
もちとうもろこしはスイートコーン全盛になるずっと前から日本にあったトウモロコシです。黒もちは真っ黒、白もちは真っ白、黄もちはまっ黄色です。名前のとおり「モチ性」(モチ、ウルチのモチ)で、若もぎとうもろこしを焼いて食べると、もちもちと歯にくっついて面白い味です。「全然甘くない」のでスイートコーンをイメージしていると大ハズレになります、ご注意を。
昔のもちとうもろこしの良いところ。
(1)粒がでかい。
(2)手でほぐせる。
(3)もちもち。歯という歯とお友達に。
昔のもちとうもろこしの悪いところ。
(1)生で食べられない。
(2)硬い
(3)色がヘン。黒はぎょっとする。
だがでもしかし、一度ツボにはまったらスイートコーンには戻れません。食べたことある人にはなつかしく、食べたことない人には未知の味。
トウモロコシはとても交雑しやすいのですが黒・白・黄の三種類を栽培しています栽培することにしました。それぞれを別々の場所にまき、畑に植える時も別々の列に分けて植えます。でも成長して花が咲くと隣の列にも花粉が飛ぶので収穫したトウモロコシを剥いてみると黒だけ、白だけ、黄だけ、黒白ミックス、黒黄ミックス、白黄ミックス、黒白黄ミックスといろいろできます。つまり剥いてみないと中身の色は分かりません。
当園では「忘れ去られた昔々のとうもろこし。スイートコーンの登場で消えてゆく運命のとうもろこし。そこのあなた!あなたが栽培しないとこのとうもろこしは地球上から失われてしまうかもしれません!!」的な呼びかけに「面白いじゃなーい!」と乗っかって栽培を始めたという経緯があるのですが、ここ何年か突然もちとうもろこしのお問い合わせが増えて(最近はまた落ち着いてきましたが)本気度がややアップしたのですが、それに伴い害虫の本気度もややアップしました。
種をまき芽が出た後は土中のイモムシにかじり倒され、成長中はてっぺんに隠れたイモムシにズタボロにされ、花が咲けばヒゲに潜ったイモムシにヒゲ無しにされ、実がつけば全てのイモムシが実に突進してきます。
このように栽培期間中様々なイモムシが絶え間なく戦いを仕掛けてきます。とうもろこし達はいつ私の堪忍袋の緒が切れて憎くきイモムシ共を一掃してくれるかと期待のこもった熱い眼差しを送ってくるのですが、いっこうに何の手もうたない園主に対し徐々に「自分たちでなんとかせな」気運が高まり、なんだかんだと最終的には今回も全滅することなくそれなりに収穫できたのでした。
イモムシ達はまあまあ満足し、とうもろこし達もまあまあ満足。そして私もまあまあ満足。おお、まったく問題ないじゃありませんか、農薬を使う理由はありませんね、うん。
当園のもちとうもろこしは、当初に種を購入して栽培しその後は毎年自家生産したもちとうもろこしを種として翌年の生産を続けてきました。育ったものの中から病気や害虫に強く、房の形が良く、色が綺麗な粒を選んで何年も続けたので当地で育てやすく見た目も良いもちとうもろこしに成って来たと感じます。ただ味に関してだけは美味しいものを選び残すことはできません。これ美味しい!と思ってもそれは食べちゃってるのでタネにはならないわけです。
もう一つ悩みはトウモロコシは風媒で何年も種を採っては繰り返し育てているといつの間にか交雑してしまいやすいことで、ここ最近のみどりのはたけ産もちとうもろこしが満足できる昔ながらのトウモロコシっぷりを維持しているだろうかとふと不安になるのです。新しい種を購入すれば誰もが認める素晴らしい「よその子」もちとうもろこしができるでしょう。いっぽうここまで一緒に歩んで来た「うちの子」にも非常に愛着があって別れ難し。どっちの種にしようか…うじうじ………と何年か悩んだ結果「うちの子」でいくことに決めました。