昭和30〜40年代のローカル私鉄に興味がある方にお薦めしたいのが、プレスアイゼンバーンから出版されている「レイル 私鉄紀行シリーズ」である。
これは、著者の湯口徹氏が昭和30〜40年代に日本各地のローカル私鉄を訪れた時に撮影した写真が載っている。時代を考えると写真がモノクロなのは致し方ないが、その路線の多くは鬼籍入りしているので、大変貴重なものばかりだ。
単なるローカル私鉄車両の写真集ではなく、「いったいどうやって調べたのか?」と思うくらい、写真に添えて記載してある路線や車両の沿革などの文章は、こと細かい。
インターネットも新幹線も青函トンネルも瀬戸大橋も無く、特急列車も今ほど多くない時代、情報収集や現地への移動にはかなりご苦労されたようで、その路線を訪れた時の旅行記?も載っている。文中に「昭和29年3月の高校の修学旅行」とあるから、この本に載っている写真を撮り歩いた時、湯口氏は19〜29歳の青年だったであろう。
旅費を節約するために、夜遅く着いた駅で寝袋にくるまったり、起点近くの駅に車庫がある場合は列車にもバスにも乗らずに歩いたりと、涙ぐましい努力の結晶がこの本であるとも言える。
地域別に上下巻に分かれている。地域の情景が目に浮かぶようなタイトルも楽しい。その中でも、関東編の『からっ風にタイホーンが聴える』は、名タイトルだと思う。
1冊が3000円以上もする高価な本で、購入するのに勇気?が必要だが、最初に書いたように昭和30〜40年代のローカル私鉄に興味がある方にはバイブルとも言えるくらい内容が濃い本である。どの巻を買っても損は無いであろう。
ただし、一般の書店に置いてあることはほとんど無い。老舗の鉄道模型店などで取り扱っていることが多いので、欲しい方はあたってみるといいだろう。ちなみに、拙者が今までこの本を見かけた東京の店は、珊瑚模型店(杉並区方南町)、天賞堂新宿店(新宿区西新宿)、京王百貨店新宿店鉄道模型売場(新宿区西新宿)、ホビーセンターカトー(新宿区落合)などである。
2003年10月現在、拙者が持っている本のタイトルとその内容(載っている鉄道会社名)を簡単に書いておくので、本を購入する時の参考にどうぞ(^^)
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No.14 『奥の細道(上)』 〜東北編 ・津軽鉄道
・小坂鉄道 ・小坂鉄道花岡線
・南部鉄道 ・松尾鉱業 ・花巻電鉄
・岩手開発鉄道 ・羽後交通横荘線
・羽後交通雄勝線 No.15 『奥の細道(下)』 〜東北編
・栗原鉄道 ・仙台鉄道 ・仙北鉄道
・山形交通尾花沢線 ・日本硫黄沼尻鉄道
・小名浜臨海鉄道 No.19 『からっ風にタイホーンが聴える(上)』 〜関東編
・茨城交通湊線 ・茨城交通茨城線
・鹿島参宮鉄道鉾田線 ・鹿島参宮鉄道竜ヶ崎線
・常総筑波鉄道筑波線 ・常総筑波鉄道常総線
No.20 『からっ風にタイホーンが聴える(下)』 〜関東編
・九十九里鉄道 ・小湊鉄道
・西武鉄道上水線 ・日本ニッケル(上武鉄道)
・草軽電鉄 ・東武鉄道矢板線
・東野鉄道 No.21 『北線路 never
again (上)』 〜北海道編 ・寿都鉄道
・札幌市交通局(路面ディーゼルカー) ・定山渓鉄道
・三菱鉱業大夕張鉱業所 ・三菱鉱業芦別鉱業所専用鉄道
・北海道炭坑汽船真谷地鉱業所専用鉄道 ・三井鉱山砂川鉱業所奈井江専用鉄道
No.25 『南の空、小さな列車(上)』 〜九州編
・島原鉄道 ・山鹿温泉鉄道
・熊延鉄道 ・南薩鉄道(鹿児島交通)
No.26 『南の空、小さな列車(下)』 〜九州編
・大分交通耶馬渓線 ・大分交通宇佐参宮線
・大分交通国東線 ・日本鉱業(佐賀関鉄道)
・宮崎交通 No.29 『瀬戸の駅から (上)』 〜中国・四国編
・一畑電気鉄道立久恵線 ・藤田興業 同和鉱業(片上鉄道)
・西大寺鉄道(両備バス) ・岡山臨港鉄道
・玉野市営鉄道(事業局) ・倉敷市営鉄道(交通局)
水島臨海鉄道 ・下津井電鉄 No.30 『瀬戸の駅から (下)』 〜中国・四国編
・住友金属鉱山(別子鉄道) ・伊予鉄道横河原線/森松線
・井笠鉄道 ・鞆鉄道
・防石鉄道 ・船木鉄道
・長門鉄道 No.39 『丹波の煙 伊勢の径 (上)』 〜近畿・三重編
・江若鉄道 ・御坊臨港鉄道(紀州鉄道)
・北丹鉄道 ・有田鉄道
No.45 『北陸道 点と線 (上)』 〜北陸編
・栃尾鉄道(越後交通栃尾線) ・頸城鉄道自動車
・関西電力(黒部峡谷鉄道)
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