『ドラゴンヘッド』 

 2003年に公開された映画だが、SFものでもなくサスペンスものでもなくホラーものでも無い。どういうジャンルに区分されるのか悩む作品だ。謎の災害によって壊滅状態になった日本が舞台だ。

 ここに出てくる鉄道は、映画冒頭の東海道新幹線。修学旅行帰りの生徒達を乗せて東京へ向かっていたと思われる300系電車(「のぞみ」か「ひかり」か「こだま」かは不明)が、謎の災害によってトンネル内で脱線したうえに、トンネル自体の崩壊で一部が大破。奇跡的に助かった3人の生徒以外の乗客は全員死亡という、ショッキングなストーリーからこの物語は始まる。

 このシーンには大破した300系が出てくるが、これはもちろん実物ではない。が、ミニチュアでもない。なんと、ウズベキスタンに実物大のトンネルと300系車両のセットを造って撮影したとのことである。300系は先頭車のみならず、中間車が3〜4両あった。レールや架線を支える金具も再現されている。大きな鉄道車両のセットをここまで造った日本映画は、そうは無いであろう。車両は外だけでなく車内のセットもあって、事故の衝撃で吹っ飛んだ座席や死体が累々である(怖)
 また映画の後半では、荒廃したJR渋谷駅も出てくる。これもミニチュアではなく、ほとんど実物に近い大きさの巨大なセットである。

 さて、「鉄」的にちょっとおかしなところが・・・。生き残って腹をすかせた男子生徒2人が飲食物を探すシーンがあるが、ひとりは「そうだ!食堂車」とつぶやく。むろん300系には食堂車はない。続いてのシーンでは、売店らしきところでペットボトルの飲み物を一気飲みした。「鉄」でない男子生徒には、売店が食堂車に見えたのだろうなぁ・・・と好意的かつ寛大に思っていたら、生徒のひとりが売店らしきところに落ちていた包丁でもうひとりの生徒に襲いかかる、というシーンが出てきた。どう考えても売店に包丁が置いてあるわけは無いから、やはりこの映画では「食堂車を連結した300系」が存在していたことになる。制作者サイドは、かつての100系と混同して「今でも東海道新幹線には食堂車がある」と思っていたに違いない(爆)

 また、この映画のDVDも発売されていて、その中のパッケージには荒廃した街が描かれているのだが、そこにおかしな電車が横倒しになっている。正面はJRの初期型205系に酷似しているが、屋根に載っているクーラーは、205系の集中型1基ではなく、JR東日本のキハ110系に載っているような薄いものが2基。拙者の知る限り、このような車両は無い。

 とまぁ、「鉄」的には?な点がある映画だが、もしかしたら明日にでも現実に起きかねない不気味な災害が描かれている点は興味深い。

2004.2.29