東京から来ました


 「作者紹介」のページにも書いてある通り、拙者は東京に住んでいる。東京という地名を知らない日本人は赤ん坊か幼児くらいなものだろうから、遠いところへ行くと「遠路はるばるようこそ」と歓迎されることは間々ある。

 京都のような有名観光地を東京の人間が歩いていても不思議は無いが、土地の人間しかいないようなローカルなところを東京から来た人間がウロウロしているのは、地元の人にすれば相当異質な存在に見えるようだ。

 以前、九州の平成筑豊鉄道の乗り歩きをした時のことである。直方駅のホームでディーゼルカーの写真を撮っていたら、近くにいた職員が「お客さん、どこから来なすった?」と話しかけてきた。大きな旅行カバンを持っていたから土地の者ではないと思ったのだろう。東京からだと答えると、その職員は上半身をのけぞらせて驚いていた。
 それもそうだろう。平成筑豊鉄道の沿線には有名な観光地は無いし、SLや変わった形の車両が走っているわけではない。直方も地味な街である。この路線に遠来の観光客が乗ることはほとんどないだろうし、車両目当てに鉄道ファンが数多く訪れるというところでも無い。つまり平成筑豊鉄道というのは、沿線の地元に縁もゆかりも無い東京人はまず乗らない線なのだ。職員が驚くのも無理はなかろう。

 逆に、九州から来た人が拙者の地元を走る地下鉄の乗り歩きをしているのを見かけたら、拙者は驚くかもしれない。

                                                2000.5.3