静岡県立美術館

ロダンを見るならここへ

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 東海道本線の静岡駅と清水駅の丁度中間辺りは、富士山と駿河湾及び伊豆半島を一望できる景勝地・日本平(にほんだいら)の北西山ろくに当る。そこには広い敷地に静岡県文化センターが造成され、その一角に「静岡県立美術館」がある。

 

 当館はその編集方針として、17世紀以降の東西の山水・風景画、県ゆかりの作家と作品、現代の美術、ロダンと近代彫刻、富士山の絵画などの収集をしている。

 

 従って当館には狩野探幽、谷文晁、池大雅、歌川広重、司馬江漢、伊藤若冲、横山大観、佐伯祐三、草間弥生などの江戸時代以降の日本の絵画や、ターナー、モネ、ゴーギャンなどの西洋画が収蔵されている。

 

 ただ日本の美術館は通常、常設展示の他に、色々な企画展を交えて運営されているから、その館の固定的な特徴を記述するのはかなり難しい。その傾向は当館にも云えるのだが、当館は近代彫刻の父と呼ばれるロダンの作品を集めた「ロダン館」を併設している点に大きな特色を持っている。

 

 ロダン館はパリの国立ロダン美術館との交流から形成されたので、ここにはロダンの彫刻が32点と、その時代前後の関連彫刻19点があり、彼の素描も数十点収蔵している。

 

 当館の展示は、彼が37年間も制作に取り組み、遂に未完に終わった大作「地獄の門」を中心にして、その左右に「考える人」と「カレーの市民」が配置されている。その周りには関連作品や肖像・モニュメントなども並んでいる。作品の数も多く、それを明るく落ち着いた雰囲気の中でゆっくりと観賞出来る点で当館は格別だ。

 

 なおロダンの彫刻や素描は国内各所の美術館にも単独あるいは複数で収蔵され公開されている。特に上野の国立西洋美術館はロダンと親密だった松方幸次郎が買い求めた松方コレクションが収蔵されていることで知られている。

 

 ここでロダン自身について簡単に触れてみよう。フランソワ・オーギュスト=ルネ・ロダン(18401917)は、日本の時代で云えば幕末天保年間にパリで生まれ、大正6年に亡くなった。若い時は生活のため色々な仕事をして、彫刻に本格的に携わるのはイタリア旅行によって大きな刺激を受けた後の40歳ごろからだった。

 

 それから77歳で亡くなるまでの37年間、政府から依頼され、後にキャンセルされた「地獄の門」の制作を独自に継続する傍ら、数多くの作品を制作している。それにもかかわらず地獄の門本体の制作は未完で終わってしまった。

 

 だが彼の没後、ロダン作品のコレクターであった松方幸次郎の要望で、「地獄の門」試作品の残されていた砂型から最初に鋳造されたのが、上野の「地獄の門」だった。これと同じものは世界に4点あるという。

 

 また当館の作品は別な蝋型から鋳造された作品で、世界に3点あるそうだ。従って両者には若干の違いがあるが、何れにしてもロダンの完成作はこの世に存在しないから、どれも本物と云えよう。

 

 「考える人」や「カレーの市民」は「地獄の門」を構成する群像の中から選び出した部分を拡大して単体像とした作品で、世界的に大きな評価を得て広く知られている。彼は正確な写実の上に、個性や内面の表現あるいは動きや事件性のとらえ方にも長けていたので、単体像なら素人にも親しみやすい。

 

 そして彼は青銅や大理石が持つ材質の特質を生かした素晴らしい作品を残した。それでも中には発注者の考え方より作品の表現が新し過ぎてか理解されず、長く引き取りを拒否された作品も少なくなかった。まして「地獄の門」の精神性や186点の単独像の意味する所は、神曲もよく知らない筆者には云々することも出来ない。

 

 その「地獄の門」の注文を受けて、ロダンはイタリアの大詩人ダンテの叙事詩「神曲」の「地獄篇」を象徴しようとして勇躍して制作に取り掛かった。しかし構想を練る内に神曲のキリスト教的秩序の表現から、次第にその構想は離れて渾然としたものになり、彼が生涯を掛けてもそれを満足の行くように纏められなかった。

 

 なお余談だが、ロダンの弟子でモデル・愛人・共同制作者であり、さらに自身も優れた女流彫刻家だったカミーユ・クローデルは、地獄の門制作にもその才能を発揮した。しかしロダンと不本意な離別後に、若くして精神病院で亡くなったその生涯は映画化されている。

 

 ロダンは当時の欧州美術界の傾向として日本美術品や置物を好んで購入したそうだ。そしてロダンはその晩年に小柄な日本人女優マダム花子(本名 太田ひで)をプチト・ハナコと愛称してモデルとし、モデル個人としては最多の58点もの彫刻を制作した。

 

 このようにロダンと日本との縁は、人的にも物的にも少なくなかったといえよう。なお当館前面の遊歩道には内外彫刻家の野外彫刻が14点も展示されているので、彫刻好きには興味深いと思われる。

 

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(施設情報参考)名称_住所_電話番号_駅からの概算路線距離(駅からの概略方位と直線距離)・所要時間・バス_駐車場_規模_対象_開館時間(受付終了時刻)_休館日_備考_{施設情報確認日}閉開館時間と休館日はよく変るし臨時休館もある。事前確認が賢明。

 

静岡県立美術館_静岡市駿河区谷田53-2_TELサービス 054-262-3737   総務課 054-263-5755_

JR静岡駅からバス草薙瀬名新内線県立美術館行きで30分、タクシーあり。7.6km(N69deg.E  5.7km)

JR東海道線草薙(くさなぎ)駅と静岡電鉄草薙駅の近くの県大・美術館口バス停からバス6分、タクシーあり。1.9km(S26deg.E  1.2km)

静岡電鉄県立美術館前駅からバス3分タクシーあり。徒歩15分_

駐車場 無料 400台 ただし駐車後登り坂を徒歩10分_

10:00-17:30(17:00)

月曜日(祝日・振替休日は開館し、翌日休館)、年末年始、展示替えなどの休館日、臨休あり_

備考 日本平から美術館までは、日本平パークウエイを下り約4km_{18/01/10}

 

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