久二男さんの木尽くし日記 その7



トチの木
03/10/18

やはり日本海側気候によく生育する樹木に「トチノキ」があります。名前は「栃」「橡」などと書かれ、栃木県の県木にもなっている木。語源はト、チ「十(トオ)×千=万」最初は木編に「万」だけだったとか、次第に現在の「栃」になったとも。一方「橡」は葉が大きく掌状(手のひら)の形をして昔、山道を通った人の頭上を「バサッ」と落葉、驚かせる。木編に「象」、大型の、大げさな、はでなの意味。象徴的です。

葉は5裂、7裂するものがあり(しかし分かれていますがこれで1本です、ホオの葉はトチと似ているが1枚ずつ)、中国では「7葉樹」葉っぱの落ちた後(葉柄痕)が馬のひずめの形に似ているので「馬栗」、イギリスでは「ホース・チェスナッツ」、フランスでは「マロニエ」。

トチの実は栗によく似ていますが、とても生食できません。

森の中にはネズミの仲間で「アカネズミ」「ヒメネズミ」などが生息している。ネズミと聞くだけでお母さんたちは眉を顰めます。ロッジ在任中、幼稚園、保育園の子どもたち40人、50人集まったときにやったこと、前の晩薄暗くなったころ森の中に連れて行き、特殊なトラップを仕掛けさせました。もちろんなにが捕獲されるかは内緒です。翌朝早くに集合させ回収に行きます。広場を挟んで両側に10台ずつ仕掛けておいたものを同じところに集め1台ずつ開けていきます。ほとんどに入っているのですが、入っていない組の子ども達は悲しそうな顔をしました。中にはヒメネズミ、アカネズミです。歓声をあげます。首のところを上手につかみ子ども達に触らせます。争って触れたがりました。その後、大きなケースに入れてロッジに1泊してもらい、翌朝また広場に集まり真ん中で、ケースを開きます。すると、私も信じられなかったのですが、左右の森に同じ数だけ分かれて帰っていきます。やはり帰巣本能なのでしょうか。人もこうありたい?かな?

さて、戻ってトチの実は、このネズミさんがいないと存続できないとまで言われます。しぶくて人間は食べられないが、縄文時代より工夫して水にさらしたりで現代にもそのまま伝えられています。

「トチの木」自身が自分のまずさを知っている。しかし子孫は残さねばならない。食べ尽くされてしまうとだめ。そこでどんな木の実よりも早めに実を落とす。ネズミさんは他のおいしい実「ブナ」「ミズナラ」などがないので仕方なくせっせとトチの実を運ぶ。ネズミさんは非常にわすっれっぽい動物だと言います。大量に運ばれ「貯食」されたトチの実は発芽率もいいので、あちこち新芽を発芽させます。トチの木はネズミさんの忘れっぽい性格もよく知っているのだとか。冬はロッジ閉鎖。翌春開館前の準備のとき驚きました。長靴を履こうとしたら中に大量のトチの実が有ったことです。

こうして森と森の中に暮らしている動物、鳥、昆虫、キノコ(菌類)、ダニ類は見事に共生しています。なんとしても人類も自然との共生を「知恵」の限りを尽くして実現せねばしっぺ返しを食います。ダニも嫌われ者ですが、けっしてそうではありません。これほど偏見で見られているのは無い。

一番悪いのは、「町のダニ」です。




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