多摩森林科学園、酒ミュージアム

サクラの花をいくつ知っている

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参照(森林B)     参照(酒造用具B)

 東京のハイキングエリア・高尾山、その近くに「多摩森林科学園」がある。当園はもと、国の林業試験場浅川実験林と呼ばれ、その広い敷地には多くの樹木が植えられ種子の採取や学問的研究を行ってきた。

 現在は独立行政法人・森林総合研究所の施設となっている。その試験林の一部に内外の樹木やサクラを集めて、樹木園やサクラ保存林として、見学ルートを設置し公開している。それは樹木ばかりでなく、動植物を含めた森林生態系の観察に役立っている。

 施設の長い歴史の間に成長した常緑広葉樹・落葉広葉樹・針葉樹などの高木を中心に、園内には620種、6000本の樹木があるそうだ。園内には山あり谷ありの起伏に富んだ地形で、大木には樹木名や特性を記載したパネルが付けてある。

 それらを一本ずつ見て歩けば樹木の勉強にもなるし、適度の運動と森林浴で気分が一新する。そしてサクラ保存林はここの目玉だろう。そこには野生種と園芸種を合わせて260種、約1700本ものサクラがあるという。開花期は種類によって異なるから、花の季節は比較的長く続き、その期間に多くの人が訪れる。

 さらに園内には森の科学館があって、森林と環境保全、木材の利用、森に住む鳥獣や昆虫、サクラなどについて解説している。特にサクラの展示は当館ならではのものだ。建物自体が木材を積極的に利用した造りになっている。

 ここではサクラの品種の分化、花の種類、花の形態、病害と虫害、樺(かば)細工などと、サクラを多面的に紹介している。中でも代表的なサクラの花をアクリル樹脂で固定処理した多数の標本は、当館での見ものだ。素人にとってサクラといえばソメイヨシノだろうが、サクラの種類は極めて多い。

それは基本的な野生種の約10種とその変種、及び園芸種を合わせて、200〜400種もあるそうだ。花にも一重・八重・枝垂れのほか、上向きに花が咲くもの、春と初冬に咲くもの、花の色が紫がかったもの、黄緑色のものなどと色々ある。サクラはヒマラヤが起源とされ世界的に見れば500種以上の種類があるそうだ。

 野生種は実生(みしょう)で繁殖するが、実を結ばない園芸種では接ぎ木をするしかない。野生種ではヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、エドヒガン、オオシマザクラなどが知られている。ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの雑種で明治初年頃に東京・染井で売り出された園芸種という。

 サクラの花やその咲き方は日本人に好まれて日本文化に取り込まれ、サクラの国として世界的に知られるようになった。またサクラの用途は花ばかりではない。食用のサクランボ、ヤマザクラなどの樹皮を利用する樺細工、桜餅にはオオシマザクラの葉を用い、またサクラ材は狂いが少なく加工性もよく美しいから家具や床材その他に珍重されている。

 なおサクラの樹皮を使うのに、なぜ樺細工なのだろうか。当館の説明によると、その語源は昔、木の皮をカバと呼んでいたからとか、古代にはヤマザクラも樺類に含めて扱われていたからとか、表面の模様が樺に似ているからなどと、色々いわれているが明確ではないようだ。

 当園を訪れるのはサクラの開花期が一番よいだろうが、新緑や紅葉の時節もまた悪くない。それにここのサクラは色々なサクラが一二ヶ月に渡って咲くのだから、公園のサクラのように開花期が集中しない。開花期を外して訪れても科学館で花の標本を見れば、サクラに関する理解が深まること請け合いだ。

 ところでサクラの花見といえば酒が付きものだが、兵庫県西宮市は国内最大の清酒酒造地帯・灘五郷の中心を占める。当地は良質な仕込用水として知られる宮水(みやみず)が出るので、特にその優秀さが確認された天保年間以来、多くの銘酒が育った。その一つで350年の歴史を持つ黒松白鹿(はくしか)の醸造元・辰馬本家酒造(創業1662)は「白鹿記念酒造博物館・酒ミュージアム」を開設している。今でも当館の近くには宮水の井戸が現存し使われている。

 当館では「明治の酒蔵が戻ってきた」をテーマに、明治の初年に建てられた酒蔵に古い酒造道具を展示し、スリクーンで伝統的醸造法を解説している。貴重な宮水は樽に詰め灘や大阪へ輸送されたが、それを船着場まで運んだ大八車も置いてある(挿絵参照)

 当館は酒器や美術工芸品も多数所蔵して順次公開しているが、当館のもうひとつの特色は笹部桜コレクションの公開だ。笹部新太郎(1887-1978)は大阪堂島の大地主の次男で、宝塚市にサクラの演習林を造成し、山ザクラや里ザクラの保護育成に生涯情熱を傾けた人だ。

 彼はソメイヨシノばかりが普及する傾向を憂い、日本古来の山ザクラや里ザクラの種子採取や栽培、及びそれをする技能者の養成をした。大阪造幣局構内の通り抜けはサクラの名所として知られるが、その維持管理法も指導していた。

 また彼は名所旧跡に日本古来のサクラを植え、貴重なサクラの移植も手掛けた。さらにサクラに関する文献資料や書画工芸品を収集し、サクラの文化的側面の研究もした。異色ある彼の一生は水上勉の小説「桜守」のモデルにもなった。余談だか彼の奥さんは明治維新時の庄内酒井家のお姫さんだった。

 彼の没後、その膨大なコレクションは西宮市へ寄贈され、当館はその寄託を受けて常設展示室を設けて資料や遺品などを公開している。また毎年春には特別展・笹部さくら展を開催している。彼は雑誌に「桜を滅ぼす桜の国」という文章を掲載しているが、示唆に富む話だ。

ソメイヨシノは花が美しく開花期に葉が目立たな上に植栽容易で成長も速い。そのため短い年数で様になるから造園家が好んで植樹し、今では全国の公園を単独制覇してしまった。これは逆にサクラの開花期間を短く固定し、サクラの持つ多様性を消してしまった。江戸時代の人々は色々なサクラの開花をもっと息長く楽しめたようだ。

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(作成日:02/04/27、 更新日:02/06/07 )

 

(施設情報参考)名称_住所_電話番号_駅からの概算路線距離(駅からの概略方位と直線距離)・所要時間・バス_展示規模_対象_開館時間(受付終了時刻)_休館日_備考_{施設情報確認日}開閉館時間と休館日はよく変るし臨時休館もある。事前確認が賢明

 

国立研究開発法人森林総合研究所 多摩森林科学園_東京都八王子市廿里(とどり)町1833-81_

TEL 042-661-1121()_

a)  JR中央線・京王線高尾駅(JR高尾駅北口)から0.7km(N30deg.W 0.5km)徒歩約10分、進行方向左側の歩道を進むこと

b)  JR高尾駅北口1,2番バス乗り場から西東京バス小仏行き以外のバスを利用し約3分「森林科学園」下車、往路は上り坂なので利用するのもよい。ただし帰路用のバス停はないから帰路にバスは利用できないが下り坂なので楽だ。_

駐車場はない。_大人子供_

9:30〜閉門は16:00(15:30)

(なお4月は9:00に開園する)_

5月〜2月の月曜日(月曜日が休日に当たれば開園し、翌日休園)(34月は無休)

年末年始(12/261/15)

強風注意報や暴風警報の発令時は開園中止になるので注意_

研究の森案内は開園日の火・木・土・日曜日と祝日に実施(当日午前中に館内受付で直接受付、先着15人程度、事前予約は出来ない。天候や学習入園の中止あり)_{17/03/13}

 

公益財団法人 白鹿記念酒造博物館(酒ミュージアム)_兵庫県西宮市鞍掛町 8-21_TEL 0798-33-0008_

a)  阪神電鉄西宮駅えびす口(南出口)から1.2km(S 1.0km)徒歩16分 

b)  上記出口から阪神バスマリナパーク行きで「交通公園前」下車すぐ

c)  阪急西宮北口駅とJR西宮駅からは阪急バス朝凪町行きを利用し「東町」下車後西へ徒歩5分_

駐車場 無料あり_中_大人_

10:00-17:00(16:30)_

火曜日(祝日なら開館し翌日休館、また連休に含まれる場合は連休開けに休館)

年末年始、夏期休暇数日_{17/03/13}