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「芸術性とプロ意識」                      2003.8.4


現代の絵画芸術は、画家が受け止めた感情(印象)を表現している
「印象派」と呼ばれる芸術作品がもてはやされている。
だが、印象派の作品は、決して上手な絵だけではない。

単に印象派と言っても、大きく2つに分類される。

1つは、ルノワールやモネ、マネ、シスレーといった、風景や人物の美しさを感受性で
受け止め、描く技法はもちろんのこと、色や設定配置、題材となる被写体、遠近感など
特有の感性を屈指して描く、「美を表現する芸術」である。

対照的に、ピカソ、ゴッホ、ムンク、シャガール、ルドンなどの作品に美しさの追求はない。
構図がずれていたり、立体感すらない作品もあり、まるで小学生が描いた様な作風もある。
だが、これらの作品には、見る人が見ると、凄さが込められている。
それは、画家のメッセージであり、画家はメッセージを伝えるための手段として
カンバスを用いている。
選択したテーマ(動物や人)、色や構図、方向性、画材など1つ1つに意味(メッセージ)を
持たせ、さらに絵全体に最大のメッセージ(テーマ)を描き表して表現する。

この様な本物の芸術作品には力がある。
見た瞬間に、優雅とか、何だこれは? と衝撃を覚えるほど凄いと思わせる力である。

この力の有無が本物の作品を見極める基準とするのは、何も絵画だけではないと思う。
映画や文学も同じである。

素人がプロを目指し絵画や小説を創るとき、上手に描く(書く)ことは鍛錬すれば誰でも
ある一定のレベルにまで達することが出来る。
その場合、作風はルノワールやモネの様な作品になるのだろう。
美しさを表現する本物芸術の場合、技法や感性、感受性が
人より超越しなければならない。
巧いだけではなく、見る側に美しいと感じさせる「凄さ(感動)」を描ける能力が必要になる。

ピカソやゴッホの作品を描くには、メッセージを表現する必要があり、社会や人間に対する
読察力が重要になる。
戦争で表現の自由を奪われている時代に、あえて戦争に対する反対メッセージを
一枚の絵に込める。命がけで創るので、メッセージを一般の人が理解できない様に
隠した作品が完成する。

なぜ、そこまでして作品を残すのか? 
命の危険を冒してまでも未来のために残すといった
信念が、本物の作品を生み出すのだろう。これは強迫観念で、神経症的な不安と
恐怖の葛藤から芸術作品が多く生まれているのも事実である。

文学の場合、技法や美しさ(感動物語的な要素)に加え、作者が伝えたいメッセージが
あるか、ないか? が作品としての評価につながってくる。
メッセージ性が何もなかったり、小さいテーマの作品は、誰でも書ける、
どこにでもある様なそれなりの作品で終わってしまう。

絵画にしても、文学にしても、本物の作品を残す(プロレベル)には、
ただ描きたい(書きたい)、認められたい、といった個人的な安易な動機で
作品を創っていては、何時まで経っても本物を創ることは難し、
プロになることは難しいだろう。

元々持っている才能に、更に磨きをかけて、美しさ(感動)を追求する、
自分が伝えたいこと、残したいメッセージを作品に託すことを、
常に意識して作品を創り上げる必要があると考える。



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