E1系新幹線電車

 東北・上越新幹線の東京駅延伸時のホームは、1面2線しかなかった。 一方で中心部では地価が高騰して居住が難しくなり、居住範囲が徐々に郊外に広がっていったため、東北・上越新幹線の東京近郊では、朝ラッシュが常態化していた。 列車の増発ができない中での輸送力の増強を図る必要が生じ、結果として誕生したのがE1系である。

 E1系は1994年に登場、今までの200系と同じ12両編成ながら、全車両を2階建てとして、200系よりも定員を4割増加させることとなった。

 E1系はJR東日本では、いや新幹線という括りでも初めてとなる機構が多数盛り込まれた。 見た目で分かりやすいところでは、全車両が2階建ての新幹線であること。 車内に入ると、それまでの2&3シートも見られるが、自由席車では3&3シートが並んでいること。 電動車と付随車の比率が1:1、具体的に言えば、6両の電動車と6両の付随車で12両編成こ構成していること。 JR東日本の「E」を形式名に採用したこと。 JR東日本では初めてのVVVFインバータによる制御方式を採用したこと。 電動機出力は410kwの強力なものを使用したこと。 付随車には機械ブレーキのみで、高速時の通常制動では電動車の電力回生ブレーキのみが作動する機構をさいようしたこと。 などという点である。

 車体は車両限界をめいっぱい使った大型の車体となったため、200系で採用されたアルミは強度に不安があるために採用されず、鋼製となった。 車体窓は2列1組の0系初期車や100系に似た大窓を採用している。 先頭車はくさび形のダイナミックな形状を採用し、運転台部分はやや盛り上がったキャノピー型となっている。 車体が大型のためにパンタグラフカバーは搭載されず、通常の菱形パンタグラフが、車体に隠れるように、屋根より一段下がった場所に設置されている。 定員の増加に伴う乗降時間の増加を押さえるため、乗降扉は1050mmの幅広のものを全車両に採用している。

 制御装置はJR東日本では初めてのVVVFインバータ制御を採用し、GTO素子を用いている。 付随車が半分となるために電動機の出力を410kwと強力なものを採用し、ギア比を3.63と加速側に振って走行性能を200系と合わせている。 ブレーキは回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用しているが、6両の付随車には電気的ブレーキは搭載されず、低速時に動作する機械式ブレーキを搭載して、高速時は電動車の回生ブレーキのみを用いて全体を減速させる遅れ込め制御を採用している。 

 定員増加に主眼を置いたE1系では、座席が特徴的である。 1号車から4号車の2階部分の座席は、新幹線では1000形の試作車で試みられていた3列+3列シートが営業列車として初めて採用された。この部分はリクライニング機構がなく、3列が一体化しており肘掛けもない。 2号車から4号者のデッキ部分には、跳ね上げ式の補助席が取り付けられている。 床下が使えない分、車端部はほとんどの車両が機械質となっているが、4号車と5号車の連結面寄りには14席の平屋席が設けられている。 グリーン車は9号車から11号車までの2階となっている。 指定席車両では、通常の2列+3列のシートを採用しているが、不思議なことに1階と2階では、左右が逆になっている。 車椅子設備車は8号車と9号車の2階で、階段に昇降装置が設置されている。また、東京駅での折り返し時間短縮のため、座席の自動転換機構が取り入れられた。 

 車内に階段が多く、ワゴンサービスが困難なために、2・6・10号車に自動販売機を設置、8号車に売店を設置した。 2号車と6号車には加温式の自動販売機が設置され、弁当を発売していたが、現在は売店のみの営業で、ワゴンサービスの代わりに専用のバケットを持ったパーサーが車内を巡回するように改められた。

 特殊な車両な故に、通常の新幹線では2両に1箇所あるトイレを規則通りに設置することができず、1・4・5・8・9・12号車の設置となっている。 気を付けないと2両歩いて行く事になってしまうので注意である。

 登場時は上半分がスカイブルー、下半分がシルバーグレー、中央にピーコックグリーンのラインが入ったカラースキームで登場した。 2003年に座席を全てE2系と同等の設備に取り替えた際に、上半分が飛雲ホワイト、下半分が紫苑ブルー、中央に朱鷺ピンクの帯を配したカラースキームに変更された。

 当初からE1系が運用に入る列車には、”Max”の愛称がついており、車体側面にはロゴも入る。 これは、「Multi Amenity Express」の略である。 後にE4系で運転される列車にも冠されることとなった。 なお、この愛称が採用される前は、「DDS(Double Decker Shinkansen) E1」という愛称があり、ロゴも入っていた。 またリニューアル後は朱鷺のイラストロゴも追加された。

 当初は東北新幹線で運用されていたが、現在は上越新幹線のみの運用になっている。 また2012年以降は順次運用を離脱し、廃車される予定となっている。

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