以前、ある企業のドイツ駐在員としてミュンヘンで暮らしていたとき、ドイツ人の家庭に何度か招待されたことがあった。私が訪れたドイツ人宅は Mietshaus
と呼ばれる賃貸マンションで、豪勢というイメージやきらびやかさはなかったが、
どの家庭も小奇麗に整理整頓されていたのが大変印象的だった。この本を読んでいると、きれいに片づけられ掃除の行き届いたドイツ人宅の室内が目の前に浮かんでくる。
著者はこの本の中で「持ちものは少なく」と説いている。
「なるべく楽に暮らしたいから、必要以上のものは持たないようにしています。ものを持つということは、そのものを管理するということ。ものが少なければ、気持ちも軽くなるし掃除も簡単です」
個人差はあるのだろうが、合理性や機能性を大切にするドイツ人らしい考え方だと思う。ドイツは環境先進国としてもよく知られているが、それはこのような合理的で機能的な日常生活がベースになっているのだろう。ゴミの捨て方、改札口のない駅、自転車との共存などなど、ドイツでの生活スタイルにはいちいち納得させられたものだった。
ドイツ人の母から受け継いだ著者タニアさんの「時間をかけずにきれいを保つ知恵、居心地のよい住まいづくりのルール」は、必要でないものに溢れ返った物質文明に警鐘を鳴らしているようにも思える。
2011年11月24日