あの街この街 〜タイ バンコク


 今回は番外編ということで、タイのバンコク
 


 いわずと知れた、「微笑みの国」タイの首都である。人口は600万とも700万とも言われ、タイのみならずアジアでも有数の大都市だ。

 この街を初めて訪れたのは、2001年6月のこと。同僚のU君が結婚することになり、バンコクで行なわれる結婚式に招待されたので行ったのだった。日本人であるU君がなぜわざわざバンコクで式を挙げるのかというと、その結婚相手となる女性がタイの人だからである。タイでは、奥さんとなる人の居住地で結婚式を挙げるのが慣わしだとのこと。

 当時の拙者にとっては10年ぶりの海外旅行で、タイに行くのはもちろん初めてだった。U君とそのご両親とともにドンムアン空港(バンコク国際空港)に着いて飛行機の外に出た瞬間、南国独特のモワッとした熱気とともに、香辛料らしい匂いが鼻を刺激した。海外に行くとその土地によって「匂い」というものがあるが、タイのそれは一番特徴的な感じがする。

 空港に出迎えていた奥さん・・・当時は「奥さんになる人」だったが・・・とそこで初めてお会いし、彼女の運転するクルマに同乗させてもらってバンコク市内に向かった。
 市内へ通じる高速道路の沿道には日本企業の看板が数多く目立ち、走っているクルマの9割は彼女のクルマも含めて日本車ばかりで、ジャパニーズパワーの強さを実感したものである。
 やがて高速を降りてバンコク市内の一般道に入る。バンコクのメインストリートのひとつであるスクムビット通りの中央には、「スカイトレイン」と呼ばれる高架鉄道のBTSの橋脚が延々と続き、沿道には大きくてキレイなビルがいくつもある。また、日本でもおなじみのコンビニやファーストフード店もあり、このあたりは日本の大都市とあまり変わらない雰囲気だ。違うところといえば、あの複雑怪奇なタイ語が書かれた看板がアチコチにあふれているところであろうか。

 しかし、メインストリートから直角に分かれる「ソイ」と呼ばれる小道に一歩入ると、バンコクの素顔が見えてくる。ちょっとくすんだ感じの人家、コマゴマとした日用品を売る小さな雑貨屋、焼き鳥や果物などを売る屋台があり、下町らしい風情がある。

 タイに滞在中、そんなバンコクの街をU君と二人で、あるいは拙者一人でホテホテ歩いてみた。そこで「気付いた点」「日本との違い」は・・・・

●街角に自動販売機が全くと言っていいほど無い。自動販売機を見かけた
  のは、BTSの駅にある券売機くらいなもの。

●歩道が切れる部分の段差は、日本なら緩やかになっているが、バンコク
  ではそのような配慮は無い。日本にいるような感覚で歩いていると、うっ
  かり段差につまずいて転んでしまいそう。 

●暑い国のせいか、自転車に乗っている人がまずいない。

●電柱の間を渡る電線の高さが異常に低い。日本なら4〜5mくらいの高さ
  があるが、バンコクでは2mくらい。ちょっと手を伸ばせば触れられるくらい
  である。下手すると感電しそう・・・。

●一年中暑いところなのに、冷房が無い路線バスがたくさん走っている。

●車掌が乗務している路線バスが走っている・・・・というより、ワンマンバス
  は無いようだ。

●バスの運賃は冷房車と非冷房車で違う。

●バスの正面には行き先でなく系統番号しか表示していない。したがって、
  どの系統がどこを通っているかを知らないとバスに乗れない。

●バンコク市内を走るタイ国鉄の鉄道路線は電化されていない。

●犬を散歩させている人がいない。

●街の中をが平然と歩いている。

●野良犬はみんな痩せていて、覇気がない。

●野良犬は多いが、なぜか野良猫はほとんどいない。

●タクシーはカローラクラスの小型車が大半で、クラウンクラスの大型車は
  まず無い。

●道路には横断歩道がほとんどない。

●マクドナルドの前に立っているドナルド人形は合掌している。


 ・・・とまぁ、日本と違うところがあまりにも多くて、ちょっと面食らうところも多いが、なかなか面白い街だ(^^;

 バンコク市内の観光スポットは、やはり『ワット・ポー』であろう。巨大な黄金の涅槃仏が横たわっている姿は圧巻である。

 ショッピングなら、BTSチットロム駅近くに大型ショッピングセンターがいくつもある。言葉に不安があるのなら、バンコク伊勢丹がいいだろう。日本語の館内案内図があるし、日本人の店員さんもいる。
 観光客向けでない店なら、その伊勢丹の向かいにあるディスカウントストアー「ビックC」や、BTSの南側の終点オンヌット駅のすぐ前にある「ロータス」がお薦め。いつも多くのバンコク市民で賑わっていて、汗っかきである拙者はバンコクに行く度にここで安いTシャツを何枚か仕入れる。もちろん大型ショッピングセンターよりも値段は安い。ただ店員さんには、日本語はもちろん英語すら通じづらい場合があるので、要注意。
 ちょっとした日用品などの買い物なら、日本と同じようにセブンイレブンやファミリーマートなどのコンビニが至る所にあるので、そこを利用するのがいいだろう。タイ独特の食べ物や飲み物も置いてあって、商品を見るだけでもなかなか楽しい。

 バンコクはホテルがとても多い街だ。日本なら1泊1万円くらいするクラスのホテルでも、バンコクなら3千円前後でOK。
 でも、とびっきり安い宿に泊まりたいのなら、王宮近くのカオサン地区がいいだろう。1泊数百円程度のゲストハウスが軒を連ねていて、世界各地から来たバックパッカーでごった返している。そんな旅行客相手の安い食堂や旅行会社もひしめきあっている。まるでオモチャ箱をひっくり返したような感じのする、賑やかで明るい雰囲気の一帯だ。ただし、日本人がタイで遭遇する事件の8割はカオサンで起きると言うから、より注意が必要なところではある。

 おっと、「鉄」系の話もちょっとはしなければなるまい。市内の軌道系交通は前述の高架鉄道「BTS」の他に、地下鉄もある。BTSは1999年、地下鉄は2004年にそれぞれ開業した新しい鉄道だ。かつてはバンコク市内にも市電が走っていたが、今はない。
 バンコク市内の朝夕の渋滞はハンパじゃないし、バス路線はバンコク市民でさえ乗り間違えるほど複雑なので、電車での移動がお薦め。ただ、暑いバンコクでは駅まで歩くのも一苦労だし、駅の階段を上り下りするのもつらいものがある(^^; もちろん駅には昇りのみエスカレーターもあるが、その速度は日本よりもかなり速い。日本のエスカレーターの感覚で乗ると、転んで怪我をすること間違いなしなので、要注意!
 近代的な鉄道らしく、改札は自動だ。ただこれも日本のものとはかなり異なる。切符なりカードなりを投入すると、日本の場合は自動改札機の先端(というか奥)の方に出てくるが、バンコクの場合は手前の方(投入口のすぐ近く)に出てくる。
 それから、自動改札を無札で抜けられないようにするためのバリアの出方も違う。日本の場合は観音開き式だが、バンコクのはダイエーの古いシンボルマークのような半円形の板がハサミのように両脇から出てくる。これに挟まれるとけっこう痛い! しかも、このバリアが出てくるタイミングはかなり早いので、自動改札でマゴマゴしているとこれに挟まれるか通れなくなる。

 近代的な鉄道はどうも面白くない・・・と思う方は、タイ国鉄のフアランポーン駅へ行ってみるといいだろう。地下鉄も接続しているので、訪れるのは簡単だ。ここはバンコクの長距離列車のターミナル駅で、JR上野駅の地平ホームのような櫛形ホームや、カマボコ型の屋根を持つ大きな駅舎はヨーロッパ調だ。ホームはそれほど高くなく、どことなく路面電車の停留所のようだ。
 駅構内には、雑多な客車やステンレス車体のディーゼルカーがたむろしている。なんと電化されていないので、架線は全くない。日本ではもうほとんど見られなくなったディーゼル機関車牽引の客車列車も走っていて、どこか古き良き時代の日本の国鉄時代を思い浮かべる。
 また、地下鉄の北の終点近くにあるバンスー駅もなかなかいい。バンコク中心部からホンの数kmのところなのに、なんとなくのどかだ。

 さて、バンコクというかタイの魅力は、物価がとても安いことだ。タイの通貨はバーツだが、2005年7月現在、1バーツは約2.8円くらい。タクシーの初乗りは35バーツ(約100円)、街角の小さな食堂で食べられる汁ソバはだいたい15バーツ(約45円)、庶民的なスーパーマーケットで売っているTシャツは80〜100バーツ(約240〜300円)くらいである。だから、タイに行った時はTシャツや靴下などの細々とした嵩張らない日用品をアレコレ買ってくることが多い(^^;
 ただし、すべての品物が安い訳ではない。現に、パソコンは高い。バンコク伊勢丹から歩いて20分ほどのところにある電脳ショッピングセンターのパンティップ・プラザで値段を見ると、日本で買うのとあまり変わらない値付けがされている。もっとも、わざわざタイまで来てパソコンを買っていく人はいないであろうが・・・。

 こんなわけで初のタイ行きですっかりタイに魅了され、それ以降3回もタイに行っていて、バンコクのみならずパタヤ・プーケット・アユタヤなどにも足を延ばしている。サムイ島やチェンマイなどタイ国内の未訪の地は多いので、まだまだ行くだろう。その分、日本国内の鉄道乗り歩き旅がオロソカになってしまうが・・・(^^;
 

   2005.11.27