Takehiro Nishida
西田 武洋 (Takehiro Nishida)

電気通信大学 電子工学専攻 上野研究室 博士前期課程2年


新大学院生へのメッセージ 2010年3月
・はじめに
 上野研究室博士前期課程2年の西田武洋です。私の大学院在籍時の経験を元に、以下に簡単なメッセージを
作成しましたので、「新大学院生・卒研生のこれからの大学生活(主に研究)に、もしかしたら役に立つかも」
程度の気持ちで、気軽に読んでみてください。

・ 上級生・同級生・下級生との共同研究、協力、引継ぎ
 大学院生になると、研究室での生活を1年過ごしたおかげあって、周辺知識が増えたり、実験装置の
取扱いにも慣れ始め、研究したい事柄が増えてくるかと思います。ただし、大学院生になると、講義の他に
Teaching Assistant(TA)を勤める必要があるので、その分、自身の研究に費やせる時間が、限られてきます。
その場合、研究テーマの一部を下級生に与えてみるのも、1つの手です。下級生の経験を増やせますし、
自身の研究の発展にも繋げられます。私の場合は、立場が逆で大学院1年生時代に、上級生の研究の一部を
任され、その時に得た知識や実験経験を、後の私自身の研究の発展に大いに生かすことができました。
 一般的に年度末になると、上級生から研究を引継いだり、もしくは、下級生に自身の研究を引継がせる
ことになります。前者の場合、引継いだ後に、研究を進めていくと、少なからず、上級生に聞いておけば
良かった事柄が現れてきます。従って、上級生が在籍している内に、一度、引継いだ人が、その引継いだ内容を、
実験なら実験、計算なら計算をおさらいしておくと、後々困る事柄を減らせるでしょう。また、後者の場合は、
早い段階で、引継がせる下級生を特定し、一緒に実験したり、計算シミュレーションさせておけば良いと思います。

・ 国内学会・国際学会や、日中韓フォーラム(TriSAI)、発表参加
 研究を進めていくと、遅かれ早かれ、研究成果を挙げるでしょう。すると、その成果を学会で
発表することになります。私の場合、初めての学外での発表(ポスター形式)は、TriSAI2008でした。
大抵の場合、学会で発表する前に、まず予稿を投稿する必要があります。その量は、学会によって
指定されており、A4サイズ1ページの3分の1から、A4サイズ5ページなど、まちまちです。
投稿〆切の2週間前までに、予稿の第1版を作成できると、余裕を持って改訂版を、〆切までに投稿できると思います。
発表自体は、自分自身の為だけでなく、主に聴講者達の為にやっていると意識すれば、
私の場合、多少気楽に発表できました。発表より、発表に対する質疑やコメントへの対処の方が、難しいです。
事前の発表練習で慣れておくのと、質問を想定して、うまく対処するしかないです。それでも、
この質疑やコメントのおかげで、研究を更に進めさせることができるので、有意義なコメント等を
沢山引き出すことができれば、発表した甲斐・価値が、あったと後に思えます。
私の場合、複数回の発表の質疑応答をこなす中で、私や研究室メンバーが気づかない指摘を受けて、
その一部を、研究の発展に貢献させることができました。
 それと、成果がなくて発表者として学会に参加できなくても、聴講者としては学会に参加できるので、
近隣の学会に聴講することをお勧めします。他大学や他機関の発表を聞くことで、研究の進め方のヒントや
上手な発表の仕方等を学べたりもできます。

・ 学外機関との共同研究着手と発展と段階的な成果、研究員・技術員との人的交流
 私の大学院研究は、使用実験機器の都合上、学外機関との共同研究でした。その機関の実験室使用の
都合(私の他にも利用者がいる為)や、大学でのデータ整理・考察とその後の実験計画の進め方を
相談する必要があるため、平均して月に1、2回程度の頻度で、研究機関に赴き、研究を進めてきました。
従って、実験を再度やり直すことがないように、事前に研究機関でおこなう実験項目に優先順位を付け、
項目を絞ることと、実験しながら簡単にデータ整理を済ませることが重要です。また、時間が限られている中で、
無理して多くの実験をこなそうとすると、取りこぼしや装置の故障等を招き、余計に時間を取られてしまうので、
焦らずに着実に、限った項目を成遂げる事の方が大切です。遅くても小さくても確実な一歩一歩の積み重ねが、
段階的に成果を得ることができます。
 初めの半年を除き、主に一人で研究機関に赴き、実験をしていましたが、予稿・発表スライドの査読や
実験装置の取扱い等で、研究機関の研究員や技術員の方々には、とても御世話になりました。
実験を数多くこなしていくと、時に装置が、うまく動作しないことがあります。そんな時は、
マニュアルを読んで解決させる方法もありますが、手っ取り早く研究員や技術員の方に、
助言を頂く方が効果的です。彼らの方が、私達学生より実験経験がありますし、的確な助言や
対処の仕方を教えてくれます。また、その時に教えてもらったことは、なるべくノートにメモしておきましょう。
前述の通り、月に1回程度の実験頻度では、教えて頂いたことを忘れてしまうこともあります。

・ 研究指導教員や他の教員たちとの科学技術討議、研究討議、人的交流
 研究指導教員の上野先生とは、研究結果の考察や実験計画に関して、臨時(不定期)ミーティング等で、
よく討議しました。討議用の資料を作成する際に、結果だけでなく、それに判断を加えて評価すると
良いと思います(できれば定量的評価)。他人から結果だけ見せられても、反応しにくいのと同じです。
 国際学会で英語で発表の前、英語に慣れる為に、上野先生の薦めで、電通大の英語担当教員の方々が
企画する英語合宿に参加したことがありました。その時に御世話になった英語教員の方には、好意で、
その後の私の発表練習に参加してもらい、英語発表に関する的確な助言を頂き、そのおかげもあり
実際の発表を何とかこなせました。研究室に配属されると、一日の多くを、研究室での実験や調べものに
費やしがちになり、人的交流が研究室メンバーに限定される傾向になりますが、講義や発表会等の機会を
通じて、比較的近い研究分野の他の教員と交流を深めてみるのも良いでしょう。

・おわりに
 大学院時代を振り返ってみて、私自身の能力が優秀であったとは、思いません。それでも、研究生活中に、
1つの成果を挙げられ、その成果を国際学会で発表することができたのは、
  継続して研究を行い、得た結果を次の実験に生かせ続けられた事
  研究室メンバーや学外機関の研究員・技術員をはじめとする、周りの人達からの助力
の2つに因る所が大きいと感じています。また、これらが要因で事を成遂げられるのは、研究に限ったことではなく、
多くの他の事にも当てはまりますし、私に限らず誰でも経験できる事だと思います。
 大学時代は、視野を広げることができ、価値観を磨く絶好の機会だと思いますので、研究に限らず、色々なことに
チャレンジしてみると良いでしょう。きっと後の人生に役立つと思います。
以上です。