
なんとな〜くリクエストのあったポポー。日本に入ってきたのはかなり昔であるらしいのにほとんど知られていない不思議な果物。地方の田舎のお家の庭の片隅に人知れず植わっていたりする。「昔、日本に来た時トロピカルフルーツの香りが日本人には受け入れられなかった」らしい。私はトロピカルフルーツ好き。でもどこにも売っていない・・・じゃあ自分で植えるしかないなと。
カタログを見ていたら「木になるカスタードプリン」とか「バナナとマンゴーを足して2で割ったような味」というふれこみに誘われて植えてみましたが、初成りの実は色も味もプリンとはほど遠くがっかり。そしてその初成りから3年目、取れた果実を当園専属モニター(家族ともいう)に食べてもらったところ味はなんとか合格ラインだったようですが、日持ちと見た目で商品としては黄色信号とのことでした。収穫時に黄色だった果皮が枝から離れると急速に黒くなってしまうのです。冷蔵庫に入れてもその速度は衰えず、どうしたらよいものかと試行錯誤…していましたが、どうやらパーポーは完熟前に収穫したものや落果したものはすぐ黒くなりエグ味が強めのようです。
パーポー(Pawpaw)は名前の通りおててのように1箇所に数個の実を成らせますが膨らんで熟していくうちに自分で見切りをつけて落果させてしまうようなのです。樹が最後まで大事に熟させたパーポーはとても甘く表面の皮もなかなか黒くはなりません。とはいっても結実してから熟すまで長期間かかるので隣の実とおしくらまんじゅうしつつ風に吹かれて葉っぱや枝に引っ掻かれ続けた結果、果実は傷だらけのくすんだ緑色に茶色のシミがあるのような色合いなので見た目を重視する市場価値的にはイマイチです。特に台風に弱く、熟する時期に直撃しやすいという最大の欠点を抱え「収穫目前でボタ落ち」という毎年恒例の出来事が回避できるかが焦点です。ただしお天道様次第です。
そこで一房に複数個付いているものを1個もしくは2個に摘果して「大きくなあれ」と念じてみた所思った以上の効果があり、300gを超える実をいくつも収穫できました。しかしまだ摘果の時期がよくわからないので、いつちょん切るのが最適なのか物言わぬパーポーにゆっくり教えてもらう必要がありそうです。何故ならちょっと早いだけでも甘味が弱くエグ味が強くて収穫後すぐに黒くなる、完熟=落果なのに落ちたらもうダメこれもすぐに黒くなりエグ味が強くなる、見た目じゃ全然分からないということで熟したのを狙って収穫するのがめっちゃ難しいのです。じゃあ完熟して落ちるのをふんわりキャッチしたらいいじゃん!、と考え袋状のネットで受け止める作戦を試してみましたが失敗。細かい結果は割愛しますがうまくいかず、ネット掛け作戦は封印することに。
なおこの植物は根っこを広げて大量にひこばえを出し、そこから樹が生えてくるのでほっとくとどんどん増えて領土を増やしてゆくようです、場所を考えて植えないとちょっと危険かもしれません。放っておくと一体がポポーの森になりそうな勢いなのですが親木(収穫用に穂木した樹)はあまり丈夫でないようです。原因はまったく分かりませんが10年ほどで枯死し始めました。1番元気だった時はどんどん樹が大きくなるのにあまり実をつけず、だんだん弱って実が沢山つくようになり、最後はダメになるみたいです。なんで?なんで?。2023年現在親木は残り1本となってしまいました、あとどのくらい保つかわかりません。
そして数年を経てねっとりと甘味がノリ始めると…とても甘いです。甘さで言えば日本で普通に売ってる果物のトップクラスに甘いです、が酸味が全くない。そしてパーポー独特の風味が加わるので好みが分かれるかもしれませんが好みがあえばとても美味しいです。むっちりねっとり歯にまとわりつく食感でバナナともマンゴーともつかない味が何とも不思議な果物です。そんな中、唯一酸味があった品種がその名もマンゴー(まぎらわしい)、これは4年目にしてとうとう1個目がキタ!!と感慨もひとしおでとても美味しかったのですが…残念ながら当地では気候が適していないようで2個ほど収穫できただけで枯れてしまいました。
そんなわけで当初は顔見せのつもりでお店に並べてみましたが、知名度は低くアケビかと思う人が圧倒的に多くバナーネかと思う人もいたようです。いずれにしても試しにぷにぷにと触ってみるらしく、売れないまま可哀想な姿になってしまったのを持って帰ってくることもしばしば。ですがわりと物珍しさに買っていただけたようです。その後ポポーという名を聞くようになりわりと知名度が高まって来たのか、お店に出すと結構売れるようになりました。とはいえ販売出来る量は微々たるものなので見つけたらラッキーくらいに思ってもらえると幸いです。