嗚呼、ドリーム号 


 拙者の旅は列車を利用することがほとんどで、船や飛行機などはまず乗ることはないが、バスは時々お世話になる。もっとも、バスでの移動は旅先での短距離に限られることが多い。

 そんな拙者でも、片道300kmを越えるような長距離ハイウェイバスにも時々乗る。国鉄/JRバスのドリーム号がその代表である。

 鉄道好きの拙者があえて列車に乗らずにドリーム号を利用するのは、言うまでもなく料金が安いからである。周遊きっぷを利用して東京から大阪へ行く場合、新幹線利用だと特急料金は5,240円(通常期の普通車指定席)、夜行急行の『銀河』だと急行料金1,260円+寝台料金6.300円(B寝台)の計7,560円なのに比べ、ドリーム号の「夜行バス周遊利用券は1,420円と実に割安である。(料金は2000年1月現在)

 むろん新幹線の方が所要時間が短いし、『銀河』に乗れば横になって寝て行けるというメリットはあるが、料金が安くて寝ている間に移動できるドリーム号の魅力も捨てがたい。そんなこんなで、周遊きっぷ(かつての周遊券)で利用できる大阪・京都・名古屋の各便には何度かお世話になっている。

 しかしドリーム号のウィークポイントは、バスであるがゆえに所要時間が道路事情によって大きく左右されるということであろう。事実、初めてドリーム号に乗って東京から大阪に行ったとき、大阪市内に入ったところで朝のラッシュに当たり、大阪駅には定刻より1時間以上も遅れてしまったため、その後の予定が大きく崩れてしまったという経験がある。
 それから数年して京都便を利用した時は、大阪での苦い経験を活かしてドリーム号からの乗り継ぎには充分余裕を持たせたスケジュールにしたものの、今度は道路が大幅に空いていて逆に定刻よりも早く着いてしまい、中途半端な時間が発生してしまった。人生なかなかうまく行かないものである。

 そんな経験があるドリーム号ではあるが、真夜中の車窓に流れ行く街の灯を見ていると、ふと「人生の落伍者」になったような不思議な感じがすることがある。今夜のドリーム号も、多くの人の夢と眠りを乗せてハイウェイを走っていることであろう。
 

                                                2000.6.24