田中館愛橘記念科学館

ローマ字で和歌を書いた物理学者

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 岩手県北端の町、二戸(にのへ)市は明治の物理学者・田中館愛橘(たなかだて あいきつ 1856-1952)の出身地だ。現代人にはなじみ薄いが、彼は日本物理学の揺らん期に草分けとして活躍した学者で、昭和19年に文化勲章を授与された。

 彼の活動範囲は日本の純粋物理学研究の基礎固めをすると共に、重力・地磁気・緯度などの測定、音響振動の研究、地震と防災の研究、精密測定法の研究とメートル法の普及活動、航空力学の基礎研究、科学技術振興と普及活動、ローマ字運動などと幅広い。

 南部藩の下級武士(地方給人 じがたきゅうにん)の子として幕末安政年間に生れた彼は、藩校で和漢の学問を学んでいる。明治5年には父の開明的な教育方針により一家は上京し、彼は英語を学ぶ傍ら、やがて東京大学に進んで物理学を修めた。

 その後、当時の学者の通例として英国やドイツへ留学して帰国後、帝国大学の教授になり研究活動をすると共に、多数の著名科学者を育てた。彼は各国の科学者との交流にも熱心で、度々外遊している。1891年に起きた濃尾地震の際、現地調査をした彼は根尾谷の断層を公表し、その写真はその人脈を通じて世界に広まった。

 国際交流の過程で日本語のローマ字表記の必要性を痛感した彼は日本式ローマ字表記法を提唱した。彼が音に関して研究したこともそれを促す端緒になったそうだ。

 日本語のローマ字表記法は時代によりポルトガル式・オランダ式・ドイツ式・フランス式・英語式などと色々試みられたが、日本式は英語系のヘボン式と共に二大系統となり、政府告示の訓令式の基礎となっている。

 二戸市シビックセンター内に設置された「田中館愛橘記念科学館」は「郷土の先人に学ぶ科学工房」を目指して、青少年の科学知識涵養を目的とする先端科学技術体験施設だ。その入り口ホールには彼の遺品や墨蹟などが展示され、その生涯を紹介している。また彼の研究や活躍をパネルで解説している。

 当館の説明に依れば、彼は必要と思うこと以外には無頓着で「ずぼら博士」の異名を取ったそうだが、個性豊かで既成の観念にこだわらない合理性とチャレンジ精神を持っていたという。

 ローマ字で墨書した和歌や漢詩の掛軸や石碑が残っているのもそのせいだろう。彼が1947年11月3日に揮ごうしたローマ字和歌の扁額を掲載しておこう。(写真1参照) 彼の亡くなる5年ほど前に書かれたものだ。

 余談だが、当館から1.5キロほど歩くと、国指定史跡・九戸城址(写真2参照)がある。この城は南部氏一族・九戸氏歴代の居城だった。戦国末期の城主は九戸政実(まさざね)だった。

 その頃発生した南部氏の相続争いは政実を一方の中心人物として拡大し、やがて北奥羽の豪族たちもからむ騒乱に発展した。この事態は豊臣秀吉の天下統一事業に対する反乱行為とみなされた。

 そのため1591年に数万と号する奥州再仕置軍が派遣され、城は包囲された。仕置軍側は当初、容易に落とせると軽視して力攻したが、三方を川で囲まれた規模の大きな平山城に立てこもる数千の城方は10日ほどよく守った。

 補給線を十分整えぬまま急ぎ来攻した仕置軍は補給面からも、また秀吉の威光を示す意味からも勝ちを急ぐ必要があった。そこで偽りの和議を提案し、政実はそれを謀略と知りながらも、兵力の差はいかんともし難いとして、城兵助命を条件に開城したと伝えられる。

 しかし城方は全員惨殺されたという。仕置軍側から見れば天下統一に歯向かう小田原征伐以降の、最後の敵には、奥州各地で反乱を企む不満分子へのけん制としても許す訳に行かなかったのだろう。これによって戦国の世は終り秀吉の天下統一が完成し、近世の幕開けとなった。

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(作成日: 03/08/17、 更新日: 03/10/13 )

 

(施設情報参考)名称_住所_電話番号_駅からの概算路線距離(駅からの概略方位と直線距離)・所要時間・バス_展示規模_対象_開館時間(受付終了時刻)_休館日_備考_{施設情報確認日}開閉館時間と休館日はよく変るし臨時休館もある。事前確認が賢明

 

田中館愛橘記念科学館_岩手県二戸市石切所字荷渡 6-2 二戸市シビックセンター3階_TEL 0195-25-5411_

a)東北新幹線・いわて銀河鉄道(IGR)二戸駅から1.4km(55deg.E 1.3km)徒歩20分、タクシーあり。

b)二戸駅東口からJRバスを利用し岩谷橋下車後徒歩10分_

駐車場 当センター裏、総合スポーツセンター、合同庁舎などの無料駐車場を利用できる。_小_大人子供_

9:00-17:00(シビックセンター自体の開館時間は9:00-21:00)_

月曜日(休日に当たれば開館)、休日の翌日、12/291/3_{17/04/30}