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タバコはなぜやめられないか

 



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書名 タバコはなぜやめられないか
著者

宮里勝政

出版社 岩波書店
価格 735円(税込)
   
 
2006年3月3日付の日本経済新聞42面に、「喫煙率目標値設定 たばこ会社に両論」という記事が掲載されていた。がんなどの生活習慣病対策の一環として喫煙規制を議論する厚生労働省の部会において、参考人として出席したメーカー3社の考えに違いがあることを報じている。

厚生労働省が喫煙率低減の目標値設定を検討していることに対して、JTとBATが「個人の嗜好に国家が介入すべきではない」、「社会が受け入れる状況になっていない」と反対する一方、フィリップモリスは、「政府が喫煙者の禁煙をサポートするのは適切で、特定の数値目標の設定は政府が決めること」と“賛成”しているとのことである。

昔から日本は「スモーカーズ・パラダイス」といわれるように、たばこが原因で発症する病気への認識や社会的損失に関する意識の高まりが非常に遅れている。世界的にたばこ規制が強まる中、たばこの害に関して無頓着でリッチな日本での商売に活路を見出しているのがフィリップモリス、BAT、そして、JTのたばこジャイアントなのである(このあたりの事情は伊佐山芳郎著による現代たばこ戦争」がわかりやすく解説している)。

受動喫煙による健康被害に関して、「科学的データが不十分で、受動喫煙が多くの疾病の原因かは疑問」、と意見するJTとBATは営利追及企業のエゴ剥き出しにしてたばこビジネスの正当性を主張している。一方、フィリップモリスはこの問題に対しては、「喫煙者は非喫煙者よりもはるかに肺がん、肺気腫などの重大な病気に罹患する確立が高くなる。喫煙には依存性もあり、現時点で安全なたばこはない」とたばこの害を認めている。喫煙は死をもたらすともいっている。

JTとBATの主張は、両社がたばこビジネスを継続するためには「筋」が通っている。フィリップモリスの考えは一見「良識的」にみえるが、喫煙が危険なものと認識しながらなぜ「人を殺す」ような製品を販売しつづけるのか、、、矛盾している。

いずれにしても、喫煙が人間の健康に対して、少なくともプラスでないことははっきりしている。にもかかわらず、依然として喫煙者は存在し、たばこ会社は喫煙者の健康を奪って富を築く。問題の根底は、なぜたばこをやめられないか、ということに尽きるのだと思う。誰もがたばこを吸わなくなればたばこ会社は存在し得ないし、たばこ問題もなくなる。たばこを断ちがたい理由に対して、科学的・医学的なアプローチでわかりやすく解説しているのが本書である。

また、 たばこの有害性とたばこ会社の「反社会的」体質を知り、人間としての良心の呵責から大手たばこ会社を退職した元副社長と或る報道番組プロデューサーがたばこ業界の闇の部分を暴く社会派映画「インサイダー」も、たばこというものを 違った角度からみることができ興味深い。緊迫したサスペンス映画を観るようだ。

2006年3月3日

 

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