未来の芥川賞受賞作家ハル坊の図書館

 

home

このサイトについて ライブラリー 掲示板  
   

憲法九条を世界遺産に

 



憲法九条を世界遺産に

憲法九条を世界遺産に


 

 

 

 
   
書名 憲法九条を世界遺産に
著者

太田光・中沢新一

出版社 集英社
価格 693円(税込)
   
 

「お笑い」の太田光と宗教学者・中沢新一という異色の二人が、昨今日本人の関心を集めている話題のひとつである「憲法」について語っている。 ベストセラーとなっているそうだ。太田光は、

「憲法九条は、たった一つ日本に残された夢であり、理想であり、拠り所。どんなに非難されようと、一貫して他国と戦わない、二度と戦争を起こさない、という姿勢を貫いてきたことに日本人の誇りがある」

という。その憲法九条とは、

第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】 1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

というものである。

この憲法第九条の精神と太田光の考えは確かに尊ぶべきものである。が、戦後60年を経て、この平和憲法の理想とするところが現実とそぐわないものになっていること も明らかである。日本は日米安全保障条約によって有事の際の安全は保障されることになっている。しかし、アメリカが攻撃を受けているときに日本の自衛隊は援護射撃をできない。同盟国の援護を目的とする集団的自衛権がないために同盟国軍が瀕死の状態になっても指をくわえてながめているべし、という スタンスは根本的におかしいのではないだろうか。そもそも自衛隊は「戦力」ではないのか?北朝鮮の工作船を銃撃したのは第九条でいう武力の行使ではないのか? 理想にとらわれ過ぎると現実との間にある矛盾の説明がつかなくなってしまう。改憲、すなわち、軍国主義、好戦的、武装、、、ということではないはずだ。

本書、、、内容としてはあまり評価できるものはないと思うが、隣国北朝鮮が核保有をちらつかせている昨今、「お笑い」の太田光が日本国憲法について考えるきっかけを広く提供したとするならば大いに評価されるべき点だと思う。

2006年10月20日

 

 

未来の芥川賞受賞作家ハル坊の図書館