一関市博物館

洪水に備える大学者の故郷

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関連(災害)  関連(学者)  参照(算木B)  参照(日本刀A) 

 岩手県最南部、一関(いちのせき)市郊外には厳美渓(げんびけい)という渓谷がある。ここでは谷上の店からケーブルを使って岸辺の観光客へ団子を運ぶ様子がテレビで時折放映される。その近くに「一関市博物館」がある。当市は著名な蘭学者・大槻玄沢(1757-1827)の出身地である。

従って当館は郷土資料と共に玄沢と身内の業績も紹介している。玄沢は藩医の建部清庵に学んだ後、杉田玄白に入門し、また前野良沢からオランダ語を学び長崎にも遊学した。彼は1786年から亡くなるまでの41年間、江戸で蘭学塾・芝蘭堂(しらんどう)を開き蘭学の興隆に努めている。

 1795年から始まった芝蘭堂の新元会はオランダ正月の集まりとして知られる。師の清庵は玄沢を評して、彼は自分で確かめない限り言葉にも出さず文書にも書かない人で、自然科学を学ぶのに適していると述べている。

 玄沢は蘭学の入門書「蘭学階梯」や「重訂解体新書」など、多数の著書や翻訳書を世に出した。特に蘭学階梯は蘭学を学ぼうとする人にとって珍重された。

 彼の息子は儒者で漢学者の大槻磐渓、また孫は考証家の大槻如電と国語学者の大槻文彦で、三代続いた学者一家だった。磐渓は開明的な漢学者で「共和政治」の訳語も彼が史記を参考として作ったといわれる。如電は地理・歴史・演芸・舞踊などと幅広い分野で文芸活動をしている。

 また文彦は最初北海道風土記など地誌や翻訳を手掛けていたが、やがて文部省の西村茂樹の指示で日本初の近代的国語辞典の編集に着手し、方言や日常語、及び文法なども勘案しながら、16年の苦闘の末に言海を完成した。この事業は日本語の統一と体系化に大いに寄与した。

 さらに当館は和算の歴史や当地出身の和算学者・千葉胤秀(たねひで)の業績も紹介している。江戸後期には当地でも農閑期にそろばん道場が開かれ、和算も盛んだった。胤秀は和算の体系的な参考書「算法新書」の編者で、この本は初歩から高等数学までを分かりやすく記述しており、幕末から明治にかけて広く使われた。

 館内には神社に奉納された和算の算額や算木もある。算木とは数を表す木片で、算盤と一緒に使用して加減乗除や平方根の計算、及び多元一次方程式の解も求められる道具だった。当時、加減計算はそろばんで、複雑な乗除計算は算木を使用したという。

 また当市は日本刀の発達にも大いに関係したようだ。当市東部に舞草(もぐさ)観音山という土地があるが、ここは日本刀の成立に重要な役割を果たした鍛冶集団が居住したと推定されている。

 すなわち古代の刀は直刀(ちょくとう)様式だった。日本刀の「そり」を付けた刀としてもっとも古いのは蕨手刀(わらびてとう)だ。この刀は柄の先端がワラビのように丸く曲がった形をしている。それが岩手県や宮城県から多く発見されている。そしてその出現はえみしの有力者と砂鉄の存在とが関係したといわれる。

 次いで毛抜形蕨手刀が舞草鍛冶の手で造られたが、これは日本刀成立直前期に当たるそうだ。その後、舞草刀が奥州の戦乱の頃に現れ、戦いの過程で改良進化していったが、平泉滅亡によって消滅してしまった。舞草鍛冶集団が鎌倉や全国各地へ移住したのが原因と推定されている。当館にはこれらの刀剣資料の説明もある。

 当館では郷土史を時代順に紹介しているが、その中に大水害の記録がある。北上平野を南下した北上川は当市に隣接する平泉町で東南へ流路を転じ、北上山地を流れて宮城県に入る。その間、約30キロは山間部を流れる。そこには峡谷地形もあるので、その可能最大流量が限定される。

ひとたび上流部で大雨が降ると平泉・一関一帯には水が滞留し、大水害になった。特に1947年と1948年の台風による水害はひどかった。当市の中心部は二階の屋根まで水没し、この一帯で600人が亡くなった。今でも市の中心部に当時の水位が標識で表示されている。

 現在では洪水の再来に備えて、1,470haの広大な遊水池が造成された。平泉の柳之御所跡はその一連の事業の過程で発見されたから、柳之御所史料館には奥州藤原氏関係の発掘出土品の他に、北上川の洪水と治水事業に関しても詳しい紹介している。

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(作成日: 01/06/30、 更新日: )

 

(施設情報参考)名称_住所_電話番号_駅からの概算路線距離(駅からの概略方位と直線距離)・所要時間・バス_駐車場_展示規模_対象_開館時間(受付終了時刻)_休館日_備考_{施設情報確認日}開閉館時間と休館日はよく変るし臨時休館もある。事前確認が賢明

 

一関市博物館_岩手県一関市厳美町字沖野々 215-1_TEL 0191-29-3180_

JR東北新幹線・東北本線一関駅から9.6km(N75deg.W 8.0km)、駅前バスプール9番乗り場から厳美渓行き岩手県交通バスで終点下車後徒歩7分_

駐車場 無料 普通105台_中_大人_

9:00-17:0016:30)_

月曜日(祝・休日に当たる場合は開館し、翌日休館)、資料整理期間などの臨休、12/291/3_{17/02/11}