。反対側のホームにのぞみ501号が入ってきた。先頭車に黒丸が付いている。W1編成のようだ。程なく先行列車のひかり356号レールスターが発車する。そして、大して時間がたたないうちに私の乗車するひかりレールスターが到着した。乗車すると、付近は学生の集団に囲まれていた。あまり列車のシステムを理解していないようなので、どうやら沖縄の人々らしい。時刻どおりに列車は発車して小倉、新山口、広島、福山、岡山と停車して行き、岡山で沖縄の人々は降りていった。その代わりに、隣にはオバサマが乗ってきた。「すいません、この席はどこでしょうか?」「あ、隣のココです。」

 岡山を出て、姫路、新神戸に停まり、終点新大阪に到着。次に乗車する「のぞみ128号」は1時間ほど待つことになる。駅弁を買って、残ったフィルムを使い切るべく、20番線で撮影を行った。フィルムが切れたら引き上げてのぞみ128号が来るのを待つ。コンコースをウロウロして時間を潰す。

 のぞみ128号が到着した。乗車口を間違えたため、座席が遠い・・・。始発駅なのにほぼ満席。結構な混雑である。京都、名古屋に停車し、空席は完全に無くなった。名古屋から新横浜までノンストップのため、車内は睡眠タイムである。私もほとんど寝てすごしていた。新横浜でほぼ3割が下車、品川で2割、そして終点東京に到着。旅は終わりを告げた。

戻る