現金輸送荷物車<マニ30>搭載アンテナの研究2

  以前無線通信の興味?から、マニ30に搭載されているループアンテナの使用用途を推測

 しました。その後もあのアンテナ群に対する興味は無くなった訳ではなく、ネット上に掲載

 されている画像を拝借?して自分なりの推測を続けていました。「果たして警備用(警察用)

 無線のアンテナはどれなんだろう・・・」今回違う角度から謎に迫ってみました。

  マニ30に搭載されていたアンテナ群は、逆L型アンテナ2基,ループアンテナ1基,列車

 無線Bタイプアンテナ1基,自動車(移動)電話用アンテナ1基などで構成されていました。

 自動車(移動)電話用アンテナ    列車無線Bタイプアンテナ

      (画像はE257系搭載のもの)        (画像は113系搭載のもの)

             マニ30アンテナ配置図(各種資料による)

  この中で使用用途がはっきりしていないアンテナは、以前周波数を推測したループアンテナ

 と主に私鉄などで良く列車無線用に使用されている逆L型アンテナの2種類です(下記画像の

 ようなアンテナが車両両端に設置されていた:アンテナ類は全て小樽搬入前に撤去済み)。

     

        マニ30に搭載されていた逆L型アンテナ:第一荷物室側

   (小樽交通記念館に展示されているマニ30の画像にアンテナを加筆したもの)

  この逆L型アンテナが、列車無線用の用途に使われていた可能性が無いか、今一度JR(国

 鉄)の列車無線の変遷も含めて、調べてみることにしました。

  列車無線導入のきっかけになったのは、1962年(昭和37年)に常磐線三河島駅付近で

 発生した脱線衝突事故でした。実際に列車無線が使用開始されたのは1966年(昭和41年)

 です(常磐線に導入)。当初は輸送指令から駅へ電話連絡し、駅から列車へ連絡をするという

 連係指令体制がとられていました。使用していた無線に関する詳しい資料が無いのですが、い

 ろいろな資料から推測するに、乗務員無線(現在のCタイプ無線)が使われていたようです。

       

       A・B・Cタイプ列車無線導入前の指令体制(1966年〜81年)

  現在のように指令から直接列車へ情報を伝達する直接指令体制がとられるようになったのは

 1981年(昭和56年)山手・京浜東北線に導入されたAタイプ列車無線(複信方式)です。

 その後1986年(昭和61年)にBタイプ列車無線(半複信方式)などが本格的に導入され

 ることになります。

       

             現在の指令体制(1981年〜現在)

 (参考文献:小学館入門百科シリーズ53「鉄道なんでも入門」,電子情報通信学会誌

  1987年10月号,1989年10月号,各種ネットHPなど)

  これらの情報をもとに考えてみると、マニ30が製造された1977〜78年とBタイプ

 列車無線が本格的に導入された86年の間に約10年のブランクがあります。この期間で例の

 アンテナが使われていたことも考えられますが、それに該当しそうなアンテナの画像などを

 見かけることはありません。このような結果を踏まえ、今回はこの逆L型アンテナを警察無線用

 アンテナと仮定して、調べることにしました。まず、アンテナの使用周波数を調べることから

 開始しました。注目したのは、アンテナの設置されているグランド板の大きさです。

    アンテナの構造(上から見たところ)

  これは過去に周波数とグランド板の大きさが関係する・・・という資料を見た記憶があった

 ためです。しかしそれに関連する文献が見つからず、またその他のアンテナで使われている

 グランド板の大きさと比較するなどしてみましたが、結局周波数を特定することは出来ません

 でした。次の手段は、アンテナそのものを特定することを行いました。特殊な形状・用途の

 アンテナであるため、そう多くのメーカでは製造していないものと考えられます。業務用アン

 テナ大手の日本アンテナ,八木アンテナなどのHPを確認していきました。そうしたところ、

 八木アンテナの150/400MHz帯共用列車無線用空中線「VWH−41530G」が

 形状など非常に酷似(多分ビンゴだと思います)していることがわかりました。

 ttp://www.yagi-antenna.co.jp/products/gyoumu/ressya.html(頭”h”抜きです)

 アンテナの仕様は以下のとおりです。

 ・使用周波数:150MHz帯の指定10MHz帯域,

        400MHz帯の指定20MHz帯域

 ・偏 波:垂直偏波

  アンテナは、150MHz帯と400MHz帯の2バンド対応,内部の整合回路で使用周波

 数の調整も可能と思われます。一応用途は列車無線用とのことですが、警察の周波数(マニ製

 造当初は148MHz前後,デジタル化後は155MHz前後)にも十分対応させることがで

 きそうです。このように状況証拠は揃ったのですが、このアンテナが警察用であるという確証・

 証拠がなく、それから2ヶ月ほど経った5月25日、その推測を確固たるものにする記事を

 目にすることになります。

 何気なく、購入したラジオライフ2005年7月号(三才ブックス刊)を見ていたところ、

 112ページの投稿記事に「埼玉県警の特殊移動現場指揮車?」と題したマイクロバスの画像

 が掲載されており、ルーフにはマニ30と同じ逆L型アンテナが2基搭載されているではあり

 ませんか。これにより、マニ30に搭載されている2基のアンテナも警察無線用のアンテナで

 ある可能性が非常に(限りなく)高くなったと考えます。車しかり、マニ30しかりなぜアン

 テナが必ず2基1セットで使われているのかは不明です(ただ単に2系統の無線に対応させ

 ているのか、アップリンク,ダウンリンクの周波数の異なる警察無線にそれぞれ独立させてい

 るのか…)。詳しいことが分からないため、非常に興味をそそられるところです。まったく

 バラバラな内容の資料が意外なところで繋がり、線となり謎の部分を炙り出してくれたそんな

 印象です。このアンテナについて他に情報がないか、さらに調べて行こうと思っています。

  このアンテナについて情報をお持ちの方がおられましたら、ご教授いただけないでしょうか。

 宜しくお願いいたします。

 

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