第9話 仙人に頼み込む
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悟空は、人参果を生き返らすため「福(ふく)」「禄(ろく)」「寿(じゅ)」の3人の仙人を捜しに、筋斗雲で「蓬莱国(ほうらいこく)」へ向かった。
その頃、三蔵達は...。
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「お師匠様。悟空の兄貴は本当に俺達を助けてくれると思います?」
「沙悟浄よ、悟空を信じなさい。」
「あてになるもんか。どうせ兄貴は逃げちまうよ。」
「八戒、そんなことは私が許しません。もし3日以内に戻らなかったら、「緊箍呪
(きんこじゅ)」を読み上げますから。」
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悟空は仙人を捜して蓬莱国中を捜し回った。しかし、なかなか見つからない。
逆に仙人は飛んでいる悟空の姿を見つけると、呼び止め叱った。
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「悟空!」
「捜しておりました。」
「愚か者! 鎮元仙人はとても高貴なお方じゃ。そのような方にお前なんかが歯向かう
とは...。この身の程知らずめ!」
「すいません。ですから、お詫びのしるしに人参果を生き返らせようと思って。何か良い
方法を教えてくれませんかねぇ。」
「ここには、人参果を生き返らせる薬などない。その代わり、わし達が五荘観を訪ねて、
お前に少し時間を与えるよう頼んでやる。」
「ありがとうございます。」
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悟空は、お礼を言うと他の仙人を捜し始めた。しかし、人参果を生き返らせる方法を知る仙人はいなかった。
困り果てた悟空は、「補陀洛山(ふだらくさん)」の観音に泣きついた。
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「観音様!」
「どうした? 悟空。」
「お師匠様達を助けなきゃいけないのです。」
「どうしてじゃ?」
「私が鎮元仙人の大事な人参果の木を倒して、枯らせてしまったのです。それを生き
返らせないとお師匠様達を許さないと。」
「仕方のない奴だな。これを持って行くが良い。」
「この水は何です?」
「これは、「甘露水(かんろすい)」じゃ。その昔、焼けてしまった柳にこの水をかけた
ところ、みるみる生き返ったことがあったのじゃ。」
「そいつは、ありがてぇ。」
「待ちなさい、悟空!」
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観音がやるとも言わないのに、甘露水をひったくり五荘観へ大急ぎで戻った。
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戻ってきた悟空に三蔵達はホッとしていた。鎮元仙人は早く生き返らせろと急かした。
悟空は観音から奪い取った甘露水を倒した人参果の木にかけると、見る間に生き返った。
三蔵達はもちろん、鎮元仙人と弟子達も大喜びした。そして、お互いに仲直りした。
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